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第13話 義妹に告白された件

 夏休みが始まって3日が経ち、久人はさらに追い込まれていた。


「いかん、このままでは理性がもたん」


 あれから凜は事あるごとに久人にくっついてくる。

 料理を手伝ってもらったときは必要以上に手を握られ、読書をしているときは膝の上に乗っかってくる。

 朝起きると当たり前のように同じベッドに凜も寝ていて、昨日はまた風呂に乱入してくるなど、なにかと凜に誘惑されていた。


 久人は浴槽を掃除しながら最近の凜の行動をどのように回避するかを考えていた。

 とはいえ、久人も男。凜に触れられて嬉しい気持ちがあるのもたしか。それに、一日中凜にくっつかれていて、溜まった性欲を発散することも出来ずにただ溜め込むことしか出来ない。


(今日もまた風呂に入ってくるのか? バスタオルとかなしで入ってきたり・・・)


「て、なに考えてんだおれは!!」


 マスタベーションがろくに出来ない環境からか、久人の頭の中が明らかにおかしくなってきていた。

 普段の久人でも、確かに欲情くらいする。それでも、マスタベーションは三週間に一回くらいのペース。ほとんどは煩悩などない久人なのだが、今は凜という可愛く可憐で、美しい妹と同棲し、あろうことか誘惑までされているこの状況が煩悩を大量発生させていた。

 --久人は掃除も終わり、落ち着くために読書をすることにした。

 ソファーにうつ伏せで横になり小説を読んでいると、急に背中に重みが来る。


「お兄ーちゃーん」


 凜が圧し掛かってきたのだ。


「なにか用?」


 久人は背中に感じる柔らかさにくらくらしそうなのを堪えながら、冷静を装う。


「んー、あたしも読書しようと思って♪」


 そう言って凜は久人に背中を合わせて乗っかる。


(い、息苦しい・・・)


 肺が圧迫されて、久人は少し呼吸が困難になる。

 肩越しで上に乗っている凜のほうを見ると、義妹の綺麗な黒髪が久人の顔にかかる。

 良い匂いがしてまたくらくらとするが、ふと凜の読んでいる書物に目がいった。


「て、凜が読んでるの漫画じゃないか!」


「? そうだよ」


 久人の指摘に凜は体をねじって、態勢を変えながら返事をする。


「!! ちょっ! 凛、胸が!!」


 凜が体をねじったことによって、久人の背中にまたふくよかな感触が戻ってくる。


「? どうしたの?」


 慌てている久人に凜はわざとらしく体をこすりつけてくる。


「!!」


 ガタ!!


「ひゃっ!」


 久人は一気にソファーから立ち上がる。それと同時に凜は久人の上から転げ落ちる。


「ゆ、夕飯、作るから・・!」


 そのまま青年はキッチンに消えていった。


(心臓が止まるかと思った・・・)


 久人は女にあまり興味がない代わりに、女への耐性はほとんどなかった。

 このままでは本当に理性が保てなくなる。

 久人は凜のことを考えないように頭を振ってかき消して、夕飯の準備に取り掛かった。


 ※


 夕飯の後、久人はリビングのソファーに座ってジュースを飲みながらボーっと考え事をしていた。

 すると、背後に気配がした。


「ねぇ、お兄ちゃん、このファッションどうかな?」


 その気配から呼ばれて、久人は後ろを振り向く。すると、


「なっ凜!? なんだよその恰好!?」


 凜に視線を向けた久人は驚いてジュースを吹きかけそうになる。なぜなら、そこには白のノースリーブにホットパンツという露出過多な凜が立っていたからだ。


「どう? かわいいでしょ? 今年の夏はちょっぴりセクシー系で行ってみようかと思って♪」


 言って凜は一回転する。軽く開いた腕から腋が見える。


「本気でそんなの着るつもりかよ、そんな挑発的な格好してたらまた痴漢されるぞ」


 凜の大胆な格好に股間をズキズキと疼かせながらも真面目ぶって説教する。


「えー、今どきこれくらい普通だよー。 挑発っていうのは、こーゆーのを言うんじゃない?」


 むにゅ


 言うと凜は久人の腕をとるとそれを自らの胸の谷間に押し付け、両の二の腕でぎゅっと胸を寄せ挟み込んできた。


「おい!? な、なにを!!」


「んー、なあに?」


「く・・・!」


 久人は腕に感じる感触に耐え切れなくなり、立ち上がりその場から去ろうとする。しかし、


「あ! 待ってよ」


「あっ!」


 凜に手を掴まれる。それに久人はバランスを崩し、そのまま凜に覆いかぶさるように倒れてしまった。


「う・・ごめん、大丈夫、凜・・・っ!!」


 久人は目を開くと凜の顔が目の前にある。しかし、久人はそんな凜の顔から目が離せなかった。


「あ・・・」


 凜も少し口を開けるが小さく呻くだけで、久人の体を退かそうとしない。

 傍から見たら、久人が凜を押し倒している状態。


「り・・・ん・・」


 久人の中で理性と本能がぶつかる。

 すると凜は久人の首の後ろに手をまわしてきた。


「いい・・よ・・・おにい・・ちゃん」


「!」


 そんな凜の言葉に危うく理性が飛び、凜の唇に吸い付いてしまいそうだったが、なんとか堪えて久人は体を起こす。


「あ・・・」


 凜は悲しげに声を漏らす。


(あぶない、危うく・・・キス・・するとこだった・・・)


「やっぱりダメか」


「え?」


 凜が体を起こしながら、急にそんなことを言う。

 久人には全く意味が分からなかった。


「やっぱりお兄ちゃんにはこんな色仕掛けなんかじゃ、無意味だよね・・・」


 凜がポツリポツリと話す。


「ホントはさ、もっとちゃんと言いたかったんだけど・・・なんて言えば良いか分からなくって・・。 だってそうでしょ? あんなに酷いことした後にこんなこと言うのってムシが良すぎるなって自分でも思うもん・・・でもね」


 凜の手が久人の胸に触れる。その小さな手は震えていた。


「電車で助けてもらったとき、ほんとに嬉しかったんだよ。 他にも、あたしが迷子になった時、お兄ちゃん必死になって探してくれたでしょ。 それに、お兄ちゃんが告白を断った時、正直あたしホッとしたんだ。 他にもお兄ちゃん、あたしのために色々としてくれて・・・それで、気が付いたら・・・あたし・・・・」


 凜は久人から視線を外すように顔を伏せて、深呼吸をする。そして、意を決したように再び目を合わせ、


「お兄ちゃんのこと・・久人のことが好きになってたの!!」


 肺に吸い込んだ息を一気に吐き出すようにして思いをぶつけてきた。


「やだ、言っちゃった」


 凜はやっとの思いで告白をして、胸の使いが取れたのか照れ笑いを浮かべる。

 しかし、久人の方はそうもいかなかった。

 頭の中で、色んな考えが巡る。


(え!? 凜が・・俺のことを・・・!?)


 信じられなかった。今まで女子から何回かは告白されたことはあったが、久人は告白されてもすぐに断ることは決めていた。

 しかし、今は違った。今まで告白してきた上辺の久人しか知らない女子とは違う。凜には、本当の久人を見せている。というより、凜といると自然と素の自分がさらけ出る。正直、凜のことが好きだ。最初はただの妹としか思っていなかった久人だが、共に過ごすうちにいつの間にか凜のことを異性として意識するようになった。すぐにでもこの告白を承諾して、凜と付き合いたいというのが久人の本心だ。

 しかし、今の二人は戸籍上兄妹なのだ。たった一つの枷だが、それでも久人の思いには十分なブレーキがかかる。


(やっぱり・・・だめ・・だよな・・)


「でも・・・俺たち・・・兄妹・・だから」


 久人はゆっくりと告げる。しかし、


「そんなの関係ないよ!!」


 凜が声を上げてそれを遮る。


「え?」


「やっぱりお兄ちゃんはそのことを気にしてたんだね・・・」


「そりゃ、まぁ・・」


「そんなの関係ないよ、あたしはお兄ちゃんに守られてばかりだから・・・今度はあたしが守りたいの!」


 凜は久人の手を握る。


「あたしは、久人を守る盾になりたい・・・」


 凜は久人の目をしっかりと見つめて言う。

 その瞬間、久人の中にあった何かが吹っ切れた。

 すると久人は凜の手をしっかりと握り返す。

 そして、


「だったら・・・おれは・・・・・凜を守る・・剣になるよ」


 凜の目を見つめ返して言う。今度は逸らさない。凜が電車の中で痴漢されていたのを初めて見かけた時は逸らしてしまった。しかし、今度は絶対に逸らさない。


「お兄ちゃん!!」


「凜!!」


 凜が抱き付いてくる。

 久人はそれを受け止めた。凜の気持ちも体も全てを受け入れるかのように...

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