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第23話 孤立する義妹の件

 卒業まで一か月を切ったある日。

 久人と凜の関係が少しづつ学校内で浸透してきて平和に過ごしていた。

 だが、久人はある日一つの疑問を抱くことになる。

 そして、その疑問は大きな問題点に繋がっていた...


 ※


 平日の昼。

 久人はいつも通り一人で昼食を食べようとした。

 だが、そんな久人に凜が話しかけた。


「ねぇ、久人くん、一緒にお昼食べない?」


「え・・・?」


 久人は驚いた。

 なぜなら凜は、いつも友人と昼を過ごしていたのだ。

 恋人という関係を公にしてからでも二人でお昼を共にしたことはなかった。

 それなのに、いきなりの誘いを受けて久人は少なからず困惑してしまった。


「え・・・と、いいの?」


「うん、だって、わたしたち恋人なんだよ!」


(たしかにそうだけど・・・)


「うん、分かった。 じゃあ、屋上に行こっか」


 断る理由もないため、久人は凜の誘いを受け、屋上へと向かった。

 その屋上に着くと、久人と凜は弁当を広げ始める。

 久人の弁当も凜の弁当も、二つとも久人の手作りだ。

 とはいえ、弁当の盛り付けは違う。

 久人の方はただおかずが入っているだけだが、凜の方の弁当はなるべく色合いをよく見せるように盛り付けをしてある。

 そんなところからも久人の気遣いが分かる。


「凜、今日なにかあったのか?」


「え、なんで?」


「いや・・・なんでもないよ」


 結局聞こうにも聞けずに、そのまま昼食を続ける。


「ねえ、久人くん」


「なに?」


「はい、あーん・・・」


「えっ!!?」


 付き合ってから半年ほど経つが、共に食事をするのは夕飯のときのみ。

 なので、このような”あーん”をされたことはない。(正確にはされても久人が避けている)


「? どうしたの久人くん?」


「くっ・・・」


 純粋無垢な目で見てくる恋人。

 差し出されるおかず。

 久人は顔を紅潮させながら、口を開き始めた。

 そして、凜が差し出していたおかずを食べる。


「おいしい?」


「うん、おいしいよ」


(我ながらね)


「ふふ!」


 そんな甘い時を過ごしている内に久人は感じていた疑問を忘れ、凜とのひと時を満喫していた。


 ※


 数日後。

 以前久人が感じていた疑問がさらに大きくなる出来事が起こる。

 それは凜との登校時間に起こった。

 久人と凜はいつも通りの時間に二人で高校に向かっていた。

 久人が下駄箱で上靴に履き替えると、凜がジッと固まっているのが目に入った。


「どうした凜?」


「っ! う、ううん何でもないよ!」


 凜はビクッと体を震わせてから久人の方を振り向き答える。

 明らかになにかに動揺していた。


「じゃあ、あたし先に教室行ってるね」


 凜は下駄箱をしっかりと閉めて、靴を履きかえる。


「あ、凜!」


 駆け足に教室に行く凜を久人は見送ることしか出来なかった。

 --その放課後、凜は職員室に用事があるとのことで、久人は校門で待っていようと、昇降口に向かう。

 すると、


「うわー、そこまでやっちゃう?」


「このくらい私の傷に比べたら、軽いものだよ」


「ふふふ」


「あいつには復讐しないと気が済まないんだから・・・」


「ふふ、あはははははははっ!!」


 複数人の女子のささやき声、そして笑い声が聞こえてきた。

 するとその女子たちは久人には気が付かずに、校内へと戻って行った。

 久人はその女子たちに見覚えがあった。

 それは、凜が良く一緒にいた人たちだった。


「?」


 なにをしていたのか気になった久人は下駄箱をざっと見まわしてみた。

 すると、気になることが一つあった。

 凜の下駄箱の扉だけ、少し開いていたのだ。久人は朝は凜が確かに閉めたところを見ていた。

 久人は一つ深呼吸をする。

 そして、ゆっくりと凜の下駄箱を開けてみた。

 すると、そこには刃物のようなものでズタズタに切り刻まれた凜の外靴があった...

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