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ロボ子の日常  作者: A-T
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第五話 修羅場突入

 久々のオフ、ワタルは自宅で撮りためたテレビ番組を観ながら、ロボ子と他愛もない会話をしていた。

「ワタルさんは、空から女の子が降ってきたらどうするんですか?」

「そりゃ、全力でキャッチするよ」

 空から女の子が降ってくるというのは、ワタルが好きなシチュエーションであり、よくする妄想でもある。そのことは弟であるマコトによって、ロボ子にデータとして送られていた。

「ワタルさんは位置エネルギーって、ご存知ですか?」

「うん、まぁ……。言いたいことはわかってるよ。キャッチしたら、タダじゃ済まないよね」

「それでもキャッチするんですね。凄いです!」

「まぁ、夢だからね」

 おそらく、永遠に叶うことのない夢であろうことはワタルもわかっていた。ちなみに、ワタルの妄想の中では、女の子はキャッチする瞬間に落下スピードが落ち、不思議な力によってフワフワと宙に浮くのが定番だった。

 突如として、ワタルの歌声が鳴り響く。本人が歌っているのではなく、ロボ子が設定した携帯の着信音である。

「タクマからだ」

 電話に出て「はい」と返事をする。

「ワタル君? 今日ってオフだったよね?」

「うん、そうだよ」

「俺もオフになったんだ。この後の予定がバラけちゃってさ……。で、いきなりだけど、ウチでアニメの鑑賞会しない?」

「ん~……」

 と、少し考え込む。いつもなら行くと即答しているが、今はロボ子がいるので、彼女のことが気にかかった。断りを入れる必要などないのだが……。

「用事あるの?」

「いや、そういうわけじゃないけど……」

 行っていいのか、確認を取ろうとロボ子に視線を向ける。ロボ子は、いつの間にかワタルTシャツを着て座っていた。ロボットがTシャツ、それも自分の顔がデカデカとプリントされたものを着ている様に、思わず吹き出すワタルだった。

「ワタルさん?」

 不思議そうに詰め寄るロボ子を見て、というかTシャツにプリントされた自分の顔が近づくのを見て、堪らず引きつった笑い声を出すワタルだった。

「ワタル君……?」

 笑うワタルとは逆に、電話越しのタクマはトーンダウンしていた。

「あっ、ごめんごめん。ちょっと、おかしなことがあって……」

「……ワタル君。今、女の人の声がしなかった?」

「えっ? あ、あぁ……」

「もしかして、彼女が……」

「そういうのじゃないから!」

 強く否定しながらも、ワタルはロボ子の反応を気にかけた。恋人関係を否定すると、嫁を自称しているロボ子が怒るのではないかと危惧したのだ。

「でも、そこに女の子がいるんだよね?」

「……厳密に言えば、違うかな」

「違うの? でも、確かに女性の声が聴こえたんだけど」

「それはまぁ、その……。声はそうだよね」

「ワタル君。彼女が出来たら、教えるって約束したのに……」

 厳密には『ワタル君が彼女のことで悩んだら、絶対相談に乗るよ』という話をしただけだが、「あれ? そうだっけ」とは思うものの、記憶に自信のないワタルは約束したような気になっていた。

「いや、本当にそういうんじゃないから……。そういう人ができたら、ちゃんと言うって」

「それじゃ、さっきの声は?」

「ん~、何ていうか……その……性別的には女性じゃないというか」

「ま、まさか……」

 電話越しのタクマの声が震える。

「娘と書いて男の娘という……」

「違うって!」

「じゃあ、どんな娘がそこにいるのさ?」

「え~っと、それは……何というか……」

 普通にロボットがいると言おうかとも思ったが、破棄されたプロジェクトのことを考えると躊躇してしまう。

「ええい、もう決めた! これから君の家に行って確かめる。それが一番手っ取り早い。いいよね?」

「……う、うん」

 勢いに押されて頷くワタルだった。

 電話が切れ、一瞬の静寂に包まれる。ロボ子はワタルが何かを言い出すのを待つように、じっと彼を見据えていた。

「どうして、そのTシャツを着てるの?」

「ワタルさんが出かけたら寂しいので、このTシャツを着て、ワタルさんのことを感じていようと思って……」

 いじらしいというか、少しモジモジしながらロボ子が答える。この所作もノブによるものである。

「そ、そう……。僕を感じる為にね……。もしかして、そのために作ったの?」

「もちろん! ワタルさんが仕事に行っている間も、ずっと傍にいるつもりになれるように」

 なかなかに重いと思うワタルだが、こういう思考回路にしたノブにとっては、これくらいが丁度よかったりする。彼はヤンデレも嫌いではない。

「それで、出かけるんですよね?」

「いや、それが……向こうが来ることになったんだ」

「誰が来られるんです?」

「同業者のね、タクマが」

「ああ、あの……」

「知ってるの?」

「ええ。ワタルさん、一緒にラジオやっているじゃないですかぁ。ずっと聴いていますから、それはもう……」

 何か含みのある言い方だった。

「大変、仲が良いですよねぇ~……」

「う、うん」

「無関係の他番組に出た時も、『タクマとやってるラジオでさ……』と、よく会話に出すくらいですもんねぇ」

「……そ、そうだっけ?」

「そうですよ! だから、ネットで『あの二人、デキてる』とか書かれるんですよ。BLは仕事だけだって言っていたのにぃ~!」

 鼻息のような音を出し、ロボ子は少し興奮気味になった。ジェラシーというものなのかもしれない。

「お、落ち着いて……。そんな関係じゃないって! 世の中にはノンケの人をカップリングして、妄想するのが好きな人がいるから、そういうのは仕方ないんだってば」

「まぁ、その辺は少しわかりますけどもぉ……」

 わかるのかよ、と無駄な性能に驚くワタルだった。

「とにかく、タクマが来れば、そういう関係じゃないのがわかるから」

 そう繋げて、ワタルはロボ子を落ち着かせ、疑惑の男タクマが来るのを二人で待つことにした。



 一時間も待たないうちに、インターホンから呼び出し音が鳴った。

「来たみたいだね」

 座って雑談していたワタルはすくっと立ち上がり、インターホンの画面に映るタクマを確認し、オートロックを開けて振り向いた。

「ロボ子、来たよ……って、あれ?」

 呼びかけた先にいるはずのロボ子の姿はなかった。室内をぐるりと見渡すと、玄関前でタクマを待ち構えているロボ子がいた。

 タクマがドアの前まで来たことを感知すると、ロボ子はドアを開けて名乗った。

「お待ちしておりました、タクマさん。お初にお目にかかります。私、“ワタルの妻”のロボ子と申します」

 “ワタルの妻”を強調し、軽く頭を下げるロボ子の前では、タクマが口をあんぐりとさせていた。ロボットが出迎えるとは、夢にも思っていなかったのだから無理もない。しかも、嫁だと言われては、どこから突っ込んでいいのか、わからなくなっていた。

「タクマ、あのさ……」

 言い訳しようとした瞬間、タクマはくわっと目を見開いて言った。

「メカが嫁とは新しい!」

「あ、新しいんだ? えっとまぁ、事情を話すから、あがってよ」

 苦笑しながらタクマを迎え入れるワタルであった。



 事の経緯を話し終えると、タクマは深く唸った。

「なるほどね。究極の萌えを目指したという点が興味深い。そして……」

「そして?」

「そして、メカが嫁とは新しい」

「また、それか……。いや、だから、何というか、その……それはだね」

「嫁は嫁です」

 ロボ子に言い切られてしまっては、ワタルも何と言っていいかわからなかった。下手に否定するのはロボ子がいる手前、ちょっと怖いところがあったし、かといって嫁だとタクマに認識されることにも抵抗があった。

 だから、口パクで「後で話す」と言うだけにした。それを見て、タクマは軽く頷いた。

「いやぁ~、それにしても驚いたよ」

「まぁ、驚くよね。いきなりロボットが出てきたら……」

「それも驚いたけど、何より自然な話しぶりにはビックリしたよ。彼女が同業者として量産されたら、俺たち的には脅威になるんじゃない?」

「それは……どうだろう?」

 ワタルとしては考えもしないことだったが、自分が苦労してなっただけに、そう簡単にはいかないだろうと疑問を投げかけた。それでも、タクマは脅威論を続ける。

「話せると演技は違うからアレだけど、可能性を考えたら怖いよね。喉のケアが不要で、台詞を噛むこともないし、音に対しても正確……」

「そう言われると……」

 確かに脅威だなと思い始めたところで、ロボ子が割って入る。

「今のところ、その心配は不要ですよ」

「どうして?」

 ワタルとタクマが揃って問う。

「私の学習は基本的にディープラーニングだからです」

「ディープラーニング?」

 またしても、二人同時に問う。

「例えばですね、何匹もの猫を見ることで、猫の特徴を自分で設定して、それを猫だと理解できるようになるんです。萌え回路の構築のときも、特定の属性のシチュエーションを幾つも見た後に、その属性を特徴づけています」

「前に、マコトもそんなことを言ってたなぁ」

 ワタルは弟から説明された時のことを思い出し、何となく理解はできていたが、タクマは未だにピンと来ていなかった。

「それってさ、例えばツンデレをたくさん見たら、ツンデレを理解できるってこと?」

「はい、そんな感じです。ただ……」

「ただ?」

「あくまでも、得られた情報から特徴づけられたツンデレなので、ワタルさん達の脅威にはならないと、マコトさんは言っていました」

「どういうこと?」

 タクマはワタルに答えを求めた。

「え~っと、何だったかな……。結局のところ、無から有を生み出しているわけではないから、クリエイティブな分野でエキスパートにはなれないみたいな? そんな感じの話をしていたような」

「ふ~ん……」

 納得したような、していないようなタクマだった。そんな小難しいことよりも、タクマの興味は別のところにあった。

「で、どんな属性を認識しているの?」

 眼鏡を指先でクイッと上げて、タクマは好奇の目をロボ子に向ける。

「ドジっ子、ブリッ子、薄幸の少女、ツンデレ、ヤンデレ、新妻、メイド、ロリ、妹、幼馴染、下級生、方言……といったところです」

「ツンデレもあるの? 今まで、そんな素振りは微塵も……」

「ワタルさんは、あまり好きではないと、マコトさんが送ってくれたデータにあったので」

「そうだったんだ」

 そんなこともないんだけど、と思うワタルだった。

「……残念だ」

 タクマがボソッと言葉をこぼした。

「どうしたの?」

「俺は残念だよワタル君!」

「残念って、何が?」

「だって、君の好きなクーデレが無いじゃないか! せっかく、究極の萌えを目指したのに、何かこう……カバーしきれていない気がするんだ」

 それは開発者が究極の萌えと自分好みを履き違えたからに他ならない。自分の好み以外は入れたがらなかったのだ。

「ワタルさんの好きなクーデレ! 教えてください、私にクーデレを教えてください!」

 目の色を変えたロボ子がタクマにすがりつく。

「必死だね。俺の修行は厳しいよ? それでも構わないというなら教えよう!」

「はい!」

「それじゃ、まず連絡先を……」

「これ、メールアドレスです」

 ロボ子の顔面スクリーンに、メールアドレスが表示させる。

「便利だねぇ~」

 感心しながらもタクマは自分の携帯にアドレスを打ち込んでいった。

「今度、ワタル君に萌え教材を渡しておくから勉強してね。要点はメールで送るから」

「ありがとうございます、師匠」

 ちょっと前まで疑惑の男だったタクマは、あっという間に師匠にまで昇格したのだった。

 そして、数日後のラジオ収録で、タクマは萌え教材こと、アニメのBlu-ray BOXを山のように持ってきたのだった。



「ロボ子、今日もタクマが持ってきたBlu-rayを観てるんだろうな」

 タクマが来てから数日後、アニメ鑑賞がロボ子の日課になっていた。ワタルが仕事を終えて家に帰ると、決まってロボ子は何かのアニメを観ていたし、きっと今日もそうだろうとワタルは踏んでいた。

「ただいま」

 玄関のドアを開けて自宅へと入る。いつもの「おかえり」はなかった。買い物にでも出ているのか思って奥に入っていくと、そこには椅子に座って読書をしているロボ子がいた。

「あの……ただいま」

 ただいまを言い直すワタルだった。

「おかえりなさい」

 いつもより低めの声でロボ子が返す。しかも、ロボ子はワタルに視線さえ向けなかった。態度の変化に戸惑うワタルだったが、テーブルの上にあるホウレンソウが垣間見えるキッシュが気になった。

「このパイみたいなの、どうしたの?」

「私が作ったのよ、貴方の為に。それから、それはパイじゃなくてキッシュと云うフランスの郷土料理よ、覚えておいて。私の夫には、そのくらいの知識が必要だわ」

「は、はぁ……」

 ロボ子は涼しげな目でワタルを見つめたが、四角い輪郭の顔では滑稽ですらあった。そもそも、万力アームで本のページを何とかめくっている時点で、ワタルにはコントのようなものに見えていた。

「あの……ひとつ質問、よろしいでしょうか?」

 恐る恐るワタルが尋ねる。

「よろしくってよ」

「今のこの対応が、タクマとの修行の成果?」

「そうね、そうなるかしら」

 その言葉を聴いたワタルは床に膝をついた。これが萌え教材を観た結果ということは、彼女の態度はクーデレなのだ。想像していたものとの違いにガックリきていた。

「……お願い、元に戻って」

「……」

 ちょっとした沈黙の後、伏し目がちでロボ子がワタルを見る。

「……お気に召しませんでしたか?」

「君の努力は認める。その気持ちは有り難く受け止めるけど……」

「けど?」

「……ビジュアル的に無理があるかと」

 ロボ子は読んでいた本をパタンと閉じ、立ちあがって言った。

「ただし、イケメンに限る……みたいなことを言われては、もう……」

「いやいや、そういうことじゃなくて、何というか……。ほら、愛嬌のあるチワワがサングラスをかけてもクールに見えなくて、どこか愛くるしいみたいなもので」

「まぁ、そういうことにしておきます」

 ロボ子の表情が通常仕様に戻り、ホッと胸をなでおろすワタルだった。

「でも、まだ諦めてませんから!」

 万力アームに力を入れ、ロボ子はニコッと笑って見せた。

「ワタルさんの萌えポイントを刺激する秘策があるんですよ」

「それって、どんな……」

「それは、明日の朝のお楽しみです」

 “明日の朝”という言葉を聴いたワタルは、妹キャラが兄を起こすシチュエーションをイメージした。「お兄ちゃん、朝だよ起きて」と、鉄の塊であるロボ子がマウントポジションを取り、万力アームで自分を揺り動かす姿が脳裏をかすめる。そうなっては、起き上がることすら不可能だと身震いした。

「何だろう? 楽しみだなぁ~……妹キャラが起こしに来るとかかな? でも、僕は妹には萌えないからなぁ」

 演技者とは思えないほどの棒読みで、ワタルは危機を回避すべく手を打った。それに対し、ロボ子に優しく微笑むだけだった。



 翌朝、自然と目が覚めたワタルは、自分の上にロボ子が乗っていないことに安堵した。

「ホッ、よかった……」

 昨日、それとなく言っておいたのが功を奏したのかと思いつつ、ロボ子が何か仕掛けてくるのを警戒し、彼女の姿を目で追ったが見当たらなかった。

「ロボ子?」

 起き上がって部屋の中を探してみるものの、ロボ子の姿は何処にもなかった。

「まさか……」

 ワタルは部屋着のままサンダルを履き、玄関のドアを開けたが、そこにもロボ子の姿はなかった。

「幼馴染キャラで起こしに来るとしたら……」

 自分を“ちゃん付け”で呼ぶ幼馴染が来て、寝ているところを揺り動かされる。それでも起きないでいると、ガバッと掛け布団をはぎ取られて下着姿があらわになり、「キャーッ!」という展開をワタルは想像した。

「起こすだけなら家に居ても問題ないか。いなくなっている理由がわからない」

 ワタルは腕組みして思考を巡らせながら、その辺にロボ子がいないか見て回ることにした。

「朝、萌えるシチュエーション……たぶん、定番……僕が好きそうなの……」

 キーワードを並べても、なかなかコレというものが思い浮かばない。

 あれこれ考えて歩いている内に、気が付けば最寄駅に向かうルートを通っていた。車で収録現場に行くこともあるが、仕事先によっては駐車スペースの関係で、電車で行くことも少なくない。ちょうど、今日行く仕事先も電車を使う場所になる。そういうこともあって、無意識に足が向いたのかもしれない。

「ん~……何だろう……」

 気づけば大きな通りと接している十字路に近づいていた。この先を右に曲がれば駅、そう思って曲がり角を曲がろうとしたとき、角から何かが飛び出した。

「おわっ!」

 反射的に後ろに下がったワタルの目の前に、ロボ子がヘッドスライディングする形で飛び込んできた。

 ロボ子はワタルに避けられると、そのまま地面にボディアタックした。ガシャーンという音とともに。

「ロ、ロボ子……?」

 うつぶせに倒れたロボ子は、ピクピクと万力アームを震わせた後、頭だけ回転させてワタルに泣き顔を見せた。その口元にはパンのようなものが咥えられていた。無論、画面表示に過ぎないので、立体感が無いわけだが。

「酷いですよ、ワタルさん。避けられたら、街角でぶつかってラッキースケベという展開が出来ないじゃないですかぁ~……」

「あぁ、そっちか……」

 ロボ子の秘策を当てられなくて、少しだけ悔しいワタルだった。

「ごめんね、避けちゃって。でもさ、ぶつかったら、仕事に行けなくなるから」

「うぅ~……」

「さぁ、ウチに帰ろう」

 そう言ってロボ子に手を差し出すワタルだったが、その手を掴んだロボ子に体重をかけると、あまりの重さに耐えきれずに倒れ込んだ。

「うわぁっ! あたっ!」

 と、そのままロボ子に突っ込む。ロボ子と絡み合うような格好になり、その手は意図せずロボ子の胸元に触れていた。その手を見てロボ子は顔を赤らめる。

「いや~ん、ワタルさんのエッチぃ~」

「いや、あの、これはだね……」

「ラッキースケベを回避したと見せかけてのラッキースケベ、勉強になります」

「だから違うってば! そもそも君、硬いし! お約束の『何だ、この柔らかいのは』って言えないじゃん!」

「それが言いたかったんですね?」

「そうなんだ……じゃなくて、あぁ~……もぉ~、何をやっているんだ、僕は」

 自分が何を突っ込みたかったのか、わからなくなったワタルだった。頭を抱えるワタルをよそに、ロボ子は起き上がって顔面スクリーンに通販サイトの画像を出した。

「これでいいですか?」

 そう問いかける彼女の顔には、「リアルパッド」と書かれたシリコンバストの商品ページが映し出されていた。

「これ、何?」

「『何だ、この柔らかいのは』と言うためのものです。これを胸部に装着すれば、私も……」

 ワタルは黙って首を横に何度も振った。振りながら、リアルで二次元の萌えを追及するのはやめようと心に誓うのだった。

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