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小さなお星さま

作者: 春風 泉

この物語を、人より少し臆病な友人へ

 きい、きい、とゆり椅子がリズム良く鳴り、暖炉から火の粉が軽快に弾ける音が響く中、少女のすすり泣く声が聞こえています。その背中を、おばあさんが柔らかく撫でていました。


 少女は同じ歳の子よりも一回り小さく、よくからかわれていました。


 そして今日は男の子に一層ひどくからかわれたので、心がズタズタになってしまっていたのでした。


「ねえ、おばあちゃん。小さいのって、悪いことなの?」


 少女はすすり上げながらおばあさんに尋ねました。


「悪いことじゃあないよ」


 安心させるように、ゆっくりとした調子でおばあさんは答えました。


「それじゃあ、今日は、小さいお星さまの話をしようじゃないか」


 おばあさんは優しくほほえみながら言いました。





 昔の昔、遠い昔に、とても小さな、しかしキラキラと美しく光るお星さまがいました。小さなお星さまは大きなお星さまにあこがれ、どうしたら大きくなれるのかといつも考えていました。


 ある時、小さなお星さまは大きなお星さまに会いました。そこで、小さなお星さまは、


「どうしたら大きくなれるの?」


 とたずねました。


 すると大きなお星さまは、


「知らないよ。私は生まれた時からこの大きささ。君もそうじゃないのかい? それなら大きくなることはできないさ」


 と答えましたので、小さなお星さまは悲しくなって泣き出してしまいました。


 それを見てびっくりしたのか、大きなお星さまは慌てて言いました。


「私は知らないけれど、地球の人間なら知っているかもしれないよ。人間は知りたがりだからね。そら、地球ならここを少し先に行ったところにあるよ。行ってごらん」


 その言葉を聞いた小さなお星さまは涙がとまり、元気がでてきました。そして人間に会いに地球へ行くことにしました。


 さっそく大きなお星さまにお礼を言って地球へ行きました。



 地球につくとたくさんの人間がいました。


「こんにちは、星のことに詳しい人間はいませんか?」

「僕が詳しいです」


 小さなお星さまがたずねると、すぐに嬉しそうな声をあげた人間がいました。その人間は、周りより背が低い青年でした。


「私は大きくなりたいのです。どうしたら大きくなれるのですか? どうか教えてください」


 小さなお星さまがそうたずねると、青年はしばらくの間考えていましたが、少しすると口を開きました。


「ごめんなさい。僕もわからないです」


 小さなお星さまは悲しくなって泣いてしまいそうになりました。


 しかしそれをさえぎるように青年は再び口を開きました。


「でも、僕はあなたがそのままの方がきっと好きだなぁ」


 小さなお星さまは目をまるくしました。


「だって僕と同じでしょう? それに、そのままでもあなたはキラキラと美しいじゃないですか。僕は好きですよ」


 青年は目を輝かせて言いました。


 そんな様子を見た小さなお星さまはうれしくなって、自分の大きさのことなど頭の中からきれいに消えてしまいました。



「ねえ、僕たち、友達になりませんか? きっと良い友になれると思うのです。僕、昔からお星さまと友達になるのが夢だったのです。どうでしょう?」


 青年は言いました。


「あなたの夢なら喜んで。私、毎日ここにいます。たくさんお話ししましょうよ」


 小さなお星さまは嬉しそうに笑いながら言いました。


 それから、青年と小さなお星さまは一番仲の良い友達となって、毎日たくさんの話をしながら楽しくすごしました。





「おしまい」


 おばあさんは孫に優しくほほえみかけながら、終わりを告げました。

最後までお読みくださりありがとうございました。


11/29/18 少し書き足し、書き直しました。大筋は変わっておりません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人と比べてしまうと、どうしても見劣りして感じられる部分って、ありますよね。 たった一人にでも、そこを温かく受け入れてもらえると、悲しみが和らいで安心できます。 優しい気持ちになる、良いお話…
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