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『僕』と『先輩』の迷宮と日常  作者:
第八話 十三迷宮市殺人事件
61/63

scene3 解決編

 






 罠、って言っても単純なもの。


 彼に見えるように先輩が僕に絡み、その後兄さんが先輩を連れ出し、兄さんは事件が起きたとの声の元へ向かい、先輩を一人にする。


 うんシンプル。


 彼が犯人じゃなかったら事件の方に向かうだろうし、もし犯人でも先輩なら危険は無い。


「んー、懸念とすれば先輩の強さに犯人さんが怖じけづいて襲わないかも、ってとこだけど」


 四件目……ちょうどなれて調子に乗る時期だよねー。


 ってことで、



   *   *   *



 現在第一容疑者の彼が先輩に襲い掛かってるのを見てまーす。


 自警団の団長と彼の所属する五班の班長副班長、そして銀の神官長副神官長の上司さん達と一緒に、


 ……うん、周囲のオーラが怖いや。


 で、まあ当然のように先輩があっさりと返り討ちにして、


「……これまでの三件、お前がやったのだな」


 場所を移して銀星騎士団の神殿で尋問中です。ちょっと気になったのでお願いして立ち会わせていただいてます。


「ええ、それが何か?」


 ……うわーお、一切悪びれずに肯定かー。


「……何故(なにゆえ)に」


「何故? 奴らは悪です。悪を討ち滅ぼすことに故が必要でしょうか?」


 ……悪、ねぇ。


「何故彼らを悪と断じる?」


「? だって神の愛し子足るシャーロック様を困らせていたでは無いですか?」


 え……まさか、


「君は……三年前、第四迷宮市にいたんだ」


 僕をそう呼ぶってことはさ。


「ええ、ええ! そうですとも!」


 男は目を爛々と光らせ拘束されたまま僕に迫る。……うん二歩程下がりまーす。


「貴方様が五つの鐘を高らかに鳴らしたまさにあの時あの場所に! 私はいたのです!」


 ……ああ、あの空気を読めない神達がはしゃいだあの時に、読んだのが赤の神だけだったっていう……犯罪者の守護神のさ。


「私が門を出たすぐその後に貴方様が門を通られた! まさしく運命! 貴方様を守るように神が私にお命じ下さった! あの神血の若造共では無くこの私に!」


 ……うわー、唾が飛んでるー。下がって良かったー。


「……だというのに彼らは私の帰還を認めなかった! こんな不信心者共の巣窟に私を追いやった! 汚らわしい亜人共と汚らわしい魔法師に人権を与え! 奴らの汚らわしい制作物が蔓延るこんな地に!」


 け。


「ああけれど神は私への信頼をお棄てにならなかった!」


 わ、何陶然とした顔してんの?


「貴方様をここに遣わされた! この魔都にあっても清らかさを失わずにいた私に!」


 いやいや、僕がここに来たのはその神がはしゃいだ結果だし。


 なんて内心ツッコミまくりながら男の独白を聞いていたら。


「ああ神よ! 私にさらなる力を! 不信心者や汚らわしいひとでなし共から神の愛し子を守る力を!」


 と、祭壇に男が叫んだ。そして長ーい沈黙。


「……な、なぜ!」


 え、驚くの? ……あ、やっと黙ったね。うんじゃあこっちのターン。


「そりゃ当然でしょ? だって君の魔素許容量も変換量もすでに上限だもん」


 いやホントよくぞそこまで! ってくらい使ってるよね。


「どんだけキッツい『誓約』を自らにかしてるのかは知らないけどさ……元々の才能が全然無いのは努力でどうにかなるもんじゃ無いよね?」


 この人の根本のコンプレックスはそこだね。突くよ!


「今の君くらいなら君がクサしてた神血の若造? 彼らでもワンパンだろうし」


 なんてったって彼らは数百年かけてより神好みになるように掛け合わされたサラブレッドだし。で、不真面目な彼らに出世レースで蹴落とされてここに飛ばされた。と、見た!


「なのに神官の倍以上の才能が必要な魔法師に勝てると思うとか……ホント笑える」


 必要魔力量がダンチなんだよねー。


「まあ魔力量が足りても君じゃ出世は無理だっただろうけど。獣人や妖精、魔族を亜人なんて呼ぶ勉強不足な君じゃ、ね」


 ……ホントあの時ぶん殴りたくなったよ。


「彼らは亜種なんかじゃない。新生直後の厳しい世界を生き抜く為に旧種の人々が願いを託した希望だ」


 だってこの世界は数百年経った今でも未だに生きやすいとは言い辛い。


「でも彼らは同種以外との交配ができない。それでは生き物としての多様性が足りず絶滅する可能性がある」


 それプラス単純なリソースの問題もあったらしいけど。


「だから新たに旧種に近い何の能力も与えない種族を生み出した。それがノーマルヒューマンだ」


 つまり旧種達は混血推しだったんだよねー……現状はどの種族も純血主義だけど、


「けれどノーマルヒューマンはあまりにも弱かった。このままではただの生み腹や種馬になってしまう。そう憂いた旧種達が用意したのが今、神と呼ばれる存在達だ」


 ちなみに現在の自称人、は大多数が新生直後に混じってるからケッコー丈夫。


「神達はノーマルヒューマンを保護する為にアディションヒューマンが入れない箱庭を用意し、さらに最低限の自衛手段として妖精が使う『祈り』に良く似た力を使えるようにノーマルヒューマンを改造することにした。……それが君達神官の始まりだ」


 で、神の代わりに魔女達がノーマルヒューマンに力を与えたのが魔法師の始まり。……サボりたいからって魔法師なら誰でも魔法師を作れるようにしたのも魔女達ね。


「でも神官にすらなれないノーマルヒューマンも多く、その精神を守る為旧世界でも助けになった宗教を生み出しわかりやすい信仰対象として今の神達を据えた」


 既存宗教は戦争の火種だ! ってなかったことにされてるからね。無神論者な科学者達が生き残ったんだから仕方がない。


 ってことで、


「つまりさ、君が熱狂的に信じる『神』はね。


 ──単なる演算機構、作られた道具なんだよ」


 この時代では通じない言葉で言えばAIです。


「………………う、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! 嘘を言うな!!」


 うわーお、まるで親のカタキみたいに僕を見えるね。……けど、


「……事実だ。一般信徒の心の平穏の為に流布はしていないが神官やそれを目指す者達には学ぶ意欲さえあればすぐ知れるようどこの神殿の書庫にも新生神話のそばに置かれている」


 ほらほら、神官長も知ってるよ? 認めてるよ? 君が不勉強だってことを、


「一応神官見習いってことで生活してた僕でさえ手に取れるくらい一般の棚にね」


 そしてすかさず追い打ち。……ま、僕は第四に行く前から知ってたけど。


「……一定以上の地位にいる神官は必ず学ぶ……まあ、信じていない者もいれば、事実だと理解していても自らの自尊心を守る為、他の種族をおとしめる者もいるが」


 ……いるんだよねー。そりゃ信じたくないことを信じないのも蓋をするのも自由だけど、それで他者を傷つけるのは駄目だよねー。


 って僕プラス銀の神官長ステイさんで犯人を論破してたら。


「……そいつが不勉強で才能の無い神官だってことはわかった。お前が第四にいたこともわかった。……で、結局そいつをどうするんだ?」


 と、珍しく先輩につっこまれた。……あ、スッゴくムカついたからうっかり精神を叩き潰すことにやっきになっていました! ゴメンなさい皆さん!


「ああ。……すみません『黒竜』……三件の殺人、死体損壊そしてあなたへの殺人未遂……この都市の法でも銀星騎士団の内規でも死罪ですね」


 十三市も教団も立件できた殺人は全部死罪だしね。未遂までなら軽いけど。


「一応他の教団の長達と罪状の認否を行わねばならないのですが……構いませんね。シャーロック君」


「あ、はい、そのメンバーなら……あんまり人には知られたくは無いですけど」


 ……第四にはもう行きたく無いんだよね。





 

『誓約』


神に誓いを立てることで力を得る行為。

毎朝冷水を浴びる。酒を呑まない。髪を伸ばす。

等々その誓いは様々。

実行が難しい程得られる力は大きい。


破っても神罰は下らない。

 

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