オークとの戦い
素材の宝庫を見つけた。
カン!カン!カン!カン!
突然金属を叩く音が聞こえる。
驚いて辺りを見回すが木々に反射してかどこから聞こえてきているのか判然としない。
空間把握の範囲の外だ。
「な、なに?」
「俺達以外にもいたのか?ダイキ、索敵スキルの範囲外から聞こえる音か?」
「そうだ!」
現在は半径100メートルは超えている。
平原ならともかくこの暗い森の中で範囲外からということは可能性として相当手練れの者の可能性がある。
敵ではない可能性もあるが・・・。
そこではっと気付いた。
光がほぼ入らない森の奥でこの場所だけ切り取った様に光が入りこんなに色んな素材がまとまって生えている。
考えてみれば不自然だ。
誰かが意図的に作ったってすぐ考え付くだろ。
俺のアホ。
年長者の自分がすぐに気付くべきだった。
これ、畑泥棒になってるんじゃないか?
謝罪して摘んだ分返せば許してもらえるか?
そもそも言葉が通じなかったらどうする?
三人で集まって武器を構える。
次の瞬間空間把握の範囲に入って高速で近付いてくる者があった。
2体。
魔物だ。
すぐさま[把握]スキルで調べる。
オーク
レベル:13
HP:68
MP:0
力:34
守り:22
魔力:0
素早さ:17
HPと力が高く素早さが低い。
オークファイター
レベル:18
HP:107
MP:0
力:64
守り:45
魔力:0
素早さ:31
オークの上位種。
戦いにより特化しており、様々な武器を使いこなす。
素早さも高い。
やばい。
戦えば一瞬で殺されるかも。
・・・・・・
以前、なぜゴブリンやオークとは殆ど戦わないか、についてルインに聞いていた。
知能のある魔物は人里には滅多に近付かないし、知性の高い上位種がいれば人里離れたところに村を作って自給自足していたりする、らしい。
人と争えば自分たちも無事で済まない。
だから基本魔物の方から避けてくれる。
襲ってくるときは事情がある、との事。
上位種は人間以上に賢いやつも多いから人間からも下手に近付かない方がいい。
あと、人間と魔物を分けるのは”人間と子供を作れるかどうか”が基準らしい。
獣人や魔族は人間と子供を作れるので人間の亜種、亜人って事になっている。
・・・・・・
・・・襲ってくる理由ありまくりじゃん!
恐らくオークの畑荒らしてしまったんだから。
「オークだ!」
「もう見えてるよ!」
「うわわっ!まずいよ!オークはまずいよ!」
空間把握の範囲にオークが入ってから近付くまで数秒。
走ってきた勢いのままロングソードを構えていたルインの腹を拳で振り抜く。
「ごえぇ!」
吹き飛ばされて茂みの中に突っ込んでいく。
[助力]でルインの守りにステータスを割り振っておいて良かった。
下手したら死んでたかもしれない。
ルインからすぐにステータスを戻す。
今殴ったのがオークファイター。
遅れて到着したオークの方が自分を狙って拳を振り上げる。
[把握]スキルである程度オークがそれぞれ誰を狙うか予想出来ていたので、両手の籠手で拳を受け止める。
メキメキ、ミシミシと骨の音が体に響く。
後方に飛んで威力を反らそうとする。
「うぐううぅ!」
強烈な衝撃。
飛んだ事で威力はころせたが吹っ飛んで木に激突する。
「がはぁ!」
肺から強制的に空気が吐き出される。
上下左右が分からなくなる。
気付いたら地面に倒れていた。
オークファイターがカイトを殴りつける。
「ひぃ!」
上手く槍で衝撃を受け流している。
一番武器の扱い上手いんじゃなかろうか。
しかし、すかさずオークファイターが前蹴りを放つ。
「あぎゃ!」
受け止めようとした槍ごと吹っ飛ばされる。
気絶したみたいだ。
俺はともかく、二人が一撃でやられた。
多少レベルを上げただけでは手も足も出ない魔物がいると想像出来ていなかった。
オークファイターは茂みで気絶しているルインとカイトを担ぎ上げる。
「・・・おい、二人には手を出すな。」
全身が痛みで痺れてうつ伏せになったまませめて言葉だけ虚勢を張る。
どう見たって俺も瀕死。
情けない。
自分が年長者として守ってあげなきゃいけなかったのに。
殺されるのか?
二人に申し訳ない。
自然と泣いていた。
悔しい、情けない、申し訳ない、怖い、死にたくない、許してほしい、二人だけでも助かってほしい、死にたくない、自分がちゃんとしてれば・・・。
グルグルと思考が回転していつの間にか気を失ていた。
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