占いしてもらう。
オークの村に来た。
「さて。」
村長がこちらを見る。
「あんたは転生者・・・か転移者だね。」
「分かるんですか!?」
「これで・・・。」
来ている服の袖から一握りの水晶を取り出す。
「”定まらない未来の一つ”が見られる魔具だよ。」
水晶を床に置く。
「昔、あたしの魔法の師匠から譲り受けたものでね。変えようと意識しなければ高確率で起こりうる未来が見えるのさ。あ、使用する本人の未来は見えないけどね。」
「それが俺と関係があるんですか?」
「あたしが師匠に占ってもらったら、”世界に大きく影響を与える来訪者に水晶を使用して未来を見せる”ってのがあってね。」
もちろんそれ以外にも色々占いの結果は出ていたけどそこは省くよ、と付け足す。
「”ただの村への来訪者”の事かと思ってたんだけど、あんたが特別なスキルを使用しているのが観えてね。この世界の法則に縛られない”異世界からの来訪者”であり、”村への来訪者”だと思ったのさ。」
ダブルミーニング的な?
というかスキルを使っているのも観察されていたのか。
普通見えないだろうに。
そういう能力も持っているのか。
相当強い人なんだな。
「俺で合ってるかどうか分かんないけど。・・・ですけど。」
村長は笑って答える。
「大丈夫、まず間違いないだろうさ。それに、仮に間違えてたとしても、未来が見える事であんたに悪影響がある訳じゃない。むしろ、悪い結果が出たら変えられる可能性があるから見ておいた方がいい。」
そう言って置いてあったナイフを渡してくる。
「少しで良いから血を出しな。」
「俺のナイフ・・・。」
「寝てたら邪魔だろうから外してたんだよ。さぁ。」
指先をナイフで刺すジェスチャーをする。
言われた通りナイフの先端を指先に刺す。
プクリと小さな血の玉が出来る。
「水晶に付けるんじゃ。」
ペトっと指で水晶に触れる。
「集中するからの。待っとれよ。」
「分かりました・・・。」
村長が目を閉じて意識を集中する。
手から水晶に魔力が流れ込んでいく。
水晶の中心に小さな魔力の核を作って、その周りに覆う様に違う方向に回る魔力の繭を作り出す。さらに外側に違う方向に回る魔力の繭を・・・。
何重にも重ねていき水晶の大きさまで大きくする。
色んな方向に回転して流れる魔力の玉、のマトリョーシカ的な・・・。
俺は全く魔力が無いので分からないけど、とてつもなく繊細な制御をしているんじゃなかろうか。
村長が目を開く。
「占い師本人は自分の未来を占え無い、占われている者も見ることは出来ない。結果を聞くだけさ。」
見ていると、確かに魔力が様々な属性に変化しながら流れも複雑に変わっていっているが、それだけで何も見えない。
・・・というか変化していく属性の中に”時”とか”空”とかあるんだけどそういう属性もあるのか。
黙って知らない新しい属性も感知出来る成長しないで欲しい。スキル君・・・。
また調べなきゃいけない事が増えてしまった。
「ふむ・・・。沢山の子供に囲まれている未来が見えるねぇ。」
「子供・・・。自分の?」
「さぁなぁ。ただ、すぐには数えきれないくらいだから、自分の子供だけってこともなかろうなぁ。」
どういう状況だろう?
学校か?
教師になりたい夢なんてないんだが・・・。
「教師になった・・・とか?」
「教師ってのは相当なるのが難しい職業だからねぇ。まぁそういう未来もあるって思うくらいでいいじゃろう。」
村長が首を傾げる。
「この程度の事を見せるためにあんたに占いをする預言があたしに出たとは思えないんじゃが・・・。もっと深く観て見ないとな。」
一度無言になる。
もう一度深く集中している様だ。
「おお、見えてきた・・・。」
村長が目を見開く。
「ほおおぉぉ!なるほどのぅ。」
「え?何が見えたの?」
村長が一瞬考える様に空を見る。
「そうじゃな・・・。お主はある人から大役を任される事になる。使命の内容までは分からんが、頼まれる相手が相当凄い人物、とだけ言っておく。」
なぜそこで微妙に隠されるんだろう?
「どういう経緯で知り合うのかは分からんが、その使命を受けて世界を導く者になる未来が見えておる。」
「それって起こりうる未来?」
「うむ・・・。自分の思うように進んでいけばその人物に出会えるじゃろう。」
めっちゃ偉くなれるのか。
相当苦労しそうだなぁ。
「で、その人って誰です?」
「今は言わん。きっと会えるじゃろうからその時までお楽しみにしとけ。・・・もう出会っておるのかもしれんが。」
「?」
「これくらいで十分か。」
村長が水晶から魔力を解放してまた袖にしまった。
「終わりじゃ。凄いもんが見えたわい。ありがとよ。」
「う~ん。なんかスッキリしない。」
ワハハッと村長が笑う。
「やりたいようにやってれば教えた未来に辿り着くじゃろ。せいぜい妄想しとけぇ。」
村長がため息をつく
「久々に相当魔力を使ったから疲れたわぃ。お主は外に出て気分転換してきたらどうじゃ?」
「分かった。ありがとうございます。」
二人を待たせてたもんな。
立ち上がって扉から出ていく。
・・・・・・
出ていった扉を見つめながら村長が呟く。
「あの未来・・・辛いじゃろうなぁ。しかし、あの者が世界の導き手とならねば最悪の事態に・・・。」
天井を見上げる。
「わしも備えねばならんのぅ。」
遅れました。申し訳ないです。




