母様の言い付け。
──いいかい? 私の可愛いシャルロッテ。女の子はな笑顔と涙を武器に戦うんだ。その為には毎日良い匂いの石鹸で身体を洗って、毎朝ブラシで髪を梳かし、清潔で趣味の良い洋服を身につけるんだ。
──ああ、大丈夫だよ、お前は私がとてもとても可愛らしく産んだんだからね? それさえ気をつければお前は最強の盾も矛も手に入れられるさ……。
──だから泣くんじゃ無いよ……誰よりも愛おしい、私の可愛い小さなシャルロッテ……母様はお前のことをいつまでも見守っているよ……。
* * *
──僕は今朝も母様の言い付けを守り丁寧に髪をブラシで梳かす。極上の輝きになったプラチナブロンドの髪を軽く纏め、真っ白でパリッとしたシャツとカーキ色の七分丈パンツを身につける。ダークブラウンのベルトを締め、ダークブラウンのブーツを履き、革の胸当てをつけ、生成りの帆布のリュックを背負い、矢筒と短剣をしっかりとつける。ライトグレーの厚手のマントを羽織り、カーキ色のキャスケットに後ろ髪を押し込めたら、仕上げに左手にグラブを嵌め、弦を張った弓を引き調子を確かめ、僕は部屋を出て行く。
──可愛い女の子のシャルロッテでは無く、紅顔の美少年シャーロックとして。
『紅顔の美少年』
シャーロックが良く使う自称。
だがシャーロックはブルーブラッド的な肌色、
血色は……。