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【異世界】神様から新しい成長システムを考えろと言われた話【召喚】  作者: おっさんさん
0章 1部 独り立ちしよう編
28/41

外伝・それぞれの暗躍

外伝です。ほぼ本編に繋がる話ですが。

 イベルダは苛ついていた。

今まで多くの国で未曾有の災害と呼ばれる事態を収めた伝説的英雄ガルド。

いつも笑っていて聖人と呼ばれるほど誰に対しても紳士的。

その彼が拉致する様に召喚された男を連れて行ってしまった。

正確にはステータスの低さやスキルの少なさから興味を失ってしまったハンスハイゼン王に謁見して許可を取りつけさっさと冒険者ギルド預かりという扱いにさせてしまった。

王につられてか城に勤める者の殆どが召喚された男への興味を既に失っている。

しかしイベルダはその男のスキルが普通とは違う事に気が付いていた。

そもそも異世界から来た者はこの世界とは違う知識や力を持っている事が多い。

召喚された男、ダイキはもしかしたら戦争を終結に導く存在になれるかもしれなかったのに。

無理やり召喚したことは申し訳ないが、戦争が早く終わり、一人でも多くの命を救うために恨まれる事も覚悟の上で成功率の低い儀式に頼っているのだ。

外交的なカードだという話もあるが、少なくともイベルダはそう考えていた。


 彼女も数年前まで天才魔導士と呼ばれ、戦争に参加して魔王軍と戦った。

魔王軍の構成員である魔族は数こそ少ないが人間とは比較にならないほどの魔力を持っている。

たった1人が数百、数千という人間の兵士を魔法で薙ぎ払っていく。

それまで魔族という存在は知っていてもここまで人間と圧倒的な差があるとは思っていなかった。

少なくとも才能ある自分は魔法を使って対等以上に戦えると思っていた。

その自信がいとも簡単に崩れてしまった。

魔力そのままを打ち出す魔族の魔法は物理的な力があり、魔法で相殺出来ない。

かといってこちらの魔法は簡単に相殺される。

近寄る事すらほぼ不可能。

うまく近距離で戦ったとしても補助魔法で強化された魔族に手も足も出ない。

絶望的な状況の中、異世界から召喚されたという勇者が飛び出し魔族と切り合う。

目で全く追えないほどの斬撃。

その場の全員が動きを止めて魅入ってしまった。

あまりにも次元の違う者達の戦い。

その勇者が魔族を撃退したおかげで今もイベルダは生きている。

あの力がダイキにあるのであれば何としても協力してもらいたい。


 接触を試みようと街に向かった時、計ったようにガルドが表れた。

「彼はこの世界で一人で生きていくために今経験を積んでますので、あまり困らせるような話はしないで下さいね。」

確実にイベルダがダイキと接触する事を警戒している。

城内の仕事で多忙なイベルダはそうそう街に出かけられる時間は無い。

今日が駄目ならまたしばらくダイキを探す機会はないだろう。

今日を無駄にしたくないが、ガルドが後見人の冒険者ギルド預かりというのは国王の了解済みなので、ガルドとは表立って対立したくない。

悔しいが諦める。

しかし、ガルドが冒険者として名を残す様になって20年ほど。

各地の天災や魔物討伐などで伝説のSランク冒険者となれるほど人々を助けてきたのは事実。

その彼が何故ダイキをわざと国から引き離す必要があるのだろう。

無理やり召喚されて可哀そうという思いからか?

もしかしたら彼も異世界から来たのかもしれない。


・・・・・・


 山脈に夕日が沈むのを眺める。

あの山を越えたところから隣国だ。

酪農や羊毛を特産品としている村に滞在して1週間ほど。

収穫量の報告や陳情書検討などの公務をこなす傍ら農作業を手伝っている。

今季の収穫も順調なようだ。

遅れている1戸の報告が上がってくれば書類をまとめて帰れる。

街に残してきた子供たちは大人しくしているだろうか。

・・・無理だろうな。




 ガルドが急に会いに来たのには驚いた。

いつもふらりとやってくるのだが、いつものごとく数日前私に会いにこの村に来た。

挨拶もそこそこに話を切り出された。

「貴方の屋敷で雇ってもらいたい子がいるんですが、難しいですか?」

まさかガルドに頼み事をされるとは。

面食らってしまう。

「う~ん。取り合えず使用人達に預けて仕事覚えてもらうとかなら・・・。」

一人くらい増えても養えるだろう。

「や、スキルが特別な子ですので、貴方の子供たちの教育係でお願いできますか?」

「決めてるのかよ・・・。いや、それならそうと初めから言ってください。でも、すでに教育係は付けてますから。無理ですね。」

自分が子供の頃からお世話になっているメイド長の娘が今子供たちの教育係をしてくれている。

子供たちから姉の様に慕われているので、変えるつもりなどない。

「いいから、いいから。取り合えず頼むよ。」

それだけ言うと止めるタイミングを入れさせずさっさと立ち上がって帰っていった。

今までのガルドの雰囲気からは想像出来ないほど強引だった。

ため息をつく。

まぁ英雄に頼まれたし、一人くらい構わないだろう。

「あ・・・そいつの名前聞くの忘れた。」

あと、いつやってくるのかも。




 部屋の扉が叩かれる。

「どうぞ。」

声をかけると従者としてついてきているフォグが扉を開けて入ってくる。

ガルドが後ろについて入ってくる。

「やぁ、やぁ。この前話してた子、明日から貴方のところに向かいますので、準備しといてくださいね。」

「え!王都からだと・・・3日かからんだろ!」

自分がまだ街まで帰ってないのに。

「どうしてそう急にやってきて話を進めるんだ!」

ガルドが困った顔で頭をかく。

「申し訳ないです。少し急いでいて。」

「面倒事とか犯罪とかそういうのは止めて下さいよ!」

「いや、そういう話ではないので大丈夫です。」

ガルドが自信満々に答える。

ため息が出る。

「フォグ。」

「はい!」

話しかけられると思っていなかったフォグがビクッとしながら返事をする。

「お前だけ一足早く帰って屋敷の者に伝えてくれ。迎え入れる時、ガルドの知り合いだから失礼の無いようにな。」

「分かりました!」

そう答えて失礼します、と言った後部屋から出て行く。

もう支度に入るつもりだろう。

「ほんと申し訳ないね。」

ガルドが頭を下げる。

「名前は?」

「ああ、ダイキ君ですよ。」

「年齢。」

「16歳。」

「それと・・・獣人ですか?」

「いえ、ごく普通の人間です。」

それはちょっと注意した方がいいかもしれない。

「私の領地で暮らしている者はほぼ獣人ですが、大丈夫ですか?」

いじめや差別を受けるかもしれない、という意味を込めて言った。

「大丈夫ですよ。良い子だからみんなに受け入れられるでしょう。」

そう話すが、ほんとに大丈夫だろうか。

一応英雄から預かった子だし、いじめられてないかフォグ辺りに気を付けて観察してもらうことにしよう。

「貴方はいつ頃帰れるんですか?」

「あと少し。報告書をまとめ上げたら帰れる。ダイキって子を迎える時には間に合わないだろうがすぐに帰れるさ。」

うん、とガルドが頷く。

「頼みましたよ。」

そういうとまたさっさと立ち上がって部屋から出て行ってしまう。

深いため息をつく。

英雄ガルドのイメージが少し変わってしまった。

うちの領内で面倒な事が起こらなければいいけど、とガイストンは椅子にもたれ天井を仰いだ。


・・・・・・


 人が大好きだ。

良い子も悪い子も全て愛おしい。

出来れば戦争は今すぐ終わらせてほしいが、”自分では”それは出来ない。

取り合えずダイキを戦場から遠い所へ預けたので、そこで相当な活躍でもしなければしばらくは戦争に引っ張られることもない。

おかげでまだまだ戦線は膠着状態から抜け出せないだろう。

本心とは別の行動をとらなければならないことが相当なストレスになっている。

それでもやらなければならない。

座標を指定して自宅までワープする。

今ダイキは空間把握スキルを発動していないので気付かれていない。

何も知らない子を騙すのはつらいな。

普段絶対にやらないため息を小さく吐いた。


・・・・・・


 「どうすんだよったく!」

オークファイターのラクロは書置きを見つめたまま毒づいた。

オークマージであり村長だったレンティアナは人間の少年3人がこの村に訪れてから、村長として自分がやっていた仕事を妙にラクロに押し付けるようになっていた。

レンティアナは結構な歳だったので、村長をラクロに任せるためにやっているのかと思っていたが・・・。

(重大な使命が出来たので修行の旅に出る。

悪いが村をまとめるのはお前がやってくれ。村長任命。

追伸 キクロを大事にしろ。肉親だからね。)

いきなりすぎる。

「父ちゃん、ばぁちゃん修行に行くって言ってた。」

「ああ、手紙見た。ってキクロはばぁさんから聞いてたのか?」

「うん、結構前から。昨日もそろそろ行くって。父ちゃんに話したら絶対止められるから言わない、お前も父ちゃんに話すなって言われてた。」

キクロはのほほんとして話す。

曾孫にはちゃんと言うんかい!

部屋を眺めても荷物は殆ど持って行っていない事が分かる。

高齢で旅をする祖母を思ってラクロは心配する事しか出来なかった。

これから先オーク村の維持も考えなきゃいけない。

「旅、出たかったなぁ・・・。」

本音が少し漏れた。

「ばぁちゃんと一緒に旅行きたかったの?」

聞いてきたキクロに微笑みながら頭を撫でてやった。


・・・・・・


 魔王が叫ぶ。

「よーし、お前たち!今から世界中に散らばって色々悪い事をするんだ。」

「「「はい!魔王様!」」」

「普通に虐殺とかするなよ。知恵を絞って手練手管で悪事お行うんだ!」

「「「はい!魔王様!」」」

魔王がリンドラントの方を見て笑いながら話す。

「戦争だけじゃつまんないから世界各地で魔王の手下暗躍イベントを起こすんだ!面白そうだろう?」

「そ、そうですね・・・。」

”魔王から生み出された魔族”

そいつらが吹きすさぶ雪の中、城の場外闘技場に整列している。

ざっと300人はいるか。

「行け!」

合図とともに各々魔法での飛翔によって飛び立っていく。

魔王がさっき思いついたように掌から量産して命令を下した。

飛び立っていき次第に静かになる場外闘技場。

「どんな悪事を働いたか話が楽しみだな!」

魔王も上機嫌で帰っていく。

・・・倒せるのだろうか?

いつか国を取り戻せるのだろうか。

魔王の強さに届くのだろうか。

リンドラントは硬く拳を握りしめた。

次から本編です。

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