報酬換金
キラーバニーを倒しました。
戦闘が終わった後慣れた様子でカイトがキラーバニーの血抜きと皮剥ぎをやっているのを見てダイキは少し引いてしまった。
ルインは慣れてないので任せると言っていたがこの世界では出来るのが割と当たり前の様だ。
きつい事だがそのうちカイトから教えてもらおうと決心する。
キラーバニーとの戦いが終わったところで急いで街まで戻る。
あれ以上強い魔物が集団で来られたら現状では対処しきれない。
キラーバニーが二匹だけだったのも運が良かっただけと言える。
「じゃあとりあえずギルドに戻って拾ったもの買い取って貰おうか。」
「キラーバニーの肉は持って帰っていい?」
カイトがダイキを見て聞いてくる。
「いいんでない?なぁルイン?」
「うん、構わない。俺はこれ一個貰う。」
グリーンスライムの核を摘まんで言う。
「父上から貴族の心構えとしてパーティーの中で活躍した事を報告しろって言われててな。これ持って帰れば取り合えず文句は言われないだろう。」
「はえ~、そういうもんなのね。」
結構きっちりしつけられているらしい。
「肉って持って帰るまでに腐らない?」
「一日くらいならどうとでもなるよ。どのみち燻製にする予定~。燻製作るの好きなんだ~。あの匂いが。」
カイトがうっきうきしている。
意気揚々とギルドの扉を開ける。
「おかえり~。大丈夫だったみたいね。」
受付嬢が笑って迎えてくれる。
気が抜けてほっと落ち着く。
命懸けの後のこの雰囲気はたまらない。
意外と命のやり取りとか、生還した実感を得るために冒険者になる人も多いんじゃないだろうか?
元の世界、地球でも昔狩りに出たり開拓のために旅に出ていた人達はこういう気持ちになってたんだろうなぁ・・・。
ダイキはしみじみしながら考える。
「そうだ、これ、買い取ってくれるんでしょ?」
回収した薬草系の素材とグリーンスライムの核、キラーバニーの皮をカウンターに置く。
「わぁ!結構頑張ったね!」
グリーンスライムの核を摘まみ上げる。
「この中だと特にスライムの核はありがたいわ。倒した後探すのが面倒だし、わざわざ経験値効率の悪いスライム系を狙って倒す冒険者も少ないのよ。
スライムの核は魔法付与装備に使うこともあるし、薬にも混ぜるし装飾でも人気でよく使われる、需要はすっごくあるのにあんまり集まらないの。」
それに比べてキラーバニーの皮にはあんまり反応が無かった。
より強い魔物から採れるから良い素材というわけでもないのか。
「ちょっと待ってね。知識のある事務の人に渡してくるから。」
素材を抱えてカウンター奥の事務所に引っ込んでいった。
「今算出中だから待っててね。」
そう言って受付の仕事に戻っていく。
待っている間三人で椅子に座って話す。
「いくらぐらいだろうね~。」
「あの程度の素材なら2万マーニー越えてたらいいんじゃないか?」
「は~、それくらいなもんか。」
食事にかかる金額から考えると冒険者は相当効率のいい職なのかもしれない。
いや、命懸けなわけだからそれでトントンなのかもしれない。
「街の買い取り専門店とか各専門店に売るよりはちょっとだけ高いと思う。」
ドヤ顔で受付嬢がお金を渡してくる。
「4万3千マーニーよ。ちゃんと数えてね。」
そういわれてダイキがみんなの前で数える。
1千マーニーの硬貨が43枚。
「キッチリバッチリです。ありがとう。」
お礼を言って三人でギルドを出ていく。
「明日も無理せずレベル上げするのよ~。」
「ありがと~。ルルアナさん。」
カイトが受付嬢の名前を言った。
ちょっと可愛い受付嬢はそんな名前だったのね。
打ち上げと称して三人で夕食する。
場所はカイトのお勧めの安めの料理屋だ。
量があるから良い!らしい。
「意外と儲かったねぇ。」
お金の入った袋をじゃらじゃらと鳴らしながらカイトが嬉しそうに話す。
「俺は金いらないから二人で分けろよ。」
興味なさそうに話すルインにカイトが驚く。
「俺は金に困ってないし、あくまでも将来のためにレベル上げしてるだけだからな。」
「それはダメだよ。そういうのはダメ。」
カイトは絶対に3等分にして受け取れ、と言って聞かない。
「ダイキさんもそう思うよね?絶対に等分にして受け取らないといけないと思うよね?」
そう話を振られてダイキも一瞬言葉に詰まった。
実はダイキもいらないと言おうとしていた。
ガルドの家に居る間は恐らく食事を出してくれるだろう。
凄く貧相だけど・・・。
お金も必要だと言えば出してもらえる雰囲気もある。
将来的に出ていくとしても十分成長してからだと思っている。
それからなら冒険者として独りで十分食っていける。
自分のスキルを駆使すればそう難しい事じゃない。
ただ、カイトが望んでいないなら平等にした方がいいだろう。
「俺も分け合ったほうがいいと思う。」
「ほら、ダイキさんもこう言ってる。」
「別に争ってまで受け取らないわけじゃないけどさ。どうしてそこまで拘るんだ?報酬増えたほうが良くないか?」
そう言われてカイトが俯く。
「うちの父さんがさ、あ!今は雇われの武器鍛冶職人なんだけど、昔やっぱり冒険者だった時に同じようにレベル上げが目的だから報酬要らないって言ったやつがいたんだって。詳しくは話してくれなかったんだけどそれが原因でパーティーがぎくしゃくしだして、最後は喧嘩別れになったって。」
そういう解散は嫌だ、と最後に呟く。
「そか、じゃきっちり受け取る。そのかわりやっぱりもっと頂戴は無しだぞ。」
「言わないよ!」
二人が笑っている。
若い二人の空間・・・。
ちょっと寂しい。
ブックマークありがとうございます!




