魔王軍
花粉の濃度がどんどん濃くなっていく。
スキルの共有で暗闇でも視界の問題が無くなったので走っていく。
ラーネルは俺の速度に合わせて走ってくれているみたいだ。
「俺もこんなスキルあればなぁ。夜の移動も全然危険じゃなくなる。」
・・・そりゃそれだけのステータスと剣術があるからだろうな。
回復魔法も使えるし。
素直にうらやましい。
[空間把握]の範囲に強力な魔力を持つ二人と呪いの元凶と思われる植物が引っかかる。
植物は・・・山菜のゼンマイみたいに先端がクルクルと巻かれている。
ゼンマイだと胞子で増える気がするが、飛んでるのは花粉だな。
そこは違うようだ。
呪いの魔力で禍々しい。
二人はこちらに気付いているだろうが動かない。
待っているみたいだ。
二人を鑑定する。
種族は魔族。
名前無し。
無し?
どういう事だろう。
男と女。
レベルは二人とも40。
これは勝てん!
ただでさえステータス差あるのに、MP、魔力の差がでかい。
「おお、ここまで見えるのか。」
ラーネルが驚く。
俺は思わず足を止める。
「これは、無理じゃ・・・。」
「かといって逃げ帰る選択肢はないぞ。」
ラーネルはやる気十分見たいだが、無駄死にになりそうとしか思えない。
「ダイキは身を守れ。俺が二人とも相手するから。」
そういって敵の前まで飛び出していった。
ほんとはもう十分花粉を吸いこんでしまった俺も選択肢はないんだ。
腹をくくって追従した。
「来たぁね!」
女の方が喜色を含んだ声を出す。
「・・・うむ。」
男の方は無口キャラか。
「だぁれもこなぁまま町の人全滅したぁつまぁないと思ってたぁよ。」
変な口調だな。
つか、
「なんなんだよ、その服装!」
相当凄い魔物か黒魔術師的な奴が居るのかと思ったが、二人ともテカテカのボンテージスーツを着ている。
目が・・・目のやり場が!?
男と女で目のやり場に困るの意味が変わってくるな、これは。
「服?悪の幹部ぁこぉいぅ服を着ると決まってぃるのよ。」
悪の幹部?
自分で悪って自覚しながらこんな事をしているのか?
目的は?
悪ならあんな服はこの世界の常識なのか?
「この世界だとそうなの?」
ラーネルに聞いてみる。
「いや、悪の幹部って意味が分からん。何かの儀式用の服なら納得だが・・・。特殊な魔法強化でもされているのか?」
困惑してるみたいだ。
「そか・・・。」
鑑定したが服に特殊効果はなさそうだ。
「悪の組織ってぃたら魔王軍でしょ?」
「魔王軍の所属兵なのか?いや、魔王軍は確かに魔族ばかりだが・・・。そもそも魔王軍が悪の組織って自分で名乗るもんか?」
ラーネルが驚く。
「・・・名乗るぞ。」
自分で悪って名乗る軍隊があるのか?
それとも魔王軍を騙る偽物?
「悪ぁこの服ぉきるのよ!」
「・・・うむ。」
戦隊ヒーロー物イメージなんだろうか?
でもこの世界にそんな文化は無いだろ。
なんか色々想定がつきそうな気がするんだけど・・・。
「目的はなんだ?」
「そらぁ最初かぁ一貫して世界征服よぉ?」
「それはそうなんだろけど・・・。悪と思ってやってるのか?」
「最初かぁ魔王様ぁそうよ?」
やっぱり、魔王って・・・。
「あの犬ちゃん切り抜けて来れたかぁね!今度はわぁしたちと戦うんだよ!」
「・・・うむ。」
取り合えず考えるのは止めてナイフを構えて臨戦態勢になる。
女の方は両手持ちの斧、男は籠手をはめた拳か。
「何度も言うが、ダイキは自分の身を守ることを優先しろよ。」
ラーネルが剣を構える。
「でも、あの二人相手に一人じゃ無理でしょ?」
「やると決めたらやる。任せろ。そもそもダイキがやられたらこの暗闇で戦うなんて無理だからな。」
それはそうだが・・・。
身を守れなくなるかもしれないが、[助力]スキルでステータスを受け渡す事も考えないといけないか?
姿勢を低く構えた。




