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魔法はやはり素晴らしい  作者: 栗鮑菊
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プレゼント

テトとテナがこんがらがってくる。

ただいまー。

なんだかんだユウヤの家に長く居たから結構遅くなってしまった。テト達はもう寝てしまっているかも知れないので小声で言う。


おかえり!遅かったねカナタ。私行けなくてユウヤ怒ってなかった?

…すっかり忘れていた。ユウヤも何も言ってなかったと思う。ユウヤも忘れてたとか?あんな事があれば仕方ないか。


怒ってなかったよ。

…何も言ってなかっただけだけど。


良かったー。明日謝っておくね。

テトは申し訳なさそうに言う。


ふふ、謝るか…。

思わず呟く。

前世では悪魔だったテトが謝ると言うと不思議な気持ちになる。

気に食わない事があるとすぐ暴れる我が儘娘だった。


何?謝ったらおかしい?

間違った事したのかな?と言いたそうな顔をしている。


いや、おかしくないよ。何か用事があったんだろう?

どんな用事か気になるので聞いてみる。


カナタ、また口調が戻ってるよ。今日はね、テナと一緒にプレゼントを用意してたの!

そう言ってテトは細長い箱を渡してくる。

ご丁寧にリボンまで付けてある。


そういう事です。私からはコレを。

いつの間に居たのかテナも小箱を持っている。

今日は何か特別な日だったか?

誕生日など祝わなくなってから数える事すらしなくなった。死んだ年齢すら分からない。


今日って何か特別な日だっけ?

プレゼントを受け取りながら聞いてみる。

もし重要な日なら申し訳ない。


今日は私達が召喚されて千年になります。カナタは時間が飛んでたように感じているので分からなくて当然でしょう。

思ってたより重要な日だった。

いや、それよりも…


千年って、そんなに経ってたの?

魔法の衰退を見るに百年どころではないとは感じていたが。


はい。カナタの体を再構築する為に時間が掛かりました。

テナは申し訳なさそうに謝る。


それよりカナタ!開けて開けて!

テトが急かしてくる。

開けてみると中には煙管があった。


待ちなさいテト、この年齢で煙管はマズイ。いや、問題ないのか。

前世では大好きでよく吸っていたが、成人として認められるまでは吸ってはいけない決まりがあった。

だが私は決まりに従う必要はない。

悪魔と契約した時点で今更だ。

そもそも成人と認める保護者もいない。


だから口調!カナタは成人とか気にしなくても良いんだよ。それに好きだったでしょ?でも葉っぱはテナと栽培してるだけだからあんまり多くはないんだ。ごめんね。


私からのプレゼントはオリジナルブレンドの葉です。お気に入りだった味に近づけてみました。

テナからのプレゼントを開けると葉っぱ、灰を捨てる容器が入っていた。


ありがとう。早速一服させてもらうよ。

既に葉は刻んでくれているので劣化する前に吸いたい。

羅宇(真ん中の筒)と雁首(煙草を詰める所)と吸い口を組み立てる。


ねえテト。この羅宇やけに重いんだけど…これ素材は?

雁首と吸い口も同じ素材の様な気がする。殆ど透明だから硝子かと思ったがもっと重い。鉄より重いと思う。

因みに素材が変わると味も変化する。私はリビングウッドを使った物を愛用していた。


ミスリルクォーツだよ。だから魔法の触媒にも使えるよ!

何かとんでもない事を言い出した。

そもそもミスリルクォーツが貴重品。数十グラムでも発掘されたらひと財産になる代物だ。

百グラムを超えた塊が国宝になった話も聞いた事がある。


冗談でしょ?どうやってそんなもの手に入れるのよ。そもそもミスリルクォーツって加工出来ないはずよね?

どう見ても装飾に使用されているわけじゃない。丸々同一素材だ。


我々悪魔はミスリルクォーツを作ることが出来ます。正確に言うならば特殊な魔力を銀に込めるのです。もう悪魔では無くても特殊な魔力は使えるようだったので作ってみました。

成る程、銀で形にした後でミスリルクォーツに変化させたと。


そんなの初めて聞いたわよ…なんで教えてくれなかったの?

前世で知っていたら魔法を使う為に色々試しただろう。


悪魔以外に教えようとすると最悪死んじゃうからねー。言おうとするだけで苦しくなるし。こっそり作って渡そうとしても作る段階で存在が消えかけたんだよね。


今はもう悪魔ではないからか関係はないようで、カナタの為に作ろうとしても平気でした。


面倒ね悪魔ってのも。でもそうなると人前で使えないわね。

そもそも煙管の時点で使いづらいのだが。


それなんですが、煙管…というか煙草が普及してませんね。お陰でタバコ草を見つけるのに苦労しました。

よく見つけられたな。パッと見て分かるものなのだろうか。

丁度詰めようとしていた葉を見るが細く刻まれていてよく分からない。


えーと火、火…。

いつもの火を点ける魔道具を探す。


カナタもう魔法使えるじゃん。

テトが呆れた声を出す。

そうだった。


努力の成果って訳でも無く急に使えるようになったせいかつい魔道具を探しちゃうわ…。

歳のせいじゃないよな?とか考えつつ火を点ける。

口の中で味わう人が大半だったが私は肺にまで吸い込む派だ。

煙で咳込むかと思ったが意外とすんなり吸い込めた。

ゆっくり吐きつつ味と香りを楽しむ。


美味しい…。

煙管が変わったからか、煙草が違うお陰か仄かに甘くて吸いやすい。


良かった…。

テナがホッとした表情をする。


ブレンドまでしていたという事はテナも吸ったのよね?

でないと味が分からない。

まさか噛んで確認した訳じゃあるまい。


はい。ですが少量摘んでお香のように燃やして香りを確認しただけです。煙を吸うのは苦手ですから。

それでよくブレンドまでやったものだ。


十分美味しいよ。次からも同じ分量で作って頂戴。

本当は色んなブレンドをしてみたいがテナ達に頼むのは酷だろう。

色んな葉を栽培出来るようになったら自分で試してみよう。

未成年の喫煙はダメですよ。

カナタは転生体なのでセーフ。セーフです。


ミスリルクォーツのイメージは透明な銀色で、重さは銀と同等。(確か銀ってそこそこ重いんですよね…。でも金程じゃないからカナタでも振り回せる筈。)

硬度がダイヤ以上で高温にも耐えるので加工は不可能。


テトが急にユウヤと遊ぶ約束をキャンセルした理由はテナにブレンドのチェックを頼まれたからです。

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