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魔法はやはり素晴らしい  作者: 栗鮑菊
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闇魔法

あ、そうそう言い忘れてた。

適当に素振りをして持ち方の感覚を養おうとした私にディングが話しかけてきた。


ここでは肉体の強化といった事は無意味だから覚えておいて。

唐突にそう告げてきたが理解が出来ない。


どういう事?


君は今魂だけの存在だ。筋トレなんかしても反映されないって事。

あぁそういう。


ん?とするとお腹が空いたりしたのは?

先程食事までしたのだが……?


それは気持ちの問題だよ。食べ物だってあってないようなものさ。

そう言うと掌に美味しそうなシチューを作り出してみせた。


でも食べるという行為は心の平穏をもたらすからね。例えまやかしでも食べておいた方がいい。

なる程。そういうものか。


分かった。でもそうすると稽古って何をするの?


なにも鍛えられるのは身体だけじゃないさ。筋力が無くてもどう振り回せばいいのか分かっているだけでかなり違ってくる。

それもそう…か?

いや、筋力が無ければ振り回したくとも振り回せない気がする。


今のは例え話だよ。カナタには魔法をメインに鍛えてもらうつもりだからね。まずは素振りをしながら武器に魔法を付与する練習をしようか。


武器に魔法を付与? どうすればいいの?

前世でまともな戦闘なんてした事がないのでその辺りの知識は皆無だ。


まず、カナタの得意魔法はなんだ?


え?ないよ? 満遍なく魔法が使えると思うけど、土魔法も砂つぶを作れないしあまりコントロール出来てないかな。


そうか、なら逆に考えよう。どの魔法で戦いたい? いや別に特定の魔法に絞らなくてもいいんだけど、こういうのはやりたい事の方が覚えやすいだろ?

うーむ、どうしたものか……。

あまりこういった用途に魔法を使いたいとは考えてなかったしな。


一応オススメ聞いてもいい?


そうだなぁ、火力では文字通り火魔法がオススメだな。あー、カナタの場合はキセルだし向かないかも知れない。

そういえば氷魔法って火魔法が関係してると聞いたが聞いてみるか……?

いやアレは自分で見つけると決めたんだ。楽しみは取っておこう。


というかキセルがそもそも異端過ぎるだろ……カナタらしいっちゃらしいけどさぁ……うーーーん。

何故か私以上に悩み始めるディング。


よし、もういっそ俺の得意魔法でどうだ?

ディングの得意魔法か。

確かにそれなら教えるのも楽だろう。

特に困る事もない。


わかったわ。で?その得意魔法って?


闇魔法だ。

真顔で言ってのけられた。


……冗談よね?

闇魔法は悪魔にしか使えないはず。

前世でテト達を召喚した理由がそこにもある。もしかしたら闇魔法なら使えるのではと思ったのだ。

まぁ無意味だったが。


いや、大真面目だ。普通なら闇魔法なんて使えないが、カナタには可能なんだよ。

ディングは続けて説明をしてくれた。

要約すると、特異体質か何かで闇魔法の素質がある。という事らしい。

何故私が特異体質なのかは分からない。

というより、そもそもこの体が自分のものかも怪しい。

テトもテナもその事については話せないらしいし。


とにかく闇魔法は基礎から分からないだろうから……そうだな、ただの魔力の球を作ってくれるか?


あ、大きさは楽に作れる程度でなるべく大きく。密度は薄く頼む。


言われた通りに作ってみたが、特に魔力を込めずにフワッと作るなら容易い。

大きさは大体自分が立ったまますっぽり収まるくらいか。


待った待った!想定よりデカい!半分くらいにしてくれ!……砂つぶも作れないとか言うから魔力制御が下手なのかと思ってたよ。


ただの魔力なら得意なのよ。魔道具を作ったりしてるから。


……そういえばそうだったな。あぁ大きさはそれくらいでいい。んじゃそのまま維持しててくれ。

そう言うとディングは魔力の球に向けてゆっくりと火球を放ってきた。


その火を魔力で包み込んで制御を奪うのが最初の訓練だ。

にっこり笑ってそう告げてきた。


は!?どうやって!?ちょっ危なっ!?

当然のように魔力の球を通り過ぎて私に飛んできた。


あっはっは! こればっかりは感覚だからな!気合いでなんとかしてくれ!

文句を言おうとしたがすぐさま

ほいもういっちょ!

とまた火球を飛ばしてきた。


無茶言わないでよ!危ない!危ないから!

などと言いつつどうにか包み込んでみるのだが、全く制御出来る気がしない。


そもそもコレの何処が闇魔法なのよ!

次々に放たれる火球を包み込んでは失敗して回避しつつ文句を言う。


闇魔法っつっても文字通り闇を操るわけじゃないからな。というかテナから何も聞いてないのか?


あんたテナを知ってるの!?

段々ディングに対して物言いが雑になってきているのを自覚する。


あぁ知ってるぞ。帰ったら聞いてみたらいい。ほい次。


だから危ないって!テナから何もってどういう事!?


闇魔法についてに決まってるだろ? まぁ普通の魔法すら使えなかったお前には教えるに教えられなかったんだろうけどな。はいもういっちょ。


なんでそれを知ってんの!


言っただろ?俺くらいになるとそれくらい知ってるって。


理由になってない!!

と、叫びながら魔力をかなり籠めて火球を無理矢理止める。


おいおい魔力を濃くしたら意味が無いぞ。それは制御を奪うってのとは違う。カナタ、ちょっと俺に魔法撃ってみろ。あ、魔法はまだ下手なんだったか。じゃあ魔法陣からでいい。


最初から実演してよ……。

そう言いつつ火球を飛ばす魔法陣を家の壁に描いて発動させる。


魔力の球を作って、包み込んで、制御を奪う。

ディングに放たれた火球は魔力に包まれ、真上に軌道を逸らされた。


っとまぁこんな感じだな。分かったか?


そんなすぐに分かるわけないでしょ…?

出来たら苦労していない。

でも今のは……。

単に魔力で包むわけじゃなくて、火球の中にまで魔力が浸透していたように見えた。

そんな事が可能なのか?


何となく分かるようになるさ!そら!

考え込む私に向けて容赦なく火球を飛ばす。


もう少し考える時間をくれてもいいだろうに!

そう心の中で愚痴りつつ魔力の球を小さく作る。

先程なるべく大きくしろと言ったのはその方が浸透させやすいからだろう。

だがそれは理屈が分からなくてもやり易いという事でしかない気がする。


包み込む、浸透させる……。

呟きながらそのまま動かしてみようとすると異変が起こった。


あつ、い…ぃ!!

体に火球が当たったわけでもないのに焼け付く感覚に襲われる。


お!いい感じじゃん!

人が焼け死にそうにもかかわらず嬉しそうにこちらを見るディングに軽く殺意を覚える。


何処が…いい感じなのよ…!!


いいからそのまま受け入れろ。なぁに、死にはしない。

ふざけるな、後で覚えていろ、死んだら化けて出てやる、熱い、死ぬ、助けて。

などの感情がごちゃ混ぜになり、さっさと魔力を解除しようとしたがそこで意識を手放した。


♦︎


くくっ、こりゃ予想以上に適応力があるな。こんなに早く同化するとは。

遅いと体感一年は同じ訓練をすると思っていたが…本当に予想以上だ。


ま、その後反発してるのは予想通りなんだがな。さぁて、どーしたもんか。

テナ達に闇魔法を教えろと言った時に言われたのは、普通の魔法が使えて初めて可能だという事。

制御を奪う事だけならそれも不要なのですが、当時は特異体質でもないので不可能です。

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