表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/25

第16話 義妹との誤解修復作戦

「おい凜・・・本当にやるのか?」


 電車で揺らされながら、隣にいる凜に確認を取る。


「もちろん、二人で決めたことでしょ」


「いや、半ば強制的に凜が決めたんじゃ・・・」


 あと数分で目的の駅に着く。なぜこのように二人とも緊張しているかというと、昨日の夜のことだった。


 ※


「凜、誤解なんだ」


 凜が部屋に籠ってしまってから久人は意を決して、彼女の部屋の扉の前に立って中にいる少女に語り掛けていた。


「あれはあいつが無理やり着いてきただけなんだよ」


「・・・証拠は?」


 扉を少し開けて、ひょっこりと顔だけ出して聞いてくる。

 証拠って言われてもそんなものは全く持っていない。どうすれば良いか、迷っていると凜はさらに目を吊り上げる。

 そして、


「お兄ちゃんはもっと自覚した方が良いよ・・・結構女子から人気があるってこと・・・」


 そんなことを言ってくる。最後の方は小さくて久人には聞き取れなかったが、それを言われて、久人もずっと心に引っかかっていたものを凜に問う。


「じゃあ、これはなんだよ凜!?」


「それっ!!」


 久人は帰宅したときにポストに入ってあった、あの写真を凜の目の前に突き付ける。


「凜だっておれ以外の男と楽しそうに話してるじゃないか!」


「ちがうよ、その人はいつもあたしにしつこく付きまとってきてる・・・ほら、林間学校の肝試しであたしを置いて逃げた」


 凜もさすがに慌てた様子で部屋から出て、写真の人物との関係を早口で話し始める。

 久人も本気で疑っていたわけではない。おそらく、今凜が説明したようなことだろうと予想はついていた。凜は男子からも人気があるから。


「だったら、おれだって同じだよ、あの人とはなにもない」


「・・・だったら、お互いに証明しようよ」


「え? なにを?」


「お互いが自分の無実を証明するの!」


 ※


 ということで、今に至る。

 で、大事な二人の無実の証明方法とは。


「ほら、いくよ、久人くん」


「あ、ああ」


 電車から降りて駅から出る。そして、高校の方に歩みを進めると同時に、久人と凜はぎこちなく手を繋ぎはじめる。

 久人も凜も自分の顔が段々熱くなっていくのが分かる。

 そのままなんの会話もなく、高校の近くまで行くと、同じ制服を着た生徒たちから視線が集まってくる。

 ひそひそとなにかを話している生徒も、ちらほら見える。

 そう、無実の証明方法とは二人が付き合っていることを公にして、邪魔な虫を追っ払おうという方法だった。

 勿論、義兄妹ということは秘密だが。

 それにこれを見て、逆上してくる生徒もいるかもしれないのだが、凜曰く、知らないところで変なことをされるよりは全然良いとのこと。

 さらに高校に近づくと、周りの生徒たちの会話がはっきりと聞こえてくる。


「え!? 水原さんって付き合ってる人いたの!?」


「でも、手繋いでるし・・・」


「ウソだろ!? あの水原さんが!?」


(き・・・きつい!!)


 なんだこれ、想像以上に心へのダメージがでかいぞ。そりゃそうだ、凜は高校では結構な有名人、その有名人が冴えない自分と手を繋いで登校してるんだからな。

 そんなことを思っていると、教室の前まで来て久人は手を離そうとした。しかし、凜は大胆にも、教室の扉を勢いよく開け放ったのだ。


(まじか、凜!?)


「おはよ・・・う・・?」


 凜の友人の一人が近くに来て、挨拶をする。が、凜と久人が繋いでいる手を見ると一気に顔が変化する。

 ショックを受けているというよりは、ただ驚いているような顔だった。


「え、え、凜? え??」


 教室の中全体が一気に静まり返る。だが、数秒ほどたつと、


「えーーーーー!!?」


 久人たちが教室に入る前より、うるさくなる。

 そして、教室内の生徒たちが一気に詰め寄ってきた。


「え、水原さん、安藤と付き合ってたの!?」


「いったい、どういうことなの!?」


「いつから!?」


 あっという間に、質問攻めに遭う。

 その生徒の中を凜は久人の手を引いて、自分の席に向かう。


「あはは、まぁ、色々とね」


 席まで行く途中、凜は周りの生徒たちを適当にあしらう。

 久人はというと、周りからの妬み、恨み、憎しみの視線に心が崩壊しかけていた。


(なんで、おれがこんな目に・・・)


 今までは周りからの視線なんてあまり気にしたことはなかった久人だが、さすがに今回は気にせざるを得なかった。

 そのまま隣同士の自分と凜の席に座るところでようやく右手が解放された。その右手は手汗で少し湿っていて、久人は心の中で凜に謝罪をした。だが、実は凜の左手も同じ状況で、彼女も心の中で久人に謝罪をしていた。

 そんな中、久人は妬みなどの視線の中にさらに濃い妬みの視線を感じた。

 顔を上げなくても誰かはわかった。久人は鞄からノートなどを机にしまいながら、この作戦が裏目に出てしまったのではないかと直感した。

 いや、でもまだ決めつけるのは早い。自分のほうはダメでも、凜のほうだけでも成功してくれれば本望。

 と願う久人だったが、その結果は少々残酷なものだった。


 ※


「水原さん、なんで地味なあいつなんかと!?」


「今からでも僕に変えないかい?」


「いや、ここは俺に!」


 ・・・うざい。

 昼休み。凜は男女問わず多くの生徒たちに質問攻めに遭っていた。その中でも特に男子の会話が腹立つ。

 おれが隣にいるの分かっててわざと言ってるだろ、こいつら!

 と、心の中で叫ぶ。元々人気が高く、多くの男子から好かれている凜がいきなり、こんな自分のような地味で暗い奴と手を繋いで登校してきたんだ、騒ぐのも無理はない。

 まぁ、良い気はまったくこれっぽっちもしないが。


「ねぇ、久人、屋上行かない?」


 そんな中、優理に話しかけられる。正直、凜の今の状況を放っておくのは少し心配だったが、ここに居てもただストレスが溜まるだけなので友人の誘いを受け入れる。

 今回久人は昼食は教室で食べたので、今日初めての屋上だった。扉を開けた瞬間に受ける風がとても心地よい。


「で、なんか用なの、優理?」


「いやー、なんか見てられなくて」


 優理がからかうような口調で言う。


「なにが?」


「彼女が隣で色んな男性に口説かれるのをじっと見ている君が見てられなくてねー」


「そんなんじゃねぇよ・・・」


「はは、まぁまぁ」


 その後もただくだらない話をして昼休みを終える。

 だが、そんなくだらない話でも、十分に久人の心を癒してくれた。


 ※


 放課後。

 もう恋人同士と公開したこともあったので、一緒に帰ろうと凜を誘おうとする久人だったが、そんな青年に妨害が待ち受けていた。


「凜、一緒に帰ろう」


「あ、久人くん、うん! かえ-」


「水原さん、ちょっと、いいですか!!」


「え?」


「ほら、りん! ちょっと来て!!」


「ええ!? ちょっ、な、なに!?」


「・・・」


 整理しよう。

 今、凜が”帰ろう”と言おうとした瞬間にいきなり男女4人が来て、一瞬のうちに凜を引っ張っていったのだ。


「・・・はぁ、帰るか・・・」


 結局、久人は一人で帰路に着く。そして、それを待ってたかのように校門には一人の女子が立っていた。


「やぁ、久人クン!」


「っ! 君は・・・」


 さつきがスススッと久人の横に近づいてくる。


(あれ、なんか・・・前の寒気がないような)


 なぜか前回感じた悪寒が今は感じない。隣で笑っているさつきの顔も前に見た怪しい笑いではなく、とても可愛らしい笑顔だった。

 元々スポーティーな制服の着こなしと綺麗なサイドテールがさらに彼女の笑顔を際立てていた。

 だが、なぜこんなにもさつきの雰囲気が変わったのか、久人には分からなかった。

 そのまま、二人で駅まで一緒に歩く。

 その間、会話は全くなかった。

 駅に着き、久人はさつきから離れて、切符を買いに行こうとする。


「久人クン!」


「?」


 後ろからさつきに呼ばれて、久人は振り返る。さつきは俯いていたが、やがて顔を上げると、意を決したように、


「おめでとう・・・」


 そう一言呟いた。


「あ・・・」


 久人はなにも言えずに、さつきが去っていくのを見つめていた。


「凜のあの作戦・・・成功したのかな・・・?」


 久人の方は十分成功したといえるだろう。

 しかし、凜のほうは、久人の想像以上に大変なことになっていた...

これから、少しの間ネット環境のないところ(実家)に帰るので、更新が少し遅くなります。

どうかご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ