後編
「私が居た世界? では、ここは何処なのでしょうか?」
訳が分らず疑問を投げかけると、少年は小首を傾げる。
「よく見てみて? この場所は現実と違ってない?」
そう問われて、改めて周りを見る。何もない広い空間である。先ほどまであった草原と青空がすっかりと消えている。
「また・・・白い空間に戻ってる・・・」
「ここは、何もない静かな空間に過ぎない。命を与えられ、世界へ旅立つ場所。所謂ステーションとして位置づけられている。」
「そのような場所に、何故居るのでしょうか。」
再びの疑問に、少年は正体不明な笑みを深める。
「それは僕が答えるよりも、君自身で考えることだと思うよ。」
少年の言葉に、自分が何故此処に居るのかわかる筈もなく、思考がぐるぐると迷いだしてしまい、困った表情で少年を見返した。
「…考えても…わからない…。」
その言葉に表情を変えず、提案を持ちかけてくる。
「なら、どうだろう。理由がわかるまで、ここで僕のお手伝いをしてもらうというのは。」
「手伝い? どんな?」
「この世界。」両腕を広げる少年。両腕の中に宇宙が広がる。「此処で再生をし旅立つ魂の水先案内人の務めてほしいんだ。」
「水先案内って」
「魂の基礎設定を手伝って上げてほしいんだ。僕ひとりだと、以外と手が回らないときもあるから、つい前の心を持ったまま違う生へと行ってしまう魂も出てきてしまう。」
「…私に出来るでしょうか? そんな、人生を決めてしまうようなこと…責任が。」
「大丈夫、そんなに重く考えることはない。きっかけさえあげれば、後はその魂自身が何とかするよ。君はここへ来る前、教師だったよね?」
微かに覚えてる自分の事を言われ、小さく頷く。
「人生の道を指し示すのに、今の立場も、教師という立場も変わらないと思うよ。」
今からやろうとしていることと、教師というものは違うと言おうとしたが、少年は先回りをしたように言う。
「物事、やってみないとわからないよ、ほら。」
少年の指し示す方を見ると、そこにはひとつの大きな光が溢れてきていた。
「さ、今から君の仕事が始まるよ。」
少年に手を取られ、ゆっくりと光のもとへ進んでいく。
光も静かにゆっくりと二人を包み込んで行った。
また、機会があればよろしくお願いします