ドッヂシューター
ユウヤ親子とのドッヂ&シュート。別名ドッヂシューターが始まった。
お互い同時に真上へ弾を打ち上げてから開始する。
ポシュッ!と、なんとも間抜けな音がした。
私はとりあえず距離を取るために後ろに下がり一発放つ。
この杖は弾速が壊滅的と言っていい。軽くキャッチボールするくらいの速度だろうか。
魔導具というものは魔石にもよるがあまり複雑な事は仕込めない。
魔導具職人は魔石に動作を登録する。
魔石には容量があり、あれこれ詰め込むと機能しなくなる。
ユウヤの杖は弾道の変更。バッツさんの杖は同時発射。
そして私の杖はなんなのか、それは超長射程、弾速の低速化の2つ。
私はバッツさんが軽く回避するのを見てからもう一発放つ。
ポヒュ。
間抜けな音と共に杖の先に玉が出る。
今度は紙飛行機くらいの速度で飛んでいく。
前世で魔導具は使用者によって性能が変わると言われていた時期があった。
だがこれは間違いで、魔導具に送る魔力の波長が変わると性能が変わる。が正しかった。
私は魔法が使いたい一心で魔力の波長を変えようと努力した事がある。
その時に気付いたのだが性能が変わると言っても強くなるわけではなかったし、擬似魔法にはなり得ないと研究は早々に辞めた。
そんな懐かしい事を思い出しながら次々と弾を出していく。
会えて速度を落とす事で機雷のように使うのだ。
カナタすげえ!なんだそれ!
ユウヤは遊ぶのを忘れてこっちを見ている。バッツさんも驚いたようにこちらを見ていた。
私が追い詰めるからユウヤがトドメを刺すのよ?
私が倒すまでやってもいいが時間が掛かる。魔法弾同士がぶつかると消えてしまうので迎撃され続けると決着が付かない可能性もあるのでユウヤに頑張ってもらう。
任せろー!父ちゃん覚悟!
ユウヤは楽しそうに杖を使う。
なんのこれしき。
バッツさんはそう言ってユウヤの弾と私の弾を同時に迎撃する。
弾が3つ出る場所をコントロール出来ているようだ。器用な事をする。
こんな調子で遊んでいたが暗くなってきたのでお開きとなった。
あー!疲れた!もう出せない!カナタは凄いな!どんだけ魔力あるんだよ!
ユウヤがそんな事を言う。
全く疲れたようには見えないんだが。
この杖あんまり疲れないのよ。速度が出ないから。
そういう事にしよう。
いや、本当に凄いよカナタさん。その杖は射程が長いだけで速度が中途半端なものだと思っていたよ。面白い方向に波長が合ったのだろうね。
バッツさんは波長の事を知っているのか。
だが波長を変えることが出来るとは考えていないようだ。
ありがとうございます。楽しかったです。
私はそう言って杖を返却した。そろそろ帰らないとテナが晩御飯を作って待っている。
カナタさん。送って行きましょう。ユウヤも来るかい?
行きたい!カナタの家行ってみたい!
いいかなカナタさん。親御さんにもご挨拶しておきたいしね。
と言ってきた。どうするべきか。
うちに来るのは構いません。ですが噂を聞いたりしていませんか?貴族の隠し子達の事。
昨日テナが言っていた雑な設定を思い出したので聞いてみた。
聞いた事はあるね。だが所詮は噂だろう?本気になどしていないよ。
そんな風にバッツさんは答えた。
そうですか。私も信じていません。真実も知りません。ですが親と住んでいないのは事実です。テナとテトと私の3人で住んでいます。それでも良いのなら歓迎しますよ。
いい感じに誤魔化せたのではないかと思う。
カナタは父ちゃんも母ちゃんも居ないのか?寂しくない?
ユウヤは可哀想な子を見る目になった。
さてどう答えたものか。
テナとテトが居るからね。お金はあるし大丈夫よ。
そう答えておいた。
そして結局送ってもらう事になり、家に着いた。
ただいま。テナ、テト。
そう言って扉を開ける。
お帰りなさいカナタ。あなたは確かユウヤさんでしたか?
おかえりカナタ!あ!ユウヤだ!そっちはユウヤのパパ?
二人は騒がしく迎えてくれる。いや騒がしいのはテトだけか。
ええ。ユウヤとそのお父様よ。暗いから送ってもらったの。
そう答えて家の中へ招き入れる。
いや、無事に帰ったのを確認出来ただけで十分だよ。今日の所はこれで。
俺はもうちょっと遊びたいけど母ちゃんが怒るから帰るよ!また明日!
ユウヤ親子は帰っていった。
カナタ!何して遊んだの?面白かった?
テトが聞いてくるので晩御飯を食べながら話してあげる。
ユウヤのお陰で楽しい一日だった。
学校生活、結構楽しめそうだ。
ドッヂなんて無かった。