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『僕』と『先輩』の迷宮と日常  作者:
第八話 十三迷宮市殺人事件
59/63

scene1 問題編

 






 ──早く見つかって良かったっすよ。昨日はとても暑かったから。


 顔なじみの自警団員さんはそう締め括った。昨日、この近辺で惨殺死体を帰宅途中の自警団員が見つけたことを伝え、何か不審なことがなかったか、そう聞いた後に。


 ──お気になさらず。じゃあご協力感謝っす。犯人を捕まえるまで一人で出歩かないようにして下さいねー。


 気になったことはなかった。そう伝え力になれなかったことを詫びると、彼は爽やかに気にするなと笑い。注意を呼びかけ去って行った。


 そして数日後。


 ──またご遺体が見つかっっす。


 とても悔しそうな顔でそう言った。



   *   *   *



 出勤途中の銀の神官が見つけたそうだ。遺体に残された傷の形状から前回と同一犯である可能性が高いと言う。発見場所はこことは近いが第一現場からはそこそこあるそうだ。


「……一般人の僕にそんな情報、良いの?」


 絶対部外秘じゃん。


「だってわらにもすがりたい状況なんすよー……犯人はおろか被害者の身元もわからないんすからー」


 身元も?


「顔や服装では?」


「……グロい話っすけど、顔は切り刻まれて、髪と、衣服、持ち物は燃やされてたっす」


「……わーお」


 ぐ、グロいよ。第一発見者が一般人じゃなくて良かったよ。


「なのでなんらかの情報が欲しんすけど……」


「んー、そう言われてもねー。昨日はつつがなくカフェの営業を行った。目立ったトラブルは無し。その後は宿からは一歩も出ていない僕だからねー」


 カフェ始めてから出歩くの減ったよねー。


「……あ、前回もそうでしたよね?」


「ん? ああそうだね……え、まさか従業員を? あ、でも今回と前回じゃシフトの関係で僕と先輩とオーナー以外丸っと違うわ」


 曜日が違うからさ。


「さすがに従業員はー……同僚ですし」


 フフだよね。……でーもー、


「え? 身内びいき?」


 チクっと釘を刺しとくよ。 ……まーあー、


「もちろん僕も身内びいきで彼らは関わっていない。って全力断言するけどさ」


 だけどね。てゆーかそもそもそういう人には声かけないし。


「はは、えーと、じゃかぶってるお客さんはいます?」


「んー、んー、あ、賢人の……」


 何人かが……、


「あ、その方々は除いて」


「権力に屈するのだね君は……まあ僕も無関係だと確信してるけど……んー、後は……んー、荒事に向かない女性客ばかりだなぁ。あ、またいらっしゃったら何か気になったことが無いか聞いとく?」


 さすがにお客さんの連絡先は知らないもん。


「お願いします! ……えーと、その賢人の方々の、お名前も……」


「はいはい。メモするね。聞き込み頑張ってー」


 僕の励ましを背に彼は出て行った。


 けれど彼と同僚達が必死で捜査するも、


 ──第三の事件は起こったのだ。



   *   *   *



「……三人目の被害者が出まして」


 沈痛な表情で自警団員の青年が述べた。


「……うん」


 ……出ちゃったかー。


「……それで三人目にしてようやく被害者の身元がわかりまして」


「え? うん」


 喜ばしいことだよね? なんでそんなに強張った顔なの?


「……その三人目の身元から一人目と二人目の身元も芋づる的に判明しまして」


 ますます喜ばしいことだよね? 遺族か仲間に弔ってもらえるだろうし、犯人逮捕にも一気に近づいたでしょ?


「……それでその、被害者達の共通点、なんですが……


 ──ここ(白雨亭)の常連、だったんです」


 ……………………、


「え」



   *   *   *



 彼の話をまとめるとこうだ。


 その三人目の身元に気づいたのはうちの従業員──タナベさんだそう。ご遺体を詰め所に運ぶ際に見えたかろうじて無事だった手の特徴的な並びの黒子でもしや、と思い、体格も合っているし、と被害者の彼のパーティーメンバーに確認を求めその身元が確定したそう。


 それでもしかしたら、とうちの従業員達に一人目と二人目のご遺体を確認させたところ、何人かがその体格や何から何と無くな目星を上げその周囲の方々が確認をし、行方不明だった彼と彼女だと判明したんだそうだ。


「……あー、うんうん、確かに三人共うちの常連さんだわ。……来ないのは迷宮か金欠かと思ってたけど」


 ……亡くなっていたとは。


「……三人共こちらからの帰り道で拉致され、真夜中になってから殺害されたようで」


 ……おおふ、


「……あー、はいはい、確かに三人共うちに前日来店してたよ」


 いつも通りの注文をして、いつものように過ごし、いつもの時間に帰って行ったね。


「……はい、それでその……怪しいのでは無いか。と、五班の方から声が上がりまして」


 あー、うん。


「そうだねー。多分犯人は、


 ()()()()()()だから」


 そう、ただの常連じゃなかったんだよね。……彼らは、


「カウンターに陣取り、一番安いコーヒー一杯でほぼ開店から閉店まで粘り、僕に過剰に話し掛け、あわよくば触ろうとする。ちょっと困ったお客様だったから」


「……ちょっとじゃないっすよー。だから怪しいって」


「うん。そうだね。多分犯人は行動には出ていない彼らの同類だよね」


 ええと、粘っこい視線を感じたりする人を上げれば良いのかな?


「いえ、その…………あなたが」


 ………………はいぃ?






 そのとんちきな言葉を聞いた瞬間、僕は犯人が分かった。


 多分彼もうすうす気づいているだろう。



 さて、



 あなたはこの事件の犯人が分かったかい?


 ヒントは充分、だと思うよ?





  

『さて』


ミステリ好きが言ってみたい言葉ベスト10に入るかも知れない言葉。


シャーロックはテンションが上がっている。

 

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