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魔法はやはり素晴らしい  作者: 栗鮑菊
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才能の開花

おはよう。

そう言って教室のドアを開ける。


テナはお弁当を作ると言っていたし、テトは朝食も食べずに登校していた。

テナと一緒に行こうと考えていたのだが。

テトが心配です。あと餌を与えておいて下さい。との事で、サンドイッチを持たされて一人で登校した。

テトは窓眺めているようだ。


あ、カナタ様。

何をしてるの。あと様がついちゃってるわよ。

うん。カナタは今日の授業何をするのか知ってる?

そんな事を聞いてくる。


なんでも今日はずっと魔法の適正を調べるのだそうだ。

それを知ったテトは私の為にどんなテストをするのか調べていたらしい。


カナタ様。適正が低くても必ず大魔法使いにしてみせます。必ずです。

テトは真剣に言っているようだ。


大丈夫だテト。魔法を使えるようになる事が願いだったんだ。こうして使えるだけで満足しているし、なにより感謝している。本当にありがとう。

私も昔のように口調を戻して真剣に答える。


そっか。良かった!

テトは普段通りになったようだ。


はいテト。朝ご飯。先生に見つかる前に食べちゃいなさい。

テトへのエサやりを終わらせたあたりから同級生が登校してくる。

テナも無事に間に合ったようだ。

ユウヤは遅刻ギリギリでやってきた。


母ちゃんがカナタの事を聞きたがって寝るのが遅れて眠くて眠くて。

ユウヤは大きな欠伸をしている。

ユウヤのお母さんは魔導具職人だそうで、私の杖の使い方を聞いて興味を持ったらしい。


だからカナタ、今日もうちに来てよ!母ちゃんがしつこいんだ!父ちゃんもふらふらで困ってんだよ。

眠そうな目で頼んでくる。子供に無茶させるなよお母さん。


構わないわよ。今の魔導具作りに興味があるし。


今のって?

ユウヤが聞いてくる。

まずい。口が滑った。転生は禁術、というより忌避されている。詳しくは省くが悪魔との契約と同等の外道である。


本で読んだのよ。古い本。

適当に誤魔化す。もちろんそんな本存在していない。


ふうん。あ、そうだ!テトちゃんとテナちゃんも来ない?母ちゃんご飯食べさせる気満々だったし!こういう時いつも張り切って作り過ぎるんだ。

ユウヤは段々と目が覚めてきたようだ。


すみませんユウヤさん。私は用事が。テトには行かせます。

と、テナは断った。

テナの用事ってなんだろう。食料の備蓄ならまだあったと思うが。

テトはノリノリで行く事になった。



その後、魔法適正検査が始まった。

前世では無かったものだ。楽しみである。

一人一人順番に魔法を唱えてもらい、その成果を見るらしい。

自信のある人達は我先に魔法を見せ、次の検査へと向かう。

自信のない人達は順番が回ってくるまで練習しているようだ。


カナタ達は魔法使えるのか?

ユウヤが聞いてくる。

実は魔法が使えると分かってから一通り試したのだが、簡単な魔法以外は全く使えなかった。


私は全然ね。簡単なのならなんとかってところよ。

前世に比べれば月とスッポンどころではない違いがあるのだが、魔法陣で出せる魔法に比べると残念過ぎる。


ちなみに魔法陣は描けるし使える。

だったら魔法なんて使えなくてもと思うかもしれないが、魔法陣は描くのに時間がかかるし、描いてからしばらくすると効果が失われる。

お世辞にも使い勝手がいいとは言えない。

前世でも劣化魔法や過去の遺物なんて言われていた。


私はそれなりに出来ますね。

私も出来るよ。

テナとテトも答える。テトが少し遠慮気味に言ったのは今朝の話をまた考えているのだろう。


マジかぁ。俺は風魔法ならなんとか出せるんだけど他は全然なんだよな。

ユウヤまでテンションを下げている。

じゃあまず風魔法の適正検査に行こう。

私はそう提案した。

専用の教室に向かい、先生に会う。

行きすがら順番を相談してテナ、テト、ユウヤ、私の順に受ける事に。


テナはノートを手に持って風で持ち上げてみせた。

先生は驚いたように結果を書き込んでいた。やはり10歳にしてはやり過ぎだったらしい。

テトはテナに何か言われて頷いた後、校庭で拾ってきた落ち葉を数回かまいたちを起こして刻んでみせた。

これにも先生は驚く。

仮にも元悪魔である。魔法はお手の物のようだ。

恐らくこれでもかなり手を抜いている。


二人とも凄すぎるよ。俺なんて少し風を起こせるくらいなのに。

ユウヤは落ち込む。


二人が特別凄いのですよ。落ち込む事はありません。

先生はユウヤを励ます。

ユウヤは頷き、机に立てたノートを風で倒して見せた。


十分ですよユウヤ君。他の検査も頑張って下さい。ではカナタさんもどうぞ。

私は何をするか考えていなかったのでユウヤと同じようにノートを立てて倒した。

これくらいならなんとか出来る。


カナタも出来るんじゃないか!

ユウヤが悔しがる。もうちょっと弱い魔法にしてあげれば良かったか。


ユウヤに負けたく無かったから頑張ったのよ。結構無理をしたわ。

また適当に誤魔化す。誤魔化してばかりな気がするが、仕方がない。


くっそー!俺は風魔法以外使えないってのに!

ユウヤはご機嫌ななめだ。


私はテナとテトに先に回って貰う事にした。

風魔法以上に手加減するように伝えておくのも忘れない。


ユウヤは他の魔法を全く使えないの?

ユウヤは灯火の詠唱をする事で返事をした。

確かに発動していない。

だがこれは…


ユウヤ、ドッヂシューターの時みたいにこの鉛筆を持ってやってみてくれない?

ユウヤは何も聞かずに試してみてくれた。

すると鉛筆の先から火が出てきた。


な、なんで!?

ユウヤは驚く。


やっぱりね。ユウヤ、落ち込まなくても大丈夫よ。あなたはちゃんと魔法が使えるわ。ちゃんと勉強をすれば全部の魔法を使えるようになるわ。

そう励ます。


前世で魔法が使えない理由を研究した時に仮説として、魔力の密度や濃度次第で発動しないのではと考えた事があった。結局無駄だったが。

要するにユウヤは魔力を拡散させる癖があり、その条件下だと風には向くが、その他の魔法には不向きだったわけだ。

制御が下手でも魔力が増えると拡散してようが出せるようになるが、子供には厳しいだろう。

そこで杖の先から弾を出すイメージが既にあるユウヤに鉛筆を持たせ、魔力を無意識に集めさせた。


カナタは凄いな!!

ユウヤは元気になったようだ。やっぱりこっちの方がユウヤらしい。


たまたま知ってただけよ。きっと授業で習うわ。

前世では無かったので習わないかもしれないが。


それにこんな知識があったところで私もコレが限界よ。

そう言って指先に灯火を出す。が、すぐに消えてしまう。


そうなのか…でもありがとう!カナタもいっぱい魔法使えるようになるよ!だってすげーヤツだもん!

謎理屈は謎過ぎて分からないが、何故かとても頼もしい言葉に聞こえた。


そしてすぐにユウヤと火魔法の適正検査を受けてきた。

ユウヤが鉛筆の先に出した時は先生が不思議そうな顔をしていたが許容範囲だろう。


よっし!水魔法も試そう!

ユウヤは早速鉛筆を持って水を出す魔法を唱える。

水も魔力を集める方が出やすいはずなので簡単に…ドバァッ!!

おぉ、私より才能あるね。大量だ。


わぁあ!!ごめんカナタ!!!大丈夫!?

ユウヤはびしょ濡れになった私に謝る。


大丈夫よ。今日は天気が良いしすぐに乾くわ。

むしろ涼しくなったな。なんて思いながら答える。


それよりも才能あるんじゃない?適正検査受けに行きましょ。

尚も謝るユウヤを連れて教室に向かう。


びしょ濡れじゃないですか!どうしたんです!

教室に入るなり問われる。


ユウヤの才能が開花した結果です。それより先生、服を乾かせたりしますか?

魔法陣を描いて乾かす事も出来るのだが10歳の子供が描いたら間違いなく騒ぎになるだろう。

同じような理由でテナに頼むのも却下。


勿論出来ますよ。一体どんな魔法が使えたらこんな事になるの…?ウォーターボールを何発も受けたような量だけど。

温風魔法を使って乾かしながら聞いてくる。


ウォーターボールのような攻撃魔法じゃないです。水を出すだけの魔法です。

私はそう答えようとしたがふと思い留まる。

行き過ぎた才能があると周りの人達が放って置かない。本人が決めるべきだ。


うーん。唐突の事だったのでちょっとよく分かりません。

そう答えを濁した。


俺もよく分かりません。今まで風以外の魔法なんて使えませんでした。でもこう鉛筆を使ったらドバーッと。


鉛筆を?やってみてもらっても?

そう言って先生は大きいフラスコを出す。


ここ目掛けてやって下さい。少しくらい的を外しても吸い取るので心配ありませんよ。

私はフラスコに興味津々だが空気を読んで引き続き先生に温風魔法を使ってもらう。


結果としては散々だった。

水は先程よりも大量に出た。

フラスコは吸収しきれずに割れた。

当然先生も私も仲良くびしょ濡れ。

更にユウヤが魔力欠乏症になり倒れた。


な、な、な!?

先生も軽度のパニックを起こしている。


先生、落ち着いて下さい。あと相談があります。

私は落ち着いてと言いつつパニックを起こしている間にユウヤの才能を公にしないように言いくるめ。もとい、説得をした。


なるほど、水魔法の適正が高いけど魔力の放ち方に癖があるのね。その癖を鉛筆で強制してみたらこうなったと。

説得するにあたって説明せざるを得ないと判断した私はこのミナトという名の教師に洗いざらい話した。

隠した事は悪魔や転生に関する事くらいだろう。


はい。私はとある方からそういった知識を得ました。ですがこんな事になるとは思わなかったのです。

そういう事にした。謎の貴族設定を利用させて貰う。隠れ蓑になるはずだ。


そして相談というのは、ユウヤの才能を隠して欲しいのです。こんな才能があったら権力者達が黙っていないでしょう。ユウヤはまだ子供です。自分で人生を決められる年齢まで。いえ、卒業までで結構です。学校外に知られないようにお力添え…えーと、手伝ってくれませんか?

途中から少し地が出ていた事を自覚して最後だけ子供っぽく言ってみる。


そしてチョークを勝手に拝借してユウヤを中心に魔法陣を描く。

効果は魔力の回復と強力な除湿と少しの暖房。

ついでに自分も入る。


ミナト先生も。風邪を引きますよ?

そう言って招く。


あなたは一体…こんな高度な魔法陣見た事無いわ。

そう言って額に手を当てている。

更に混乱しているようだがもう今更だ。


う、あれ、なんで寝てるんだ俺。

気がついたようだ。


おはようユウヤ。起きて早々申し訳ないんだけど、話を聞いてくれる?

それからしばらくユウヤに自分の才能の事や才能を見せるリスク等を話した。


よく分からないよ。悪い事に使わなければいいんじゃないの?

そんな事を言う。


そうね。それが理想。でも物事はそう単純じゃないわ。食べ物を得る為に生き物を殺す。これだけでも殺された側が存在する。あなたは自分で何を生かし、何を殺すのかを考えられるようにならなければならない。

婆さんになっても分からない事だらけだった。酷な事を言っている事も理解している。エゴだとしてもユウヤならばと期待して言ってしまう。


分かった。出来るだけ隠しておくよ。

ユウヤはそう約束してくれた。


はぁ。校長には言っておきますからそのつもりでいて下さい。カナタさんの事もね。

ミナト先生は諦めたようにそう言っていた。

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