第五話 強欲の女神とバトレリア
主人公 グリー
役職 強欲の女神
特徴 腰にリボルバーやナイフを常時装備。
備考 彼女は人を殺すことで何が欲しいのか?
わたくしはなぜか憤怒の神に呼ばれていた。これから殺しに出かけたかったのに。
永久の煉獄はまあ、好きな場所だし構わないけれど。憤怒の神はあまり好きになれない。
「何の用事よ、憤怒の神」
「まあそこに座りたまえ」
「ふん。このままで構わないわ」
「殺戮が好きな君に頼みごとだ」
「は? 」
殺戮に関する依頼なら聞いてもいいと思った。イスを取り出し、座る。それを見ると彼はにやっと笑った。
「やっぱり殺戮の依頼なら聞くのか」
「ええ、当たり前でしょ。で、何なの? 早く言いなさいよ」
「色欲の神の愛娘と怠惰の女神を殺してくれ」
「……え? 」
「色欲の神の愛娘はラミヤ様の母親だ。創造神様がお怒りになられる前に二人とも殺してしまえばいい」
「で、あなたがその魂を拷問するのね」
「そうだ」
「分かったわ、必ず殺してみせる」
「任せたぞ」
怠惰の女神・スロースと色欲の神・ルラスが付き合っていたのはわたくしには分かった。傲慢の神とかは気づいていないだろうけど、わたくしには分かってしまう。
もっとも、嫉妬の女神がどう感じたのかは怖くて聞く気になれない。彼女は人の幸せを妬む。妬んだ果てに殺すこともよくある。わたくしが殺戮という欲望に溺れているのと同じ。
そこそこ立派な怠惰の女神の神殿。これは、誰から奪ったのかしら。
「怠惰の女神、こんにちは」
「今日はやけに人が来るなあ~えと、こんにちは~」
「死になさい」
そこでわたくしは攻撃した。しかし、彼女は避けた。それもベッドから起き上がって、軽やかに。
「ビックリしちゃったよ~。なあに? 殺せ、って誰かに言われたの? 」
「やっぱりあなたは強いのね。この神殿だって前の美の女神から奪ったんでしょう? 」
「私が? あはは、するわけないよ~」
「じゃあ、戦いましょう」
「──《バトレリア》」
七人の内最強とされる怠惰の女神は《バトレリア》という空間で戦うことにより、最大限のパワーを発揮する。そこで戦って負ければ──二度と戻ってはこれない。
怠惰の女神が普段は結っている長い髪を解き放つ。彼女はメドゥーサを母に、アルケドア(最強の戦士)を父に持つ最強の女神。もちろん髪は蛇。
「さすが強欲の女神ね。物怖じしないなんて本当に凄いことだわ」
「少しは怖いわ。あなた、色欲の神のパワーも吸っているでしょ」
「さあ、どうかしらね」
彼女の髪の蛇が伸びてくる。慌てて避ける。わたくしはすかさず攻撃を繰り出す。どうやら全盛期より弱っているらしく、攻撃が当たった。
「くっ、こりない女ね」
「──《ジェルス・アビトア》」
わたくしは手っ取り早く終わらせるべく必殺技を繰り出す。彼女の髪の蛇が大人しくなる。
私の必殺技は爆撃。もろに浴びた彼女は倒れた。空間も消える。
「大丈夫? 」
「な、な、何で!? 暴食の神!? 」
「ボクもたまにはお散歩するよ。それに今日は色欲の神とお食事会だし。なのにひどいんだよ、眠たいから寝てるって。だから無理矢理起こした」
「…………一応感謝するわ」
「う、うん。ところでなんで怠惰の女神を? 」
「彼女は創造神様が決められたルールを破った。だから憤怒の神の判断で殺すことにしたの」
「へえ。まあ頑張って」
「ええ」
しかし、眠たい──その症状が現れるとはとても哀れなこと。こんなことが起きるかもしれないから創造神様もきっとあんなルールを……。
怠惰の女神の遺体を空間に放り込む。あとでプレゼントしよう。
わたくしは一人、妖精界に降り立った。スローリアが創造神様と一緒にいる確率は低い。
「だ、誰」
スローリアがそう呟く間に殺す。
私は、正しいことをしているだけ──そう自分に言い聞かせながら帰ることにした。
イスを取り出す
強欲の女神、怠惰の女神、憤怒の神の三人しかできない空間転移で取り出した。物を持ち歩く際に空間に放り込むことでいつでもどこでも取り出すことが可能。
七つの大罪の神々
力は強い順に怠惰の女神、強欲の女神、憤怒の神、嫉妬の女神、色欲の神、傲慢の神、暴食の神。
ちなみに暴食の神が本気を出したところは誰も見たことがない。