scene??? 下層十五階層守護者戦
この部屋に入って、一時間が経とうとしている。みんなの疲労は蓄積されているがそれ以上に『守護者』のダメージの方が大きい……ここで決める!
僕は構えた弓を引き絞り真円に近くなったところでピタリと止める。そして、
「先輩! 右の首に『闇の鎖』! 兄さんは『氷結の刃』で左の首を! 妹は自分に『頑健』そしたらそのまま盾を構えて! 姐さま! 先輩と兄さんに『治癒』妹に『魔力回復』終わったら妹の後ろに!」
と、みんなに指示を出す。そして四人が僕の指示に従い『魔法』や『祈り』をかけるのを確認…………よしっ! 三首犬の生ける鎧の動きが止まった! 狙うは一つ! 中央の首の兜と鎧の隙間!
僕はつがえた矢の、魔石を加工した鏃に魔力を込め、そして指を放す。
「!?」
よしっ! 鎧の内部に矢が入った!
「先輩! 兄さん! 最大魔力で最高の雷魔法を! 僕の魔力をガイドに!」
先輩はニヤリと笑い、兄さんは力強く頷く、そして二人は同時に詠唱を始める。
「「審判を下せ、名を轟かせろ、救いなど無い、」」
ピタリと揃った詠唱に不穏なものを感じたのか、三首犬の生ける鎧はかろうじて動く右の前足と左の尾を使い二人の詠唱を止めようとする。ふふ、そうはさせないよ!
「姐さま! 二人に『機敏』を!」
姐さまの『祈り』でスピードが上がった二人は詠唱を続けながら身軽に攻撃をかわす。そして……、
「「堕ちろ、雷帝の槍! 『雷霆』」」
詠唱が完了した。三首犬の生ける鎧に青白い光が堕ちる。
「……………………!?」
三首犬の生ける鎧は沈黙した。数秒後空気に融けるように消える。すると、その今まで守護者がいた場所でキーンと硬質な音が鳴った。
「……ほう、完全同質の三つの魔石か」
先輩が音の元を拾い上げる。
「ふむ、これは……サイズは小さ目ですが質と柔軟性は一級品ですね」
兄さんがそれを魔力を使い鑑定する。
「うわー、とっても綺麗な石ですねー」
「だね、しかもこの色! シャロ君の瞳と同じ冬空色ね~」
妹と姐さまもそれを覗き込む。
「ええ、これはシャーロックが持つべき魔石ですね」
「ああ、そうだな」
「はい! 兄様がここまでの攻略の優秀賞ですから!」
「だね~」
「……ええと、僕は遠慮深い美少年だからとりあえず二回は断るね?」
まあ、結局三回目に奨められた時にありがたく受け取りました。
……ふふ、遠慮は過ぎると失礼だからね?
これが冒険者で初めて下層十五階層で守護者を倒した時の話です。
あっ、申し遅れました。僕の名前はシャーロック=ロイカ、
紅顔の美少年かつ花も恥じらう乙女の戦闘力皆無な狩人です。
ふふ、よろしくお願いしますね?
『守護者』
十三迷宮の五の倍数階層で待ち構えるモンスター。
手強い。
一週間から一月で復活する。