もう絶対に誰かを死なせたりなんてしないっ!
岸本家の葬式。
私達一家は参加していた。もちろん、一年B組の生徒も集まり、雅史の為に葬式に参加している。ここに優香や正男達はあまり関わりがない事から参加はしていない。綾子は苦痛の表情を浮かべて、席に座っている。まぁ、普通はよっぽどの事がない限りは生徒が死ぬなんて事はあり得ない。残念ではあるが貴重な体験と言えるだろう。
学校の制服を着るのは何週間ぶりだろう。まだ夏休み中に集められた生徒の中には、怠惰が抜けていない者も多数見受けられた。
もちろん、瑠花や雅紀も参加しており、雅史に連れて行ってもらったレストランのシェフも当然いる。皆表情は曇っている。とやかく言う私もだが。
だが、隣に座る姉と麗が私の手を握る。
「美樹たん。美樹たんにはあたしがいるから大丈夫だよ」
「美樹。美樹にはこの私がいるから安心したまえ」
二人は私を間に挟んでいる。大変ありがたい事に周りの視線を今も集めている。普通に女の子が女の子の手を握っていたら嫌でも注目を集めるか。だが、二人には今回の傷心を癒して貰った恩が大きかった。この数日間。麗と姉には感謝しかない。もちろん、未だに雅史を失った傷跡は埋まらない。
それでも、私達は生きなければならないのだ。残された者たちとして。
雅史の葬式が進む中。御経を上げている途中で、絶対眠るだろうと思っていた麗も姉もしっかりと起きていた。二人とも雅史と色々あったからか、思う所があるのかもしれない。
それから全員で御花を添え、葬式を終える。
外に出ると、雨が散々降っていたのに晴れていた。
「こんなに晴れてると海に行きたくなるね!」
「御姉様は合宿に来られないのですか?」
「んーちょっと用事があってね!」
「お姉さんにしては珍しいですね」
「そりゃあ、あたしだって年がら年中暇なわけじゃなからねっ!」
気持ち良さそうに背伸びをする姉。きっと椅子に長い事座ってるのが疲れたのだろう。麗も同じようにして姉に続く。
すると背後から、私の肩に手が置かれる。振り返ると、そこには雅史の恋人になりたがっていた瑠花が笑顔で立っていた。それを見て、私もニッコリと笑った。
「今日まで、雅史の事ありがとう」
「別に彼女だったんですから当然です」
「そうね。それで、あたし、谷中さんに酷い事沢山したから謝ろうと思って……」
「全然平気です。もう終わった事ですからね」
済まなそうに頭を下げる瑠花。
だが、もう終わった事なのだから、いつまでも引きずる事はない。
そんなとき、遠くの方で瑠花を呼ぶ声がした。
「先輩呼んでますよ」
「あ、ごめんね谷中さん、また学校でね!」
「はい。あと先輩――――」
「んー?」
瑠花が走りながら振り向く。
私は片目を閉じたウィンクをしながら大声で言った。
「雅紀さんとも仲良くしてくださいね!」
「え、ええーっと、あははは……」
瑠花は苦笑いしながらも、雅史の元へと戻った。多分、どういう意味かは伝わったと思う。それから、麗と姉の二人に振りかえり、手を繋いだ。
「それでは帰りましょうか!」
「「うんっ」」
私達が三人で手を繋ぎながら、式場の外へと出るとそこには優香をはじめ、美人部メンバーが全員集まっていた。皆、雅史が死んだ事は知っている為、きっと私の事を心配してきたのだろう。そんな気遣いが嬉しかった。
皆が心配した視線を私に向ける中、私は向日葵のような笑顔で皆に言った。
「御心配かけて、すいません。ですが、私はこの通り。元の谷中 美樹に戻りました。なので、これから皆さんで学校に行って、部活をしましょう!」
そんな私を見て、皆笑顔になった。
我慢が爆発したかのように皆抱きつき、私の完全復活を喜ぶ。
私も幸せ者だよ。雅史さん。
血も繋がってないのに優しい家族と。
大切な部活友達に。
君がいたから。
天に聳える太陽は、笑っているかのように照らしだしていた。雅史もあの太陽のように天国で笑っていると良いなと思いながら気持ちを上へと送った。
これにて、だい④わ。終了致します。
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