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『僕』と『先輩』の迷宮と日常  作者:
第七話 カフェレディハドソン開店!
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scene1 始まりの前の話

 





 おひさ~! 笑顔がカワイイってよく言われるシャーロック君……です!


 ……ハハハハハ……ゴメンなさい。バタバタしてました。


 ……あ、許してくれるの!? あなたは優しいなー、大好き!


 ……あ、早くなんか話せ? 今日は短めで後半は僕と雑談?


 ふふ、リョウカーイ! ……じゃあ、


 事件続きだった七月の終わり頃のフワキラな日常のお話をするね?


 ふふ、気楽に聞いてね?











 ううーむ、


「やっぱり赤字ー……」


 やあ、勤労美少年の僕だよ。今は白雨亭従業員達でのランチ後で、


「食堂は黒だけど宿が赤すぎる」


 カリカリと勤め先の帳簿付け中です。


「……そりゃ常時五割以下の入りならそうだろう」


「うーん……値段設定が高すぎるのですかね?」


 引き続きオーナーと先輩も一緒に、


「うちの設備とサービスでこれ以上の値下げは同業の方々から恨まれますよー」


 なにせおっきいお風呂入り放題で洗濯付き、別料金だけど美味しいご飯が朝晩ですもんね!


「……では……どうしましょうか? 私も、貯蓄はあるとはいえいつまでも道楽経営を続けるのはあれだとわかっているのですが……」


 ……ね~。どうしましょう? ってしばらく三人でうなっていたら、


「すみません、よろしければお茶をいただけますか?」


 と、現在白雨亭の宿泊部門を潤わせてくれているキラキラなお兄さんがいらっしゃいました。


「あ、はいはい……コーヒーとチョコチップクッキーでいいですか?」


 サービスしちゃうよ! だって先頃三度目の延長をいただいたからね! 白雨亭の泊まり客の方々は一泊がほとんどだからね! ……あ、


「連泊の場合に割引、もしくはサービスプラス、なんていうのはどうです?」


「え? 何の話ですか?」


 あ、すみませんいきなり。


「いえね? 今帳簿を付けつつ経営改善を話し合っていたのですよ」


「…………あのロムス。それ七年前から言っていませんでしたか?」


 微笑みながらツッコミを入れる兄さんは五年ほど前まで住み込みで白雨亭の会計兼受付をしていたそうです。つまり先輩その二。


「まあ、開業当初から言ってますね」


 ……ええっとつまり、


「一度も黒字になっていない、と」


「です」


 ……………………、


「……本当になんで潰れてないんだ」


 オーナーの貯蓄がいっぱいだからですかね?



   *   *   *



「……やっぱりはなれの利用がないのがネックですよね~」


 気を取り直し四人でクッキーをサクサクしつつ検討をはじめたところ、はなれ──寝室四つ、広いリビングダイニングにカウンターキッチンとバストイレ付き──の利用がほぼゼロなのがまずいって結論になりました。


「十二人まで利用可能で五百は安いと思うのですけれどねぇ」


 なんですけどね~。……でも、


「十三迷宮は大人数での攻略には向かないですからね……」


 通路が狭いしいっぺんに倒せるモンスターもあんま多くないからなー……。


「ここは迷宮の攻略前後に市内の羽振りの良い連中が泊まるのが主だしな」


 迷宮まで徒歩五分ですから! ……と、いうのにお客様が少ないのは、


「根本的な問題は十三迷宮はよそからの攻略者数に比べて宿屋が多いところでは?」


 需要と供給の差、なんですよね。……ん……何故って? それはね。


「ドロップ品に統一感がない上、特質したもんもない……それに加えトラップは多いし道は入り組んでる、モンスターも多様でそこそこ強い……ま、来ないだろう」


 と、先輩が言う通りな十三迷宮の特徴。……まあ、


「家の近所にあるのには一番良い迷宮だと思うんだけどね?」


 ほら、新生前に存在したというコンビニエンスストア? みたいな感じでふふ、僕は好きだよ?


「……まあ、それは我々がどうこうできることではありませんし……置いて置くとして……どうしましょう」


 ここでオーナーが話を本筋に戻しました。……うーん、


「あ、離れを何組かで泊まれるようにするとかはどうでしょう?」


 ……ああ、兄さん。それは僕も考えたんだけどね?


「……利用者同士で揉めるな」


 って、先輩の言う通り血気盛んな冒険者の皆さんには不向きだと思うんだよね。……うん、


 ってことで、今度は四人で唸っていたら、


「すみません。ギース君に……ってここにいたのね」


 と、麗しの角を持つ美女フィアさんがカラコロドアベルを鳴らしてお出でになりました。……もちろん、


「あ、いらっしゃいませ~、飲み物は何が良いですか? それから僕らは声が聞こえない距離に行った方が良いですかね? あ、クッキーどうぞ、飲み物と一緒に別のお菓子も持って来ますね~」


 超もてなすよ! ……僕、モフラバーなんだもん!



   *   *   *



 フィアさんの用件は兄さんに自警団での勤務希望日を伝えることでした。


「んー、シャーロック君焼き菓子も上手なのね~」


 で、丸を付けた来月のカレンダーを兄さんに渡し終え、今はまったりお茶中です。ちなみになんで兄さんに、なのかといえば、


「……ありがとうございます。後は班長の希望を聞いて八班の班長と話し合って決めますので」


 他班との話し合い等は兄さんの担当だからだそう。……笑顔で希望を押し通すらしいよ?


「お疲れ様で~す……でもうらやましいなーギース君、毎日美味しいご飯とお菓子なんて……私もできれば食べに来たいけど、家は子供達ちっちゃいしなかなか晩御飯外食は難しいのよねー……」


 朝ごはんは言わずもがな、かー……あ、ちなみにフィアさんのところのお子さんはお母さん似の男の子とお父さん似──ギルドのチーフのチーフさんです──の女の子の双子ちゃん六歳、メッサかわいかったよ! 


 で、このフィアさんの言葉で僕は赤字削減の方策を思いついた訳です。


 ……ふふ、それはね?




 

『モフラバー』


モフモフとした物や生き物を偏愛する人々。


獣人が存在する世界ではあまりおおっぴらにはできない嗜好である


 

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