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『僕』と『先輩』の迷宮と日常  作者:
intermission8
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ある日

 






 ──綺麗なお花が欲しいんだ。


 そう相方である子供にねだられ、俺は共に上十四階層まで向かった。



 現れるモンスターのほとんどが飛んでいる為か、難関と言われているらしいこの階層だが、遠距離主体の相方にとって、遮蔽物がほとんど無いこのフロアは非常に相性が良く、ほとんどの敵を一人で倒す程だった。


 そしてセーフゾーンでもあるバルコニーに出ると、


 迷宮の中とは思え無い平穏で美しい光景が広がる。


 一面に色とりどりの花が咲くここは特殊な結界が張られていて気温や日差し、吹く風もコントロールされており、まず採取に来た居心地の良いここは四季のある土地での春の気候らしい。他にも寒さというものを体感出来る冬や今の時期の街と変わらない気温の夏、春との違いがいまひとつわからない秋のバルコニーがある。


 少し暑くなるこの時期を夏とし、何と無く涼しいと感じる時期を冬と呼ぶ。年間を通して気温が変わらないこの島ではなかなか珍しい経験が出来る階層だ。


 ──もっと訪れやすければ観光に来る者もいただろうな。


 なんてつらつらと考える程にこの日、俺は暇だった。


 やったことと言えば十階層の守護者を倒したくらいで、それ以降は子供に手を引かれここまで来て子供の撃ち漏らしを処理した程度、そして今は子供が四ヶ所で摘んだ花々を編んで冠にしているのをじっと眺めている。


 けれど、一言も発せず真剣に花を編む子供の姿に、


 ただ側にいようと、そう思ったのだ。



 日が暮れ、市から少し離れた墓地で葬儀が始まる。三つ並んだ棺に花冠を手向ける子供は鮮やかな刺繍がほどこされた白いチュニックと瞳と同色のズボンを身に纏い、手向けたのと同じ花冠を被って、


 普段は結い上げている髪を下ろしているのも相まってこの世の者とは思え無い程幻想的で美しかった。


 ──一番綺麗な僕を覚えてて欲しいんだ。


 そう微笑んだ子供は、困った常連などと呼んでいた三人を実は嫌ってはいなかった。


 熱烈なアプローチをひらりと躱し、来るたびに嫌そうな顔を作ってはいたが、


 ──内緒だからね?


 なんて言いながらコーヒーを注いだり形の崩れた菓子を付けていた。


 彼らも彼らで協定を結び。違う曜日に訪れ、忙しい時は静かに、混んで来たら大人しく席を立ち、そして決して店外では接触しなかった。


 ……そんな彼らが俺も嫌いではなかった。



 そして葬儀は進み彼らを送る時が来た。


 結界を張り棺に火を着ける。


 子供の澄み切った歌声が響く。


 ──数グラムの魂よ。肉の器から離れ眠れ。


 ──眠れ眠れ飽きるまで眠れ。


 ──飽きたら目覚め再び出会おう。


 ──飽きたら目覚め再び会おう。


 彼らだった灰を、天地に返し葬儀が終わる。


 参列者達を見渡すと子供は生き生きとした鮮やかな笑みを浮かべて、


「さあ! 彼らを肴に宴と行こうか!」


 そう、言った。





 

『上十四階層』


別名『空中庭園』


階段部以外壁が無く、出て来るモンスターは基本飛行タイプのみ。


と、十三迷宮では非常に珍しい遠距離攻撃者が活躍出来る階層。


咲く花々は香り高く、薬になるものも多い。


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