出発準備完了
装備を新しく買いました。
「出来た出来た!」
店主が小走りに奥から出てくる。
ナイフをカウンターに置いた後、自慢げにナイフカバーを掲げる。
「2本のナイフを左右から刺して固定できるようにした。あんた利き手は?」
「右です。」
「じゃあ右から刺す方に新しく買ったナイフを刺しときな。カバーは腰の後ろに付けるように。」
言われてベルトに引っかえて腰の後ろで固定する。
後ろ手にどちらの手でもナイフが引き抜けるようになっているみたいだ。
「両手ナイフってものありかもな。」
確かにそれは結構かっこいいかも。
両手で素早くナイフを引き抜いて構える。
「お、様になってんねぇにぃちゃん。」
言われると急に恥ずかしくなってそっとナイフを戻した。
「ねねね~、父さん。」
ロシュが店主に話しかける。
「ん、どうした?」
「この人が抜けた後で僕がこのパーティーに入っていい?」
「ええ!」
店主は驚いた後腕を組んで考えているみたいだ。
「いいでしょ?」
「まぁ・・・。どのみち10になったらレベル上げるために一度冒険者にさせる予定だったし・・・。」
こっちに話しかけてくる。
「こいつ・・・、9歳なんだがいいか?」
「僕も9歳ですよ。」
「俺は10だ。」
「そうか、それならまぁ・・・。無理しないと約束出来るなら。」
「うわぁい~。」
「あ、こいつ一人で魔物狩ってたから今レベル3あるぞ。」
意外と強いのかこの子・・・。
「なんにせよよろしくぅ~。」
俺を含めみんなかわるがわる握手する。
「レベル25くらいまで上げたら俺の仕事の手伝いに戻るんだぞ。」
「うん~。」
聞き流すように自分用の装備を選び始めている。
このまま職業冒険者になったりして。
「んじゃ、明日冒険者ギルドに朝から集合で。」
「よろしく~、よろしく~。」
「よろしく、えっと、ロシュ君。」
上機嫌のロシュに見送られながら店を後にした。
三人で歩きながら話をする。
「明日から行っちまうのか?」
「どうかな・・・。その辺聞いてなかったけど、行けるならすぐ、かな。」
「そかぁ・・・。短い間だったけど、楽しかったよ。」
改めて思うが、こんな年上の雑魚に付き合ってくれて感謝だなぁ
馬鹿にもされなかったし、良い子達だ。
「またこの街に戻ってきたら、門兵にでもドルトネス家の子息に会いに来たって言ってくれ。多分家の場所教えてくれるから。」
「そうかー、ルイン君はそれで伝わるもんね。」
カイトがちょっと悔しそうだ。
「家に尋ねてきたらカイトにも伝えるから。」
ルインがこっちを見る。
「ってことで忘れるなよ。ドルトネスだからな。」
「分かった。すぐは無理でもまた帰省するよ。」
帰省って言っていいんだろうかという気もするが・・・。
「向こうで落ち着いたらルイン宛てに手紙を出す。もちろん二人に宛ててな。」
「約束だよ。」
「じゃあ、再開を願ってのお別れ会だな。何食べに行く?」
案内は任せとけ、とルインが腕まくりのポーズをする。
「僕は肉食べたい。」
「同じく。」
「全員肉が食べたいってか・・・。じゃあ大牛亭行くか。」
「僕行ったことないや、そこ。」
三人で会うのも今日で最後かぁ・・・。
短い間だったが忙しくて楽しかったな。
落ち着いたら必ず一度戻ってこよう。
お別れを済ませて家に戻る。
昼過ぎくらいだったがガルドは家に居た。
仕事何してるんだ?
英雄レベルの冒険者らしいけどクエストで出て行ってるの見た事無いぞ。
「やぁ、お帰りなさい。その様子では仕事を受ける事にしたみたいですね。」
「うん。それでいつ頃出発したらいい?」
「明日朝から行きますか。」
「早いねぇ。向こうに許可取らなくていいんだ?」
「これるならすぐという事でしたので。連絡は手紙でしておきます。」
準備が良すぎるな・・・。
不自然なくらい。
ガルドに嫌われてたりして。
・・・それなら冒険者として放り出す方が楽か。
意図が読めなくてちょっと怖い。
「分かった。明日出発出来るように準備しとくよ。」
ふと気付いて聞いてみる。
「ガルドも一緒に行って紹介まではしてくれるよね?」
「え?行きませんよ。話は通してあるので心配無用です。」
・・・やっぱ嫌われてるのかも。
「相乗り馬車で丁度いいの探して乗って行ってください。探すのは一緒にやりますから。」
ガルドがほほ笑んでいる。
悪意があるのかないのか全く分からん。
取り合えず今夜は準備して明日に備えよう。
あれこれ考えても仕方ないし、なるようになれだ。
「聞いてなかったけど、なんて街に行くの?」
「ボルストンです。領主の名前はガイストンさん。まじめで良い方ですよ。周辺の3つの村も合わせて4つの集落とその周辺地域を収める。この国の西方の雄です。」
1日100PV超えました。
とてもうれしいです。
次回から設定と外伝幾つかやった後、新章になります。




