お風呂に入ろう
レベル上がりました。
部屋に一度戻り胸当てやマントを脱いで布の服だけになる。
脱いでみると体が相当動かしやすくなった。
装備している間は気付かなかったがやっぱり動きにくくなるもんなんだ、と改めて実感する。
裏口から出ると暗闇の中右手に扉がみえる。
周囲から見えないように木の壁に囲まれた小屋に水瓶が置かれている。
陽が落ちて周囲は真っ暗だ。
家の中のランプの明かりがぽつぽつと遠く見えている。
幽霊を信じているわけではないがちょっと怖い。
光を求めてさっき買った光る石を壁にガリガリと擦り付ける。
さっきよりも強く周りを照らす。
全く熱くない。
それを地面に置いて服を脱ぐ。
考えてみれば3日ぶりぐらいに体を洗う。
状況が激動過ぎて風呂に入ってない事に全く思い至らなかった。
「くせぇ・・・かなぁ。」
クンクンと腕や脇を臭う。
う・・・。とりあえずさっさと洗おう。
水瓶の横に小さな桶があるのでそれに水をすくった後そこに布を付けて体を擦る。
垢が落ちてるのか何となくスッキリした気持ちになる。
その後頭に水をかけて擦る。
この世界、多分シャンプー、リンスはないだろう。
石鹸辺りならあるか?
水かけただけじゃ髪に付いた油は多分落ちないだろうしあるなら早めに欲しい。
あと、今度から明るいうちに水浴びしたい。
水浴びを終わらせてガルドに聞いてみる。
「石鹸って売ってたりする?」
「石鹸ねぇ・・・。ありますがこの国だと東にあるアルナ村の名産ですから、そっち方面から行商が来た時に買うのがいいですね。その時以外だとかなり割高になります。」
「この街じゃ作ってないの?」
「牛の油が必要ですからね。自然牧草地帯の名産品になりやすいんです。」
「はぁ~そういうものなのね。」
石鹸の作り方なんて考えてなかった。
「あ、あと温泉とかってある?」
「そっちは北西のベダ山に行けば温泉街がありますね。」
この世界でも温泉はあるらしい。
「湯治のために国中から人が訪れるので結構賑わいのある街らしいですよ。」
「おぉ、いつか行ってみたいな。」
そうですね、私も一度は行ってみないと、とガルドが頷く。
「それじゃお休み。」
「おやすみなさい。」
部屋に戻り置いてあるナイフを持ってみる。
まじまじと見つめた後振ったり突いたりの素振りをする。
朝よりも重さを感じない気がする。
ちからが上がったおかげだろうか。
ただ、昼間見たルインやカイトの武器捌きとは全然違うような気がする。
貴族のルインは教育されていたのかもしれないが、カイトの槍捌きもサマになっていた。
これがスキルを持っている人とない人の差なのだろうか?
グリーンスライムにすら全然攻撃が通らなかった。
いや、レベルの上がった今なら多少はナイフで通るだろうか。
ひとしきり素振りをして机の上に丁寧に置く。
ランプの光に鈍く反射していて綺麗だ。
床に置いてあった胸当てとお金の入った袋も隣に置いた。
椅子に皺にならないようにマントをかける。
ブーツも揃えて椅子の隣に。
むふぅと鼻息を出して満足してベッドに横になる。
寝ようとすると色々な思考が高速でやってくる。
当面は今日のようなレベル上げが続くだろう。
その間に二人から色々教えてもらおう。
今の自分は知らない事が多すぎる。
幸い自分のスキルはこの世界の標準的なスキルと違うらしい。
スキルポイントを割り振らなくても使い続ければ成長するみたいだ。
明日からガンガン使っていこう。
そんである程度レベルが上がったらガルドに頼らず冒険に出よう。
元の世界に戻れる方法がどこかにあるかもしれない。
それに折角異世界に来たのだから日本じゃ見えない風景を見て周りたい。
それにしてもガルドの能力は何なんだ。
ステータスの高さもそうだがスキルも見ることが出来なかった。
まさか魔王の手先とか?
んなわけな・い・・か・・・。
昼間の疲れからダイキはいつの間にか眠ってしまった。




