畑耕す
占ってもらいました。
扉を開けると光が差す。
うっ、まだ日が高いからか目を指してくるな。
ここは森が切り開かれているのか大きく空が見えている。
「おー、終わったのか。」
声をかけられてそちらの方を向くとクワを持ったルインがいた。
足元は色の黒い土・・・畑でも耕してたのか?
「ダーイーギーざーん!」
ルインの立っている更に奥の方でカイトが小さなオークに肩車をしている。
「おー、カイト子守してんのか?」
「ぞでずぅ!ぐびじめないでぇ!」
オークの子は楽しそうにしているが首の辺り掴んでいるのでカイトが動けば動くほど落ちないように強く掴むらしい。
ほっといても大丈夫・・・かな。
「おお!話が終わったってかぁ。」
オークファイターが笑いかけてくる。
「この子はぁ良い子だな!畑泥棒した償いで手伝ってくれてるぞ!」
ルインの頭をバシバシ叩く。
「いてぇ!すまなかったって!」
ほんとルインは貴族の子にしては出来過ぎてるな。
・・・自分より6歳も年下とは思えん。
「えっと・・・、俺も手伝おうかな。」
「おお!お前もか!助かる!」
「ごのごおろじでぇ!」
カイトの方は災難だな。
「おっとすまんな、キクロ!人の嫌がる事をするんじゃない!」
そう呼ばれたオークの子供がストンとカイトから降りる。
カイトは座り込んで咳き込んでいる。
「肩車してもらってただけだよ!」
「力の加減を覚えろと言ってるだろ。」
キクロと呼ばれたオークの子が口をとがらせている。
「きつかったぁ・・・。」
「すまんかった。普通の人間の子供の様に遊んでくれたらいいと思ったんだが・・・。」
キクロも・・・種族的にはオークファイターだな。
周辺には野菜の畑が出来ている。
今耕しているのは新しい畑にするためってところか。
「オークが喋って村まで作るってびっくりしたぞ。」
「かなり珍しいだろうなぁ。確かに。」
ルインがオークファイターと話をしている。
ふと気になった事を聞いてみる。
「あなたは名前があるんですか?」
子供に名前を付けているなら恐らく自分も名前があるだろう。
「ああ、俺の名前はラクロ。村長は俺のばぁさんだが、名前聞いたか?」
「いや、聞きませんでした。」
二人っきりだと意外と名前を呼ぶ必要が無かったな。
「ばぁさんの名前はレンティアナだ。」
「ふぁ!凄い可憐な名前、だな。」
ルインも一緒に耕していたが、村長の名前に驚いている。
同感だった。
「ばぁさんは昔時詠みの賢者って呼ばれる人間の弟子だったらしいんだ。と~っきどきだけその頃の冒険の話をしてくれてるんだが、その人間に付けてもらったらしい。」
「へ~、賢者と一緒に冒険するオークの話かぁ。伝説みたいな話だな。」
ルインの反応的に色々と規格外の話なのかな。
「そいそいっ。おりゃ!」
畑を耕している傍でカイトとキクロが武器で撃ち合って稽古している。
カイトは木を削り出して作った棒、キクロは木の剣だ。
オークと獣人の手合わせ、まさにファンタジー世界。
「あんなものも持ってるんですね。」
「俺が時々稽古をつけてる。武器全般な。」
「色んな武器を使えるんですか?」
家の中に色々な武器があった事を思い出す。
棍棒なら訓練なんて大していらなさそうだが弓とか剣なんて教えてもらわなきゃ中々扱えるもんでもなさそうなのに。
「それも昔賢者からばぁさんが倣ったものらしくてな。俺に嬉々として叩き込みやがった。」
嬉しそうにラクロが話す。
「お兄ちゃん強いねぇ。」
「はっはっは!伊達に槍のスキルを持ってるわけじゃないのさ!そらぁ!」
上機嫌だな、カイトは。
ちゃんと子供してる。
「お、狩りに行ってたやつらが帰って来たか。」
ラクロの見ている方をつられて見ると、俺達を警戒してかコソコソ木の陰から様子を伺っているオーク達がいた。
う~ん。なんか違和感が・・・。なんだろう。




