意外と祝福
ランクが上がりました。
ガルドの家に戻り、いつもの様に今日の話をする。
Eランクに上がった事を話しているとついつい力が入ってしまう。
俺のスキルを使って素材を集め過ぎて強さに見合わないランクアップをしちゃったんじゃ~的に話す。
ちょっと自虐風自慢入ってしまってないか?と話しながら考えてしまう。
ガルドはいつも通りニコニコしながら聞いてくれている。
俺が一通り話し終えて言葉が途切れた時に思いついたように話し出した。
「昇格おめでとうございます。それで、折り入ってダイキさんお願いしようと思っていたことがあるんですが・・・。」
「え?どうしたの?」
ガルドが俺に冒険者としてお願いって何だろう。
ステータスが異常に強い人のお願いってやばそうだ。
ガルド基準の難易度だったらどうしよう。
「実は私の知り合いにこの国の一地域を任されている領主様が居ましてね。今子供の教育係を探しているんですよ。ダイキさんは[助言]スキルを持ってましたよね?ある程度レベルが上がったらあなたを領主様にその教育係として紹介しようと思っていたんです。」
「教育係!?」
瞬間、オークの村での占いを思い出す。
それにしても16歳で別に頭も良くない俺が人に教育って・・・。
いや、スキルを使うからそれは心配ないか。
ガルドのお願いって要は無責任にこの世界に召喚された俺がこれからも生きていくための仕事の斡旋?
だったら気遣いの人だなぁ。
ただ、俺はせっかくなら冒険者として元の世界に帰れる方法探しつつ色んな場所を旅してみたいんだけど・・・。
でも、めちゃくちゃお世話になっている人のご厚意を断るっているのも難しいよな・・・。
でも、大してステータスも高くない俺の話を素直に聞いてもらえるか?
でも、でも・・・。
俺が返答出来ずにいたらガルドが察して答える。
「受けてくれてもいいですし、今の冒険者パーティーが気に入っててこのままやりたいならそれもいい事だと思います。断っても全くかまわないですから。」
無理強いしないで気遣ってくれた。
「明日準備してレベル上げに遠征しようって話をしてて・・・。」
「そうでしたか・・・。」
残念、とガルドが肩を落とす。
「話をしてみるよ。仲間の反応次第で受けるかどうか決めてもいい?」
ルインもカイトもある程度レベルを上げたら親の仕事を継ぐ予定だ。
いつまでも冒険者でいるつもりはない。
そうなると俺は一人で冒険者を続けるか、別の人をまた探さなければならない。
素直に話して二人の反応次第で受けるかどうか決めるのがいいだろう。
「分かりました。お返事保留にしておきますね。」
「そだ、この話って早めに決めなきゃいけないの?」
「それは・・・そうですね。今探しているので早めに返事しないと他の人が内定するでしょうね。」
猶予はそれほどなしか・・・。
翌朝、冒険者ギルドに集合したタイミングで二人に昨夜の話をしてみる。
「領主様の子息ってことは将来の領主様だろ?その教育係なら超が付く安泰職業じゃん。良かったな!大出世だ。」
ルインは素直に祝福してくれる。
「ダイキのスキルに頼れなくなるのはきついけど、そんなおいしい話なら一も二も無く受けたほうがいいよ。給料も相当いいでしょ?」
カイトも受けろと言う。
そういえば給料どれくらいもらえるのか聞いてなかったな。
下手すりゃガルドも聞いてないかもしれない。
つか着目点が金とはカイトらしい。
・・・でも、ちょっとでも引き留めてくれないのね。
少し寂しいぞ。
「でも・・・二人を置いて行ってしまうのが・・・。」
「な~にいってんだよ。16歳で実績もない人間が伝手で良い仕事貰えそうなんだぞ?祝福しない方が悪だろ。」
「そうそう、ダイキの持ってるスキル的にもクビは無いだろうしね。めでたい以外にない。」
「う・・・。」
「分かってると思うが、俺達もレベル20超えたら冒険者止めて親の仕事継ぐために仕事の手伝い始めるからな。このままパーティー組んでたら逆にダイキだけを残していなくなる事もありえたんだ。」
「だからダイキに安定、安全な仕事が決まりそうで僕も嬉しいよ。」
やっぱ・・・そうだよなぁ。
この世界で俺の歳じゃとっくに働いてなきゃいけない年齢らしいからなぁ。
職業冒険者でもいいと思ってたけど、意外とカタギの仕事をする人からの評価は厳しいのかもしれない。
「俺達はどっかのパーティーに入って頑張るか、そうじゃなきゃ街の周りで今まで通りに魔物を倒してレベリングするさ。」
「そそ、こっちの心配はいらないよ。」
ルインがよっしゃと言って話す。
「今日はダイキの出発準備の買い物と出世祝いに飯でも食おうぜ。飯は二人が出してやる。」
「さんせ~い。」
「分かった、ちょっと不安だったけど覚悟決める。」
「そうそう、頑張れよ!」
俺とかなり身長差のあるルインが手を伸ばしてバシバシと俺の背中を叩く。
・・・つくづくこの世界の子供って早熟だよなぁ。




