第三話 傲慢の神と永久の煉獄
主人公 プライ
役職 傲慢の神
特徴 自分が偉いとおごりたかぶっている。ワガママ。
備考 ヴィクトリアのことをひどく嫌っているが……?
傲慢の神である我は怠惰の神であるスロースの元へと向かっていた。我がこの世で一番偉いというのに全くあのダラダラ女は。
常にイライラしている憤怒の神ほどではないが、我もスロースに対しては怒りたくなる。あの女は──ヴィクトリア並にダメな奴だ。
「スロース、何の用だ」
「遅い~遅すぎる~」
「ダラダラしすぎだこのアホ、ヴィクトリアみたいに永久の煉獄に送られたいか」
「ん~? 何のこと~? 」
「ったく……」
スロースがベッドから起きあがることはほぼない。雑務を全て他人に任せるダメ神の鏡だ。
「あ、そうそう。用事なんだけどね~ん~と~、あ、そうそう。えと、色欲の神呼んできて」
「は? 」
「いいから~」
色欲の神と言えば多くの女神(時には神)を虜にしている変態だ。そんな彼に用が、ある? いやいやないない。
「分かった、深くは聞かない」
「おやすみ~」
人に押しつけておいてまた寝るのかこのバカ神、と罵りたくなったが寝てしまったため、我はため息をついて色欲の神が住む神殿に向かう。
永久の煉獄の恐ろしさをスロースは知らない。そこに送られた者は永久に鎖に縛られる。それも魂だけ。肉体は創造神の愛娘・ラミヤ様を守るために使われる。実際、ヴィクトリアを見かけたが、中身は空っぽだ。話しかけても振り向かなかった。
さて、色欲の神の神殿だが──。入るのは躊躇われる。多くの女性がうろついているのだ。気味が悪い。運が悪ければ色欲の神を口説く神を見かけてしまう。見たくない。
「ルラス様はいますか」
「あら、プライさん。いますわよ。今ならお昼寝中ですわ」
「分かった」
あいつはこの世で一番偉い我に自分のことを様づけしてくれ、と命令した。ムカつく奴だ。あいつへの怒りとスロースへの怒りで我も憤怒の神になりそうだ。
あいつの部屋に着き、少し盗み聞きをする。──規則正しい寝息が聞こえる。本当に寝ているようだ。
「おい、起きろ」
「何だ? また誰か……ってプライじゃないか」
「スロースが呼んでいる、今すぐ行け」
「スロースが呼んでいるのか、仕方ない」
普通なら我が輩になぜ命令するのだもう寝ると決めたのだぞ、と返事するはずなのに──今日のこいつは変だった。好きでもない女神や神たちに口説かれすぎて疲れたのだろうか。
「お前、なぜスロースが呼んでいたら向かうんだ? この間エンヴィが呼んでいても無視したというのに」
「教えるか」
「……まあ深くは聞かない」
色欲の神だが、女性は苦手だとする彼にはきちんとした恋人がいない。ここにいる女神は居候だ。
我はあいつを放置することにした。我はそろそろ自分の神殿に戻るとするか。
永久の煉獄──突如現れたあれに叶わぬ恋の果て自殺しただけのヴィクトリアが送り込まれた。我は傍聴席で創造神様の判決を聞いた。ヴィクトリア──彼女を手放した我だって少しは悪い。しかし、我は傲慢の神だ。そのようなことはできない。
傲慢の神というクラスを持っている以上、プライドを持たなければならない。例えどんな時でも。
神殿 位が高い神に与えられる。女神が持っていることは少なく、先代美の女神、怠惰の女神、嫉妬の女神、強欲の女神の4人以外の女神は持っていない。