新スキル
ピンチです。
俺のスキルの特徴はポイントを割り振らなくても使えば使うほど成長していくというものだ。
そして、[助力]スキルは自分のステータスを誰かに貸し与える、というもの。
考えていたが、[助ける]という要素さえ踏まえて居れば、望んだスキルの成長が出来ないだろうか?
今、俺達は暗闇の中でダークハウンドドックに囲まれている。
俺は[空間把握]スキルで周囲を見ることが出来るが、ラーネルは出来ない。
熟練の冒険者として襲ってきた時の音に反応して対処している。
だが、ラーネルが俺の見ている空間を共有出来れば、反撃のチャンスもあるかもしれない。
ステータスを貸し与える感覚を応用して俺が見ている視界をラーネルと共有する。
出来る・・・はず。
無意識にステータスの貸し与えが出来たんだ。
スキルの共有だって。
強く願う。
まず・・・意識を共有させる。
俺の感じている感覚をラーネルにも感じられるように・・・。
「おい・・・なんか変な感覚が・・・。」
頭を抑えながらラーネルがこちらを見る。
「いてぇ!・・・これお前の!?」
ラーネルが無意識に俺が噛まれたはずの部位をさする。
どうやら痛覚まで共有させられるみたいだ。
この[状況を切り抜けるため]にラーネルと[感覚を共有する]という[助力]。
成功。
ここからだ。
俺の[空間把握]スキルで見えている状況を共有させる。
「おいおいおい!これ・・・。」
一瞬ラーネルが警戒態勢から動きを止める。
視界を超える圧倒的な情報量が一気に流れ込んだんだ。
脳が追い付いてないんだろう。
それでもすぐに敵に意識を向けている。
さすがだ。
「これがダイキが見ていた世界か。」
ラーネルが息を深く吸い込む。
「凄いよ。お前。こんなスキル聞いた事が無い。これならこの暗闇でも。」
剣を構えなおす。
「怪我してんだ。座っていいぞ。」
声に余裕が出ている。
ダークハウンドドックが弱っている俺目掛けて飛び掛かってくる。
俺を軸に回転しながら剣を振り回す。
振り回しているが、俺にだけはかすりもしない。
「よしっ!この程度なら!」
何匹飛び掛かって来ても器用に口や首を切り飛ばして一撃で絶命させる。
最後の一匹が警戒して距離を取ろうと後ずさる。
「逃さねぇよ!それは!」
剣を乱暴に投げつける。
ギャン!という鳴き声と共に敵の胴体が泣き別れる。
「ありがとう。正直松明奪われたときは俺もちょっと覚悟した。」
「やれるかどうかわかんなかったけど、うまくいって良かった。」
ラーネルが驚いた表情でこちらをみる。
「これ、やったことなかったのかよ・・・。」
「いけるとは思ってたけどね。」
「ま、なんにせようまくいったんだから結果オーライだ。」
俺の肩に両手を当てながら魔法を唱える。
「水よ。水よ。万年変わらず、幾年月変わらず、本質を変えず、姿を変え続ける。彼の身を元に戻せ。ディ・ヒール!」
噛まれた傷の部分が強烈に痒くなる。
「うひぃい。かゆっ。」
「痛いよりましだろ。ちょい我慢しろ。」
10秒程度で肩の痛みがなくなる。
「後は腕と足だな。」
そういいながら怪我の部分に手を当てて回復魔法をかける。
痒みで声が出る。
終わった後、ラーネルが腰に付けていた鞄の中から瓶を取り出す。
「それ飲んどけ。万が一病気に感染していたら後が怖いからな。」
「ありがとう。」
瓶を開けて臭いを嗅いでみる。
酸っぱい腐ったようなにおいがする。
一気に飲めばよかった。
後悔しながら息を止めて飲み干した。
う・・・。
胃から上がってくる臭いが・・・。
「うげぇ・・・。」
「おい、感覚の方の共有は解除してくれ。」
今の感覚がラーネルにも伝わっているらしい。
「うい・・・。」
言われた通り[感覚共有]スキルを解除する。
「今なら俺も花粉を追えるな。」
剣に付いた血をマントで拭きながら頷く。
「疲れたか?」
「いや、まだまだやれるよ。」
取り合えず松明が必要なくなったのはでかい。
Cランク冒険者のラーネルが全力で戦えるなら後は俺が自分の身を守れるだけで何とかなるかも。
ラーネル、剣術も凄いもんな。
ステータスやスキルでは表されない様な部分で。
「いこう!」
「応よ!さっさと解決しよう!」




