第六話 嫉妬の女神と因縁の関係
主人公 エンヴィ
役職 嫉妬の女神
特徴 幸せに満ちあふれている人を殺す。
備考 創造神様とは仲良し。
強欲の女神に呼ばれた。なぜかは分からない。あたくしと趣味が似ているとは言え、何のようかしら。
「珍しいものね。どうしたの? 」
「あなたにこれをあげるわ」
「まあ、怠惰の女神! 」
「死んでるか分からないからとどめをさすのよ。恨み、たまっているでしょ」
「ええ、もちろん! 」
ボロボロの怠惰の女神はおそらく死んでいるだろうが、まあ念入りにやろう。
しばらくめったざしにし、殺した。強欲の女神は満足げに笑った。
「憤怒の神に喜ばれるわよ」
「あら、あの怒りまくってる男に? ウフフ、いいことだわ」
「恐らくわたくし達は裁かれないわよ、だってルールに則った正しいことだもの」
「そうね」
神殿に戻り、あたくしは愛用する手帳を開く。彼女には悪いが、あたくしは創造神様から直々に監督を任せられているのだ。
怠惰の女神は何らかの罪を犯し、裁いた──これでよし。あとは憤怒の神に事情聞いとかないと。
永久の煉獄にいる憤怒の神を訪ねた。彼は顔をしかめたが、あたくしも怠惰の女神の一件に関わったと知ると急に笑顔になった。表面だけ。
「いやあ、まさか怠惰の女神のことに気づくとはね。わたしもびっくりだ」
「あたくしは愛に満ち溢れている人には敏感なの。知ってるでしょ」
「まあ、そうだろうな。で、何だ? 詳しく知りたくなったのか? 」
「まあねー♪」
はあ、とため息をついた彼は珍しくイスを取り出し、あたくしに渡した。長い話かしら。
「色欲の神と怠惰の女神に子供がいたのは知ってるか? 」
「当たり前じゃないの。あたくし、殺してやりたかったわ」
「ほう、その時殺せば創造神様もたいそう喜んだだろうに」
「う、でも、仲間だから。一応」
「そうだな。その子供がラミヤ様の母親というのは? 」
「知らないわよ」
しかし、そんなことになるなんて。あたくしは怠惰の女神について伏せていた。何も伝えなかった。あたくしのせいだ──。でも、女神が最高の幸せを掴むとはおかしいから、まあいいかもしれない。
「それで、何なの? 神と女神で結婚は一応──」
「いや、怠惰の女神は色欲の神の先代に盗られた自身のパワーを取り戻すべく近づいただけだ。お前も昔からいるから知っているだろう、あの事件のことを」
「呆れた。あんなことでおかしくなったわけ? 」
「拷問をするときに聞いてみよう」
「うん、そうね。じゃあね」
あたくしは創造神様に会いに行くことにした。あたくしと創造神様は親友なのだ。
「おや、珍しいな」
「大変だわ、先代色欲の神のあの事件で怠惰の女神がおかしくなったのよ」
「ほう、それで」
「裁いたわ。あなたの妻も──」
「最初から説明してくれ」
あたくしは手帳をつきつける。創造神様は震える手で受け取る。驚きでかっ、と目を見開いた。
「まさかあいつが怠惰の女神の器ではないとはな。プライは頑張っているというのに情けない話だ」
「後継者はどうしましょうか」
「そんなもの……もういない方がいいかもしれない」
「……分かりました」
創造神様はとても悩んでいた。あたくしは支えられない。彼があたくしを嫉妬の女神にしたのも自分と距離を置くため。あたくしがまともに恋をできない状態にすればいい──。
もうずいぶんと昔のこと。因縁の関係におちた相手もたくさんいる。彼らはほとんど消えた。あたくしぐらいかもしれない。
あたくしは、神様失格だわ。