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『僕』と『先輩』の迷宮と日常  作者:
第六話 勇者じゃなくても救える命。
41/63

scene1 帰還

 





 ゴッメーン!! 超久しぶりー! あなたのシャーロック君が来ましたよー!


 ……あ、やっぱり怒ってる?


 ほんとゴメン! ちょっと十三市を離れてて……、


 ……うん、今度からは遠出する時はあらかじめ知らせるよ。


 その代わり……じゃないけど、今日はなんでもリクエストに……、


 え? この間の続きで良いの?


 ……あ、気になってた?


 ふふ、じゃあ話すよ? 僕が商会長御一行と、お迎えに来た先輩と十三市に帰還してからのお話を、


 ……直ぐに終わっちゃうけどね。











「……お、見えて来た! 十三市!」


 弾んだ声が耳を叩き、僕は覚醒した。……って、


「……え、もしかして寝てた?」


 揺れる馬車で!? ……結構センサイだと自認してたのに、そして、


「……起きたか」


 頭上から響きが良い低音が……うん、僕は何故か先輩の足の間にいました。


「……ええと……なんで?」


「落ちかけた」


 ……なるほど……それでも起きなかったんだね。……あー、僕、想像以上に先輩を信頼してたんだなー。……うん、


「ありがとうございます」


 先輩は、少し口角を上げ、僕の頭をポンと叩いた。



   *   *   *



 それから直ぐに十三迷宮市に付きました。僕はそびえ立つ、積み木のような迷宮の塔が視認出来たことで、上がった歓声で目覚めたみたい。


「……お、『221B』も一緒かっ!」


 大きな門で、入門手続きをしていると、門番を勤める自警団員のオッチャンが笑いかけてくれた。……あ、ちなみに十三市には入門税とか身分証の提示は無いよ? ちょっと面談するだけ。


「あはは、ただいまです」


「……良かったー! ……賢人達がピリついてたからよー、もちろん俺達も心配してたがな」


 ピリつい……あー、はは、


「僕、人気者だもんねー!」


「……自分で言うのはどうかと」


「すかさずツッコミありがとう! 兄さん!」


 で、手続きを終え、馬車に乗せてもらったまま第一層の門近くまで進んで行くと、


「お帰りなさい!」


 大勢の人達に迎えられたんだ。門番さんが連絡したみたい。そして駆け寄って来る、経産婦とはとても見えない可憐なラフィちゃん! 旦那さんとお姉さんのお出迎えかなー、って微笑ましく見守っていると……、


「良かった! 無事で!」


 暖かくて良い匂いに包まれました。……あるぇ?


「ら、ラフィ?」


「あ、あなたもお帰りなさい」


 この後しばらく、商会長に会う度ジト目で睨まれることになったのは……うん、仕方がないよね。



   *   *   *



 一日ぶりのお風呂でサッパリとした僕です。あれから商会長御一行の帰還祝いを白雨亭ですることになったんで、ただいま厨房で仕込み中、すると、食堂の入り口が開きました。


「いらっしゃいませー、すみません、まだ食堂は営業前……って、あれ?」


 営業スマイル全開で声をかけた相手は、


「兄さん?」


 銀色の美青年でした。


「やあ、先程ぶりですね。シャーロック君……あの、部屋、空いてますか?」


 兄さんは少し困った感じの笑顔と声で問い掛ける。……んー、


「空いてますけど……あの、お家、は?」


 普通あるよね? ホームタウンに。


「……少し、離れている間に事情がありまして」


 事情? ……ま、いいか、宿屋で詮索は野暮だし、


「では、こちらに……お部屋は大部屋と、貸し切り、どちら」


「貸し切りで……それと、食事を……とりあえず一週間」


 フロントまで案内し、テンプレな問い掛けをし始めるけど、兄さんは食い気味の返事……そして一週間かー、


「はい、では今日分は朝食だけですので百プロフ、残りの六日は夕食も込みで百二十プロフ、合計八百二十プロフの先払いになりますが、よろしいですか?」


 ちなみに白雨亭は先払い形式です。


「ええ、ではこれで……」


「はい、千プロフから……お釣り、百八十プロフです。……ではお部屋に案内しま、」


「いや、鍵さえくれればわかる」


 またしても食い気味に……ま、いいか、


「はい、ではゆっくりとお休み下さい。……何かあればお気軽にどうぞ」


「ああ、しばらくよろしく頼むよ」


 そして兄さんは爽やかに階段を上って行った。どうやら白雨亭に慣れているらしい、


「……んじゃ、仕込みの続きしよ」


 今日のメニューは海鮮と各種お肉でバーベキューなのです! 



   *   *   *



「え、パーティーメンバーが二人も妊娠!? マジか!?」


 マルティさんが僕らの内心をも代弁した叫びを上げた。


 はーい、僕です。人数が多いので結構広い、白雨亭のお庭でバーベキュー中です。僕は火の番人をしています。


 で、肉と海鮮と箸休めなサラダに舌鼓を打ちながら、待っていた人達と、待たせていた人達が、離れていた空白を埋める会話をしていたところ、兄さんがここに泊まることを知った皆さんが当然質問ぜめにし、理由を聞き出しました。


「ええ、私のパーティーは他四人が二組のカップルでしたので、攻略を休んでいるうちに……らしいです」


 とのちょっとビックリで、おめでたい理由を、


「ですからしばらくは宿生活を」


 彼らは子供の為に堅気……近くの村で農家を始めたらしく、借りていた家は、すでに返していたそう。……兄さんの荷物は貸し倉庫に移されてたらしい、


「……めでたいのになんかモヤっとするわね」


 ……ちょっと、ね。


「まあ、冒険者は長く続けられないものですし……彼らにはほんと世話になりましたから」


 そう呟く兄さんが、新しい部屋や、自警団の寮を選ばなかった理由は、


「私、家事はさっぱりですので」


 誰かが服を用意しないと着替えられないくらいの家事音痴だそうです。


 …………うわー、


「……兄さん、カッコイイのに残念だね」


 まあ、誰にでも欠点ってあるよね。





 

『十三迷宮《双頭の階》』


上層は様々な大きさの正方形の板が、

ずれたりしながら積み重なった塔。


……地震の時は不安になります。

 

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