表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/142

親友たちが集まったりなんてしないっ!

 俺達美人部の連中と+αで池袋での洋服店を回っていく。

 先ほどの暴動もあって、俺は帽子をかぶって行動をしている。暴動で、一躍俺は有名人。その為、優香の帽子を借りているのだ。

 色々と買い物が進む中、麗は大量の商品を買う。値段だけ見てもそうとう可笑しい。コイツの金銭感覚がおかし過ぎる。

 そして、その大量な荷物を持つのは男達なわけだが。


 「そういえば、色々とあって忘れていたのだが、何で貴様らがいるのだ」

 

 麗は顎に手を当て、考え事をしていた。

 優香が問題を起こしたせいで、鵜呑みにされていた問題を麗は掘り上げた。三人とも背筋を張り、強張らせている。

 優香は首を傾げて、三人の様子を伺っている。


 「そ、それは、今日丁度通りがかったもので……」

 「れ、麗様が誰かと喧嘩しているのを目にしましたもので……」

 「ぼ、僕もそんな感じで……」


 皆苦笑い。それを見つめる麗は、三人の心を覗くように睨む。

 三人は声にならない短い叫びを上げ、後退りそうになっている。よく見れば、正男と直弘の二人は額に冷や汗を浮かばせている。鷹詩は涎を垂らしている。もう、ペットに天職したらどうだ?


 「まぁいい。荷物持ちをしてくれてるのなら言う事もないしな」

 

 三人はホッと胸をなでおろしていた。

 優香は何が何だか分かっていないご様子である。

 

 「それより、あたしお腹空いたわ。昼食にしないかしら?」

 「何故貴様の要望に答えなきゃならんのだ」

 「まぁまぁ、麗もお腹空いてませんか? 私は空きましたよ?」

 「む……美樹が言うのなら……」

 

 そんな感じで俺らは近くのファーストフード店に入った。時間的に混んでいたので、空いてる席をとりあえず探す。

 注文の為に並ぶのは麗と男三人組みだ。

 場所取りは俺と優香で行う事になった。

 二人席などはあるのだが、五人席となると中々見つからない。

 辺りを詮索してもないようなら、最悪公園でってことになるだろう。

 

 「あ、ここ座れそうよ!」


 優香がどうやら五人席を見つけたようだ。

 少々狭いが、まぁ詰めれば問題はなさそうだ。

 そこに俺と優香は腰かけ、麗達が来るのを待つ事にした。


 「いやー席が見つかってよかった!」

 「そうですね。坂本さんが良い所を見つけてくれて良かったです」


 とりあえず、俺らは一息吐いて、辺りを見回す。

 注文の行列も凄まじく並んでいた所から察するに、麗達が来るのは遅そうだ。

 その間に聞きたい事も聞けるな。


 「あの、坂本さんは何をしていたのですか?」

 「何って人を待ってたんだけど」

 「誰かと遊ぶ約束をしてたんじゃないんですか? もし、そうなら――」

 「違うわよ。別に平気よ! それに何もなかったし……」


 影のある表情を見せる優香。

 一体何があったのだろうか。

 そういえば、俺が間違えて話しかけてしまったときに、別の男達がいたな。あれは知り合いだったのだろうか。それともただのナンパ?

 

 「では、あの男の人達は知り合いなんですか?」

 「……あんな奴ら知らないわ。でも、谷中さんには関係ないから気にしないで! ごめんね、巻きこんじゃって!」

 

 巻きこむ? 何か事情でもあったのだろうか。

 俺が深く介入すべきではないのかもしれないけど、気になる。一応は優香も美少女なのだから。まぁ最初は俺と同等かとも思ったが、よく見れば違うようだ。

 

 「そ、それより、アイツら遅いわね!」

 「そうですね……。何をしているんでしょうか。ちょっと見てきますね」


 会話に詰まった俺はそれだけを告げ、席を立った。

 注文をするカウンターまで行くと、何やら揉めているようだった。

 

 「美樹は絶対コレが好きだと言っているんだ!!」

 「いえ部長! そこは譲れません! 美樹さんはコレを選ぶ筈です!」

 「いやいや、正男。それはない! 美樹様は絶対こっちだ!」

 「何言ってるの! 美樹さんが君たちが指している物を食べる筈が無い! 絶対にこっちだ!!」

 

 カウンターの前で、俺が食べるのはどれかを争っている。

 協調性の欠片もない。まったく、後の人達の迷惑だ。

 本当にコイツらは顔だけはいいんだけど、中身がダメダメだ。

 とりあえず、俺は恥ずかしかったが行列を裂いて、麗達の元へと向かう。


 「何をしてるんですか?」

 「あ、美樹! 私は美樹はコレのほうがいいだろうと言っているのに、コイツらが聞かなくて……」

 「部長! それは絶対にないです! 美樹さんこっちですよね?」

 「何を言ってるんだ! 美樹様はこれですよね?」

 「はぁ~わかってないな。こっちだよね美樹さん?」

 

 あーコイツらうるさ過ぎる。もう誰か黙らせてくれよ。

 俺が何を食べるとか適当で良いだろうが。それはダメだとかこれは良いとか、基準が分からない。そもそも後の人達に気を使え。笑顔が売りの店員さんが顔を引き攣らせてるぞ?

 

 「もう私は何でもいいですから、後の人達に迷惑をかけないでください」

 「う……」

 「すいません……」

 「美樹様……踏んでください」

 「ごめん」

 

 全員俺に頭を下げる様子は異様だ。

 さて、俺の注文は……。

 

 「ったくここまで並ばせるのは誰かと思えば、お前たちだったのか」

 

 俺が注文を完了させ、商品を待っている間に声をかけてきた。

 正男、鷹詩、直弘の三人は一斉に声の発生源を見つめる。

 こちらに向かって歩いてきたのは、またしてもイケメン。しかし、ただのイケメンではない。幹の知り合いだ。


 「何でお前らがこんなところにいるんだよ」

 「美樹様と麗様に踏まれに来たか!」

 「僕らの邪魔はさせないぞ!」

 

 発想が斜め上すぎる三人。

 麗は腕を組んで溜息を吐いているご様子。

 現れたのは、井草 拓夫と近藤 久光の二人。

 両者とも眼鏡をかけている、いわゆる眼鏡イケメンだ。

 まったく。今日は運が悪過ぎる。


 「お前らの言動が理解できないぞ。俺と久光は二人で池袋に映画を見に来ていただけだ」

 「男二人で映画とは寂しいな」

 

 正男が辛口で拓夫を批判する。

 鷹詩と直弘も笑っている。コイツらまだ仲が良い筈だよな?

 背後にいた久光が口を開いた。


 「最初は二人だけだったんだけどさ……なんか女子が集まってきちゃって」

 

 久光が困ったように髪の毛を弄っている。

 二人の背後からは、髪を染めたいかにもビッチな女子高生五人が群がっている。

 二人は笑顔を引き攣らせて対応に追われている。

 すると、一人の女子が口を開いた。

 

 「あー! もしかして田村 正男君!?」

 「ん? そうだけど、面識あったっけ?」

 「ないよー。あたしたちの高校で超イケメンだって有名なんだよ」

 「そうなんだー。失せろビッチ」

 「へ!?」

 

 ビッチAは表情を固まらせた。

 俺も一瞬何を言ったのか分からなかったくらいだ。

 まさか、あの女ったらしの正男が……ビッチだからという理由で拒んだ!? 何がコイツを変えたんだ!?

 

 「あ、野村君だ! 野村君もこういう所くるんだ! なんかイメージと違うな~」

 「邪魔だ。美樹様と麗様が見えなくなる」


 ビッチB、状態異常:凍結。

 鷹詩は女子と話すと、上がる筈なのに冷酷に返した。

 何という事だ!?

 

 「ねぇねぇ、直弘君だよね? アタシのお姉ちゃんとも遊んだんだからさ、アタシとも遊んでよ!」

 「ゴメンネ。僕、今は将来を約束してるお嫁さんがいるから!」 

 

 ビッチC硬直。

 というわけで残りのビッチDとビッチEは固まっている。

 少なからずとも、俺のイメージでは三人とも多彩な女と遊んできた。鷹詩はそれでも上がり症は治らず、色々苦戦していたけど。その三人が仮にもビッチの誘いを一瞬で断るとは一体何事か。

 麗は若干不機嫌になりながら、注文した物が出てくるのを待っている。

 

 「ど、どうしたんだよ、お前たち! 何があった!? 病気にかかったんじゃないのか!?」

 「そうだよ! 鷹詩はともかく、正男と直弘まで一体何があったんだよ!」

 

 拓夫と久光の二人が三人を説得するように語りかける。

 しかし、三人は軽く息を吹いて、妙に大人びた表情を醸し出した。

 

 「ま、若かった頃は色々遊んだけどさ。見つけちまったのさ……真の愛って奴をな」

 

 正男が自慢げに語っている。ただのゴリ男が何を言っている。しかも、若かった頃ってお前まだ高校生だろうが。


 「俺はそこら辺の女には興味がない。俺は俺を踏んでくれる人を見つけたのだ! 嫌がりもせずに踏んでくれる……そんな女性たちをな!」

 

 いやいや、カッコよく言ってるようだけど、鷹詩。物凄くダサい。しかもそんな女性たちって俺も入ってるの? 俺踏んだことないんだけど。


 「言ったでしょ? 僕は嫁を見つけたんだって。だから、もう遊ぶ気はないし、その人だけを大切にしたいんだ。だから、女がいる所には遊び行かないから」

 

 は? 嫁っていつできたの? 誰と婚約したんだよ直弘。相変わらずの天然思考には俺もついて行けないっての。


 それから大きな溜息を、拓夫と久光の二人は吐いた。俺だって溜息吐きたい気分だよ。コイツら三人を変えたのは誰だよ。拓夫と久光が可哀相だろうが。元に戻してやれよ。

 そんな中、麗が三人の男の穴をそれぞれ蹴飛ばした。


 『痛て!?』 

 

 三人はハモって、振り返ると麗が自分の買った商品を持っていた。

 その目つきは、早くしろと言っている。


 「貴様らグズグズするな! 店員に迷惑をかけたら、どうするんだ!」

 

 それ麗が言っちゃうの?

 店員さん、今も苦笑いだよ?


 俺も自分の分は自分で運ぼうとした。

 その際に、拓夫と久光と目があってしまった。


 「も、もしかして谷中 美樹さん!?」

 「え、何でこんなところに……」


 今まで二人からは見えない所で待機していたので、バレなかったが、さすがは美少女。簡単に見つかってしまったな。まぁ一般人とはオーラが違うと言われるし。

 

 「はじめまして……ですよね?」

 「あ、はい……自分は井草 拓夫って言います」

 「お、俺は近藤 久光です」


 二人とも頬を真っ赤にさせている。まぁ可愛いこと。

 だが、後のビッチも凄い顔をしてるぞ。

 そりゃあ、逆ナンした男が他の女に目を奪われたら面白くないだろう。もっと気を使え!

 

 「おーい、谷中さーん!」 

 

 俺を誰かが呼んだ。

 それは優香だった。麗達は一足先に席に向かったようだ。

 

 「あ、すいません。友達を待たせてるので、失礼しますね」

 「あ、ああ」

 「いきなり、すいませんでした……」


 拓夫と久光は頭を下げた。

 二人とも、完全に落ちたな。毎回俺は落とす気はないのだけれど、勝手に落ちるんだよな。何でだろ?

 そんなとき、優香は足を止め、信じられない物を見るような目つきで、ビッチ達に視線を奪われていた。

 

 「な、何でアンタ達が……」

 「あ、坂本ジャン。バカだね~結局来たんでしょ? 誰がアンタと遊ぶと思ってんのよ! この牛女!」

 

 ビッチEが優香を罵る。

 他のビッチ達は大いに笑っていた。

 そんな優香は顔を俯かせ、両手で拳を作り震わせていた。

 拓夫と久光はわけが分からず、オロオロしていた。

 俺は優香を罵るビッチ共に殺意を覚えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ