シュレーディンガーのリア充
【観測者によるプロローグ的なアレ】
君は、シュレーディンガーの猫ってのを知ってるかい?
あれはもともと量子論の話らしいんだけど、今回は気にしなくていい。
箱の中に、子猫1匹と、ラジウム発生装置、ガイガーカウンター、青酸ガスの発生装置を置く。
んで、ラジウムがもしアルファ粒子を出しちゃったら、青酸ガスが出ちゃう。
っていうことは、ネコが死んじゃう。
でも、粒子が出なかったら、ネコは生きてる。
こんな状況を考えたシュレーディンガーさんは(かっこいい名前だね)「箱を開けるまえは、『生きてる状態』と、『死んでる状態』が重なってる」っていうわけの分かんないことを言ったんだ。
でもそれが正解で、箱を開けた瞬間に、どっちかに統一された世界ができるんだって。
簡単に言うと、神はサイコロを振る、ってこと。(アインシュタインが真っ向否定してたけどね)
そんで、僕の言いたい事は、出来事は、観測するまではどうなるかは分からないってこと。
そういうお話だ。
【一 準備】
部屋の中に一対のカップル(アベック)を用意する。(できれば仲が良い方がいい)
(メモ:アベックとは、おフランス語のavec{英語のwithと同じような意味}からきた言葉で、「恋人」という意味はない)
彼らは、(彼女らは)相手を絶対的なものと思い込み、まさに溺れている。
このとき、絶対に2人の関係を邪魔してはいけない。いくら外部から茶々を入れても、思い込みは治らないものだ。
2人は手をつなぎ、場合によってはキス、あるいはそれ以上のことをするかもしれない。しかし、邪魔をしてはならない。絶対に触れてもいけない。
(メモ:このとき、触れてしまうと、確実にキモい人認定される)
【二 実験】
2人が落ち着き、安定してきたら、観測者が部屋に入り、次のように伝える。
「今から実験を行うが、ここで普通に生活してもらう。食事はこちらで用意する。シャワールームとトイレ以外の部屋は、すべて監視させてもらう。時間は7日間。実験が終わるころには君たちの仲がどれだけ悪くなっているか楽しみだ」
それから、男の方のわずかな歪み(たとえば、浮気とか、趣味にのめり込んでるとか)を見つけ、それを拡大解釈した内容のメールを女の携帯に入れる。
なにも目ざとく見つける必要はない。
女の子としゃべっていたくらいで、こじつけることは可能だ。
男は自分の行動に自信が持てないと簡単に折れる。
女は感情と信用でものごとを決める。
後はライブカメラを録画しておき、その場所から立ち去る。
(メモ:この時、録画は見ない方がいい。楽しみとやさしい心が無くなる)
【三 観測】
7日が経った。
ついに箱を開けるとき、重なった事象が1つに統一されるときが来た。
ドアのかぎを開けるまでは、分からない。
女がメールを読まなかったら?
男が否定できたら?
安泰に過ごせているか、それとも……
結果発表の時。
鍵をあける。
予想通り、2人は部屋の隅に対角線状に座り、ただただ互いを罵りつづけていた。
私たちは、すぐに2人を引き剥がし、心のケアをした。
男の体には、アザが広がり、女の体には、傷1つついていなかった。
(メモ:この実験を終えた後には、観測者のした操作を決して2人に言ってはならない。言ったところで、治癒するはずがなく、むしろ傷を広げるだけである)
【四 考察】
この実験で、分かったことというと、実はほとんどない。これは、ただネコをカップルに変えただけである。
しかし、「愛」とやら「生死」は、全く同じものだということが、改めて確認できた。
(メモ:過剰な当て字は、人から反感を買う)
【エピローグ的な何か】
とても興味深い実験だ。
ドアを開けたら、荒れ果てたリア充がいる。
これだけでエキサイティングだね!
うん、飯がウマイ的な?
またやろうかな?君たちで。
あっ、恋人がいない?ごめん。