第1話 義理の妹が出来た件
初めてのオリジナル作品なので、表現に乏しい場面がありますが、ご了承ください。これらを踏まえた上で、大丈夫という方は、お進みください。
梅雨の時期に差し掛かろうとする6月初旬、乗車率百パーセントを越えている通学電車の中。安藤久人は昨夜の事を思い出していた。
「--久人、明日新しい母さんが来るから」
夕飯の後、キッチンで洗い物をしていた最中に、彼の父、安藤浩司が軽い口調で言った。
「え? 新しい母さん?」
まるで外国の言葉を聞いたかのように、おうむ返しで問う。
「あと、妹も来るから。良かったな久人、妹だぞ、い・も・う・と!」
父は、更にとんでもない発言を重ねてきた。
「いや、ごめん、全く理解が出来ないんだけど・・・?」
久人は洗い物を中断して、父のほうに振り返った。
「だから、父さんは再婚するし、その相手には連れ子がいるの。まったく、せっかく暗くならないように、明るく話題を振ったのにー」
「そう、おめでとう」
久人は、ただ冷静にそう返した。
「え?怒んないの?」
父はそんな息子の反応に拍子抜けしたようだった。
「怒ってほしいの?」
「いや、そうじゃないけど。でも――」
「別に、死んだ母さんのことを言う気はないよ。それより、父さんの好きな人と幸せになるのが一番良いよ」
それは久人の本心だった。久人の母は、久人が7才の頃に病気で他界してしまってからは、父が男手一つでここまで、育ててくれた。それには、久人はとても感謝していたし、父にも幸せになってほしいと思ってもいた。
「そうか・・・じゃあ、明日連れてきてもいいかな?」
「うん、楽しみにしているよ」
これもまた、久人の本心だった。
――というような出来事があって、今に至る。
気が重い、というのが久人の率直な思いだった。別に嫌ではない。むしろ楽しみである。しかし、気が重い。
新しい母、父の再婚相手だけなら、こんな思いはしなかっただろう。問題は、連れ子だ。
たしかに、久人自身も兄や弟、姉や妹などが欲しかった時期もあった。だが、それが、急に実現するとなると、否が応でも楽しみより不安の方が勝ってしまう。
(はぁっ、急に妹が出来るとか、それなんてエロゲ?ってハナシだよ・・・)
この世にはざっくり分けて、二種類の男性がいる。肉食系男子と草食系男子だ。そして、久人は、このどれにも当てはまらない。何故なら、久人は女や恋愛などには、全く興味がないのだ。周りから見た久人の評価は、THE クールである。
そう、久人は、見ず知らずの妹が出来ることに緊張しているのではなくて、見ず知らずの妹が出来て、気まずくならないかということについて、気が重くなっているのだ。
(まぁ、考えていても仕方ないか)
久人は、とりあえず新しい家族についての思考を止めて、手すりを握り直した。
すると、少し離れた所にいた一人の女子がこちらを向いていた。
(あの人は、水原凛さん)
久人と同じ高校に通っていて、席も隣同士だ。
髪の毛は、腰くらいまである黒髪のロングヘアーで、身長は他の女性と比べると、そんなに高くなく、178センチの久人と比べると、一回りほど小さい。目は少しつり目がちだか、くっきりとした瞳は大きく、とても愛らしい。
そんな彼女と目が合った久人は、特に何も思うことはなく普通に見つめ返した。
しかし、すぐに久人のほうから逸らしてしまった。
(何か伝えようとしているとしても、目線だけで理解できるほど、俺は賢くないんでね・・・)
それでも、少し気になった久人はもう一度彼女の方を見た。
すると、彼女は少し泣いているように見えたが、少し離れているので、よくは分からない。
電車の揺れに従いつつ、少し近づいて見ると、彼女が泣いている、と確信がついた。彼女は痴漢されていた。
(まぁ、助けるわけでもないけどな・・・。巻き込まれたくないし、第一、俺以外の人も気付いてるだろうに・・・)
久人はあくまで、冷静にそう考えた。
そして、学校の近くの駅に電車がつくと、凛は走って乗降口に向かっていった。
※
朝のHRが始まる10分前ぐらいに久人は、自分の席についた。その時には既に、隣には凛が座っていた。
(何もしてないのに、なんか睨まれてるんだけど・・・)
久人は、隣から、凄い形相で睨んでいる凛を無視して、1限目の授業の準備をする。
「・・・フン」
しばらくして、凛のほうから、睨みをやめた。
(なんなんだ?)
結局、いつもなら休み時間の間には1、2言会話していたのだが、この日は、一言も会話せずに終わった。
「早く帰んなきゃな」
久人は、自分にそう言い聞かせて、家への帰り道を歩いていた。
そう、今日は新しい家族が来る日なのだ。
「ただいま・・・」
たとえ、返事が返ってこないとしても、この挨拶を言うことは久人の日課だった。
「おお、来たか、久人!さぁ、こっちへ来なさい」
「父さん!ってことは、もう?」
「ああ、さぁ、入りなさい」
父が勢いよく開けた部屋の中には、知っている人物が座っていた。
「え?」
「え?」
久人とその人物は、同タイミングで、困惑の言葉を発した。
「紹介しよう、これから、お前の妹になる水原凛さんだ。そして、こちらがお前の新しい母になる水原喜美子さん」
「よろしくね、久人君」
奥のキッチンから、出てきた大人の女性は、にっこりと久人に笑顔を向けてきた。
「ちょっと待って!じゃあ、ママの再婚相手って・・・」
まだ、理解しきっていない凛に。
「そう、久人君のお父さんよ」
止めの一言を放つ凛の母。
「昨年のPTAの集まりで知り合ってから、色々とあってな・・・お前らを驚かせようと思って、黙ってたんだ」
「てことは・・・」
「あたしのお兄ちゃんになるヒトって・・・」
二人は顔を合わせて。
「ええええええぇぇぇぇぇーーーーっっっ!?」
義妹になった凛だけの叫びが部屋中に響き渡った。久人はあくまでも冷静を装っていた...
まず、最初に、ここまで読んでくださった読者さん、ありがとうございます。主人公は、クール設定なので、コメディ要素はあまり無いのですが、楽しんでいただけたでしょうか?感想などを書いてくださると、とても嬉しいです。まぁ、何はともあれこれからも更新していくので、よろしくお願いします。最後にできれば評価の方をしてくださると、とても嬉しいです。よろしくお願いします。