第七話 暴食の神と過去
主人公 グラット
役職 暴食の神
特徴 神殿にこもってひたすら食事をとることが好き。
備考 過去に何かあったらしい……。
ボクは創造神様の御殿の前で、座って泣いている嫉妬の女神を見つけてびっくりした。あいつはいつも気が人一倍強く、愛に満ち溢れている人を殺しまくっていた怖い女なのに──今はとても弱々しい女だった。
思えば色欲の神は怠惰の女神の影響を受けたのか、とても眠たそうだった。人をきちんと愛せない彼があそこまで怠惰の女神に傾倒したのも謎だ。
ここ最近不思議なことばかり起きる──と思っていたら嫉妬の女神が顔をあげた。ばっちり目があった。
「み、見ていたの? 」
「うん、まあね」
「──あなたは知りたい? 怠惰の女神がおかしくなった真の理由を」
「──! 」
彼女なら昔の「あれ」も知っているかもしれない。何か、知っているかもしれない。
「──もちろん」
「……あのね、あたくしと怠惰の女神、創造神様、先代色欲の神は親友だったの。他にも色んな神がいたわ。創造神様とあたくしはいい関係だった。なのに──先代色欲の神の事件とかヴィクトリアのことで創造神様は恐怖に怯えた。そこからあたくしもこうなるわけ。怠惰の女神は先代色欲の神の事件の被害者よ」
「それで。あ、その、先代色欲の神の事件については」
「嫌、傷を抉らないで」
嫉妬の女神はボクを睨みつけ、立ち上がる。そしてそのまま立ち去った。──嫉妬の女神も関わっていたのか。
あの事件でボクは部屋にこもった。怖い、恐かった。でも、真実は知らされなかった。
「どうしたの、こんなところで」
「ラ、ラミヤ様っ!? 」
「えーと、あなたは確かブラット、くん? 」
「惜しいです、ボクはグラットです」
「あらぁ、ごめんなさい。後から来て1年経つのに未だに覚えられないの……」
「そりゃ、ボクだって関わり深い神の名前以外は知りませんよ」
「へえー」
ラミヤ様はにこりと笑う。こうして近くで見ると、髪の色も瞳の色も怠惰の女神そのものだった。
「おとーさまに呼ばれてるから、急ぐわ。じゃあね」
「はい」
ラミヤ様は11歳で亡くなったため、記憶力が乏しいのだと今更気づいた。見た目は大人なんだけどなあ……。
自分の神殿に戻ると、なぜかプライが我が物顔で座っていた。若干怒っているようなので、紅茶を与えた。プライはそれを飲み干した。
「遅い! 遅すぎる! 」
「いや約束なんてしてないよ!? 」
「お前は我の友だろう、状況を説明したまえ」
「まったく、いつも勝手だなあ」
「早く話せ」
「……話したら怒られる。憤怒の神が──」
「っ!? 」
プライは持っていたカップを落とした。カップが粉々に割れる。プライの顔は恐怖に怯えていた。
「憤怒の神……か。そ、それならよい。いくら我でもあいつを怒らせるわけにはいかないからな」
「へえ」
「さて……表面だけ教えろ」
「──怠惰の女神が死んだ」
「あんなダメ神が? はっ、笑えるな。ははっ」
「とりあえず出て行ってくれる? 」
「仕方ない。友の指示には従うのが我だ」
プライは一番の新人だ。傷をつけて、怠惰の女神の二の舞になれば──どうなるか計り知れない。