魔物の生態。
オークの畑を手伝いました。
「おかえりぃ!」
ラクロとキクロが手を振った後、ふごふごブゴブゴとオーク語?の様なものを話す。
言葉を[把握]スキルで把握して即座に[鑑定]スキルで鑑定してみる。
やはりオーク達が使う言葉みたいだ。
ただ、単純な単語の組み合わせらしく、今も”おかえり””ちがう””てき”という単語だけだった。
接続詞とかは無いらしい。
オーク達も理解出来たのか出てきて各々が取ってきた獲物をラクロに見せている。
兎、大きい鼠、イタチみたいなものが殆どだが一匹だけ鹿を取って来ていた。
「鹿か!ご馳走だな。」
オーク語で獲ってきた者を褒めている。
それから獲物を置いて巣に帰る様に伝えていた。
オーク達もこのやり取りに慣れているのか小さな丸太小屋に獲物を置いて森の中に帰っていった。
あの人らはこの辺りには住んでないのか?
「ラクロさん、あの人たちには家あるんですか?」
「ああ、あいつらは地面に深めの穴を掘って暮らしてる。そっちの方が落ち着くんだよ。」
オークってそういう生態なんだな。
「本来は自然に出来た洞窟や古代の遺跡を住処にする事が多いらしいんだが・・・。ばぁさ・・・村長や俺が畑作ったり守ってやってた方が生存できるからな。それにあいつらもそれを望んでるから。」
女性は巣穴で子守したり強い者は男と一緒に狩りに行ったり、と付け加える。
「なんでラクロや村長、キクロは家に住んでるんだ?オークならあっちの方が住みやすく感じないのか?」
ルインが素直に聞く。
おお、俺はちょっとだけ突っ込みにくいと思っていたことを。
「俺やキクロの顔とさっきのオーク達の顔思い出して比べてみ?」
「うん?」
ルインが小首を傾げている。
・・・さっきのオーク達は正に豚の顔をしていた。
しかし、今ここにいるラクロやキクロは人の顔も多少入っている感じがする。
表情が読めるというか・・・。
俺達三人が魔物が喋れるから、といってもすぐに警戒が解けたのはこのせいもあったんだろうか。
「魔物の上位種が生まれるのは、突然変異か遺伝から、らしいんだよ、ばぁさんによるとな。」
ラクロが少し俯いて話し出す。
キクロは話を聞くのに飽きたのか再びカイトと稽古している。
カイトも嬉々として応じている。
カイトはちょっと聞いといた方が勉強にならないか?
まぁいいけども。
「ばぁさんは突然変異、俺はばぁさんの遺伝かな。ラクロは完全に遺伝だな。」
「ラクロさんの両親も?」
「いや、俺の両親は普通のオークだった。・・・そう考えると隔世遺伝かな。」
「は~、なるほど。」
「ばぁさんはタイミング良く賢者に拾われたらしいが・・・。上位種は知性が人間並みになる事も多くてな。」
それがどうしたんだろう?
「2、3年もしたら親より賢くなっちまうんだよ。」
「それが何か困るんですか?」
「想像してみ?自分の周りにいる両親含めた大人達全員が自分より頭が悪いんだぞ?」
「遺伝もあるなら同じ上位種が一緒にいる事も多いんじゃないですか?」
「それでも一人、二人だろう。ばぁさんなんて既に5歳の時点で洞窟に住むオークの長として頼られてたらしいからな。」
確かに親が幼稚園児レベルの知能しかなくて俺に頼り切りになってたら・・・怖いな。
「ばぁさんは賢者から人並みの生活を教えられたし、俺はばぁさんからそれを教えられた。キクロもな。そうなると衛生観念とか含めて普通のオークの生活じゃ満足出来なくなるんだよ。」
なるほどな。
ラクロはさらに話す。
「ばぁさんは色々あってオーク達を守る村を作る事にしたらしいが・・・。俺は、昔は一人で旅に出ていきたかった。世界中を見て周って知りたかった。ま、今はみんなに愛着もあるしこの村を維持することに不満はないが。」
「人間よりよっぽど成熟した考え方だな。」
うんうんとルインが感動している。
そこでラクロが目を大きく開けてああっ!っと叫ぶ。
「あぶなっ!忘れるとこだった。あいつら血抜きはめんどくさがってやらないからいつもまとめて俺とキクロがやってんだ。」
さっき獲物を置いていった小屋まで歩いていく。
「俺も手伝うぞ!」
走ってルインがついていく。
「血抜きは好きだー!」
稽古をしていたキクロが叫んで二人も行ってしまった。
一番気を遣うべき年長者の自分が一番遅れを取ってしまう。
ほんと俺は一歩遅いな。
ふっとバスケ部で監督に指摘された事を思い出した。
(身長もあるし、運動量も悪くない。なのに良い位置に居ない。一歩遅い。もっと考えろ。)
頭の回転が遅いのかなぁ、俺。
う、コンプレックスをチクチク刺激されるぜぇ・・・。
無造作に小屋の中に置かれた獲物をそれぞれが掴み上げる。
一緒に小屋内に置かれていたロープをラクロが肩にかけ、俺が木を削って鉄板で補強したシャベルを脇に抱えて森の中へ。
「血抜きやった事あるか?」
「あります!」
カイトが自信満々に答える。
これまでも動物系の敵は狩った後カイトが血抜きしていた。
俺とルインはその後の素材としての毛皮剥ぎはやっていたが、綺麗に切れる様に練習中って感じだった。
「よっしゃ、まずはシャベルでここら辺掘ってくれ。」
ラクロに指を指された場所に俺が穴を掘る。
木の傍、太い枝の真下だ。
「ほいっと。」
キクロが木にナイフを刺してそれを足掛かりに枝までよじ登る。
ロープを投げて枝の上に通すと反対側に垂らす。
片側に獲物の後ろ脚を縛って引き上げる。
「血は穴に埋めないと肉食の動物や魔物がやたら寄ってくるからな。」
穴の位置に合わせて短剣で獲物の首を切りつける。
「結構時間たったからなぁ。死後硬直も終わってたろ。血、固まってないといいけど・・・。」
ぼたたっっと血がたれ始める。
「小さいのは手で持って血抜きするか。」
俺は自分のナイフで首を切りつける。
「ほいっ、どーぞ。」
「ありがと、ダイキ。」
「僕も貸して~。」
ルインとカイトにナイフを貸してあげた。
それぞれで穴に向かって獲物の足を持ちながら血抜きをする。
強烈な獣と血の匂い。
1週間程度でこんなことに慣れてしまうとは俺は適応力が高いんだろうか。
初めて感想頂いた!
嬉しい!




