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振り返る時・・・・・

卒業してから数日後、冬実から連絡があった。

「ゆみは、いつあいてる?写真、渡したいんだけど・・・・・」

卒業式の後、海で冬実が撮ってくれた清水君との写真だった。

「明日とかは急すぎる?」

嶋野高校の合宿にはまだ日があるし、明日なら練習もお休みだった。

「明日なら、大丈夫。練習もないし・・・・」

「じゃぁ、1時にいつもの公園で待っててね。」

そう言うと電話は切れた。

思い出の多い写真。あの写真を撮った時は、私は人生最後の別れみたいに大泣きしてた。

困り果てた清水君は私をそっと抱き寄せて「大丈夫」と何度も繰り返した。

何に対して大丈夫なんだと思いつつ、溢れる涙を止めることは出来なかった。

そんな時に、冬実と阿部君が写真を撮ろうと近づいてきた。

二人並んで、手を繋いで写った写真。

卒業して1週間も経ってないのに、すごく時が流れてる気がする。

そういえば、あれから清水君とも連絡を取ってない。

彼も全寮制の龍野高校へ入学の準備があるだろうし、私も練習の日々。

ついつい連絡するのも遠慮していた。

いつ、清水君は入寮しちゃうんだろ?そんな事を考えながら、明日を楽しみにした。


約束の時間より少し早めに公園に着いた。

そこにはすでに冬実が阿部君と待っていた。阿部君は県内でも有数の進学校の湖陵高校こりょうこうこうに進学が決まっていた。かくいう冬実も公立でも難関中の難関、大浜学園に進学。

二人とも学年では1・2位の成績だった事を進路を聞いて知った。

そして、清水君もトップクラスの成績じゃないと入れない龍野高校だった。

私はといえば、陸上の推薦枠で決まった嶋野高校。でも、きちんと結果を出しての入学なので

恥じる事は何も無かった。ただ、この4人になるとすごく自分が子供に感じる。

「おぉ〜っ、ゆみ。さすがに早いね。」

「ひさしぶり・・・ってのも変だけどね。連絡ありがとね。」

「どうせ、ゆみの事だから清水君に連絡取ってないんじゃないかなって思って。」

「そうそう、たっくんも心なしか連絡しにくそうだったし。」

「何で???」

「そりゃぁ、練習の事とかあるから、遠慮してるみたいだよ。」

「そうなんだ・・・・・でも、どうして二人がいるの?」

「もうすぐたっくんも来るよ。」

「呼んじゃった。阿部君とで図書館行くから、二人で適当に過ごしなよ。」

「そうそう、たっくんも入寮間近だしね。」

「そうなの???」

「そうそう、これ。清水君の分もあるから、ちゃんと渡しておいてよっ!

 じゃぁ、落ちこぼれないためにも、勉学に励みにいきますか?」

「お邪魔になるのも嫌だしね。たっくんには佐々木が来る事言ってないから、驚く顔だけでも見たいんだけどな・・・・・」

阿部君の一言で、冬実の作戦が始まった。

有無を言わさず、私には4人分の飲み物を駄菓子屋に買いに行かせた。

しかも、運ぶのに時間のかかるカップの飲み物。4個もどうやって運ぶんだ!と思いつつも逆らえず

駄菓子やへと向かった。

なんとか購入し、おばちゃんと相談してどう運ぶかを試行錯誤。おばちゃんは笑いながら

「あんた、これじゃぁ、罰ゲームだよ!」

と言いお店の多くに入って紙製のトレイを持ってきた。それはカップホルダーになっていてお盆代わりにもなった。「気をつけてねぇ〜っ!」というおばちゃんの声を背中に、少しゆっくり歩いた。

もう清水君は来たのかな?などと考えながら、ジュースをこぼさないように、慎重に歩いた。


「あれ、こうちゃん。山田と一緒なの?」

「そう、図書館で勉学に励まないかなって思って誘ったの。」

「えっ、俺も図書館???」

「ちがうよ、清水君にはもっと大事な用事があったからさっ。」

「えっ、何だよ・・・・・」

「たっくん、あそこ。よぉ〜く見てみなよ。」


ちょうど、冬実と阿部君がにやにやしてるのが見えた。少し行くと、二人に隠れてた清水君が見えた。

清水君の顔が驚いてる。私は、慎重にジュースを運ぶ。


「あれ・・・・・どうして佐々木までいるの?」

「だって、たっくん。連絡しにくい感じだったし・・・・」

「どうせ、ゆみのことだから、遠慮して連絡してないとも思ったから・・・・・」

「あっ・・・・・ありがと。」


やっとジュースを運べた。

「冬実、ひどいよ。運べないよ!」

「じゃ、とりあえず、ベンチにでも・・・・」

そう言って4人でベンチに座った。なんだか、変な感じ。やっぱり、自分だけが子供のような感じ。

ジュースを飲みながら、これからの事を話した。さすが、成績優秀な冬実と阿部君だけあって、予習をばっちりして授業においてかれないように図書館で勉強するらしい。挙句、私と清水君は勝手にどうぞ、とさっさと行ってしまった。残された二人・・・・・何も考えてなかったから暫くは無言だった。

「これから、どうしよっか?清水君は時間大丈夫?」

「大丈夫だけど・・・・佐々木は?」

「もちろん、大丈夫。」

そしてまた無言。二人で路頭に迷った末に出した結論は、卒業式の後に行った海に行く事だった。

何処からか漂着した船の甲板に腰を下ろして暫く海を見つめていた。

この前、ここに座った時は大泣きした私が嘘みたいだった。

あの時は、こんな感じで清水君とももう逢えない、この世の終わりのように感じていた。でも、今、またこうして一緒に座っている。そう思うと、なんだか笑いがこみ上げてきた。

「どうしたんだよ?急に笑い出して・・・・・」

「あっ、ごめん。だって、この前は・・・・っていうか、ほんの数日前なのにあんなに大泣きしてたのに。

 今、またこうして二人で座ってるのが何か、おかしくって・・・・・」

「あぁ〜〜っ、本当にあの時は驚いたよ。あんなに大泣きされるなんて思わなかったし・・・・・」

「ごめんね・・・・私も、この世の終わりだぁ〜って、勝手に思っちゃって・・・・・」

そう言うと、二人で大笑いした。やっと、緊張が解けたみたいで色々話した。

「そうそう、忘れてた。」

私はそう言って、冬実から預かった写真を渡した。

「二人で写ってる写真だって。卒業式の時の・・・・」

「もう出来たんだ、早いねぇ〜っ。佐々木はもう見たの?」

「あっ、まだ見てないっ!」

清水君は封筒から写真を取り出した。私は、彼の手元を覗き込んだ。

早咲きの桜が満開の写真。

「寂しくなったら、この写真でも眺めとかなきゃなっ・・・・・・・・」

「そういえば、清水君の入寮しきっていつ?」

「明後日・・・・・」

「明後日ってもうすぐだね。残念。私もその日から合宿だよ。お見送りに行けないやっ。」

「合宿の準備は整ったの?」

「まだ・・・・・・でも、すぐ出来るしね。清水君こそ、準備万端なの?」

「うぅ〜んっ、荷物の整理は出来たんだけどさぁ〜〜っ・・・・・」

「何か引っかかってるの?」

「いろいろとね・・・・・・・悩めるお年頃なんですよ・・・・・」

また二人で大笑い。

「結局さ、俺達どっかに行ったとか思いでもないなぁ〜って思って・・・・・・

 寂しい寮生活を送るのかと思うとさ・・・・・・」

そういい終わるが早いか、清水君はそっと、私の肩に手を回し抱き寄せた。

「このまま、少しいさせてくれないかな?」

この前は抱きしめられたけど、大泣きしてたからそれどころじゃなかった。ただ、ただ清水君と離れるのが不安で仕方なかった。肩を抱かれて、少し考える余裕が出てくると明後日には入寮してしまう。

今度こそ、本当に逢えなくなるんだと実感がわいてきた。だんだん、涙が溢れてきた。

どうしよう、明後日には本当に離れ離れになっちゃう・・・・・

頭の中には、その事がぐるぐる回る。回れば回るほど、涙が溢れ出てきた。

終に私は声を殺しながら泣いていた。

これで、本当に逢えなくなる・・・・・・・

「佐々木、泣かないで・・・・・・・・・」

清水君はそう言いながら、私を抱きしめた。

「だって、もう逢えなくなっちゃうよ・・・・・・・」

「大丈夫。佐々木は試合とかがんばらないと。連絡くれれば、試合に応援にだって行くよ。

 連絡くれれば、飛んではいけないけど、出来るだけ急いで逢いにだって来る。

 だから、泣かないで。」

「だって・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・あんまり泣いちゃうと、俺も寂しくなるでしょっ。だから、泣かないで・・・・」

清水君の胸に顔をうずめて、暫く泣いた。

泣いている私を力強く抱きしめてくれた。


「そうだ、佐々木。ちょっと顔上げてみて。」

「えっ?」

「眼を閉じてみて。泣き虫さんに魔法をかけてあげるよ。」

「えっ?」

「眼を閉じてみて・・・・・・・」

言われるがままに眼を閉じた。

どれくらい経っただろう?

眼を閉じてから、すごく長い時間が経ったように感じる。

慌てて眼を開けようと思ったときだった。

何かが唇に触れた。

ほんの数秒の出来事なのに、永遠に感じる時間。時が止まったようだった。


「泣き虫さんが強くなりますようにって・・・・願いを込めて・・・・・・・

 これで、寂しい時もがんばれるでしょっ。」

「えっ???」

「お互い、寂しい時も乗り切れるかなって・・・・・・・どう、がんばれそう?」

「えっ???」

私の頭の中はパニック状態だった。言葉がでるのは、間抜けな「えっ???」って事だけ。

「どう?勇気を出してみました。だから、離れてもがんばろうよ。ねっ・・・・・」

「えっ・・・・・・あっ・・・・・・・・・はいっ・・・・・・・・・・・」


そのまま、暫く海を眺めている事にした。

もちろん、清水君は私の肩を抱いていた。私も彼の肩に頭をもたれていた。

少しずつ冷静に考えれるようになった。

そこで、気付いた!

これって、ファーストキス?????

そう思うと、また顔が赤くなるのがわかった。

清水君は平気なんだろうか?私は、こんなにドキドキして顔が赤くなるのを感じるのに・・・・・・・・

そんな心の中を見透かしたかのように、清水君は海を見ながら話し出した。

「なんか、すごい俺、ドキドキしてる。まさか、自分でもびっくりしたよ。

 勝手に身体が動いちゃって・・・・・無性に愛しく感じちゃって・・・・・・・・

 びっくりしたよね。ごめん。」

「よかったぁ〜〜っ。私だけがドキドキしてるのかと思ったよ。

 生まれて始めての事だし、頭の中がパニックだったんだから・・・・・・・」

「実は、俺も・・・・・・・」

また二人で大笑いした。


私達は、今日の日の事を忘れない。

これから先、不安な事だらけだけど、私には強い見方がいる。そう思うと不安も軽くなる。

私にとって清水君がそうであるように、清水君にとっても私がそんな存在になれればいいな・・・

少しだけ、大人になった気がする。

そして、少しだけ、強くなれた気がする・・・・・・

辛くなったら、この海にまで来て今日の日の事をおもいだそう。

これから先の人生をがんばって乗り切っていこうと思う。

この大きな海を見ながら・・・・・・・・・


















読んでいただき、ありがとうございます。

今後の参考にしたいと思います。

ぜひ感想を教えてください。よろしくお願いいたします。

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