敵の役割
敵の性格は大体分かった。
魔王の目的は不明だがどうやら日本の文化を知っているようだ。
もしこの二人が悪の幹部という役割を本気でやっているなら戦いようはある。
俺はラーネルに[助力]スキルで思考を共有させる。
ある提案を伝えると驚いた表情で俺を見るが、俺を信じて欲しい、と伝えるとしぶしぶという表情で頷いてくれる。
頼んだ通りラーネルが一歩前に出て俺を指差す。
「こいつは俺について来ただけなんだ。俺だけで相手をしてやるからこいつには手を出さないでくれ。」
「それぁいぃけど、あんたが死んだらその子ぉ殺すよ?」
「構わない。」
よし。
予想通りの返答。
嘘をつかれている可能性もあるが恐らく守るだろう。
追加でセリフを言ってもらう。
「みんなを守るために!俺は全力で戦う!」
言うと同時にラーネルに剣を構えてもらう。
敵二人の表情が見る間に輝き出す。
「やれるもんなぁやってみな!」
「・・・来い。」
主人公っぽいセリフは絶対食いつくだろうと思っていた。
これでもう俺は意識の外だろう。
[助力]スキルで俺のステータスをHPを少量残して全てラーネルの素早さに受け渡す。
途端に装備の重みで立っていられなくなって座り込む。
「頼むよ。今のラーネルなら二人相手でも速さなら遅れはとらないはず。」
剣を振りながら頷く。
「任せろ。」
敵の二人がラーネルに飛び掛かる。
先に女が斧を横振りする。
これを剣で上方に跳ね上げる。
その隙にラーネルの後ろに回り込んだ男が殴るが横に飛び退って躱す。
俺のスキルで二人の動きをとらえているのでラーネルならこれくらい出来るのだろう。
「やぁる!」
女が片手を前に出す。
「焔よ!」
かざした掌に炎属性の魔力を圧縮させて前方に打ち出す。
「はえぇよ!」
ラーネルは高く飛んで躱し木の枝に掴まる。
「・・・逃さない。」
男が手を地面に当てる。
「・・・蔓よ、頼む。」
地面から植物の蔓が伸びてラーネルの足に絡みつく。
枝にぶら下がっていたラーネルは完全に固定されてしまう。
「嘘だろっ!」
「もぅ3発!焔よ、焔よ。」
かざした手の周辺に3つの炎の玉を作る。
「おいおいバケモンかよ!」
剣で蔓を切ろうとしていたのを中断して剣を正面に構える。
「水よ、水よ、常にたゆたい、常に姿を変え、包むもの。モノ・ウォーターシールド!」
剣の先端に水の盾を作り飛んできた炎の玉が当たらない様に後方に逸らす。
「やるぅ!」
ラーネルが蔓を切る。
自由になった足で、掴んでいた枝を蹴って勢いのままに男に切りかかる。
「・・・ふん。」
男が手に装備した籠手で剣をはじく。
それを予想していたラーネルが肩から体当たりする。
体制を崩した男にすかさず切りつける。
が、後方に飛んで躱す。
血が薄く腹に滲む程度の傷だった。
「こぉっち!」
女が斧を振り下ろす。
しかし、これを俺のスキルで把握していたラーネルは躱しながら男に飛び掛かって勢いを乗せて切りつける。
「・・・くっ。」
男は首筋への攻撃を防ごうと両腕を出す。
それを予想していたラーネルは籠手よりも先、皮膚の露出した部分を切りつけた。
「・・・!」
男の右手の肘から先が切り飛ばされた。
ラーネルが大きく息を吸い込みながら止めに振り下ろした剣を切り上げようする。
「させなぁよ!焔よ!立ち上がれ!」
ラーネルと男の間に地面から炎の壁が立ち上がる。
「ぅおっと!」
瞬間で判断して踏み込みを止めて飛び退る。
「・・・癒しよ。」
男が左手で切り飛ばされた右手の先端に回復魔法を使用している。
再生はしないようだが、血が止まった。
「レベル差ぁんのにやるね!さすが英雄?勇者?だね!」
女が嬉しそうに笑う。
「いや、ただの冒険者だが。」
ラーネルが様子を伺いながら答えた。
多忙・・・。




