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部活仲間が俺の匂いを必死に嗅いだりなんてしないっ!

 翌日。

 俺達は再び、四階多目的室の部室に来ていた。

 今日は俺と麗が一緒に部室に来ると、先に正男、直弘が机を持ってきて椅子に座っていた。

 そして、優雅にゲームをしていた。その机の横にはペットボトルのジュースやらお菓子が置いてある。

 こいつら溜まり場にするつもりなんじゃないだろうな……。

 それこそ、麗の顔を横眼で見ると、凄まじい怒りのオーラが湧きでている。


 「おい、貴様ら二人! 何をしている!」

 「何ってゲームだよ! 部長さんもやってみる?」

 「ここを溜まり場になんかするんじゃない!」

 

 麗は正男と直弘の二人の顔面をバシンバシンハンマーで叩いた。

 二人は顔を擦りながら、相も変わらず痛そうにしている。

 そんな中、麗はちらりと横目でゲーム画面を見る。

 

 「……で、そのゲームは何だ」

 「痛てて……ってこれは最近発売された『怪物狩人4』ですよ! 部長さん知らないんですか?」

 「あれか! 私にも――っていいからゲームをしまええええ!」


 またも理不尽な事に、二人は顔面を叩かれた。

 そんな訳で、まだ来ていないのは鷹詩だ。

 二人は、各々持ってきた雑誌を見つめている。髪型は昨日のままだ。そりゃあ、いくらなんでも髪がいきなり伸びるなんて事はない。うん? 俺? 俺はしょうがない。何故か髪が伸びるのが異常に早かったのだから。


 「で、今日の議題は何ですか?」

 「うむ、昨日の髪型の件を改良して行う」


 昨日の髪型って……。

 まだ、続きがあるのかよ。

 そもそも、昨日は鷹詩が丸坊主になって部活は終わった。

 結局その後の鷹詩の頭は、味噌のパッケージなどに書いてある坊さんと酷似していて笑えた。

 そして、その笑いのネタである鷹詩はまだ部室に来ていない。

 まぁ、あそこまでやられればショックはデカイだろう。

 これで、鷹詩は入部取り消し――

 

 「すいません、遅れましたー」

 

 そこには昨日、バリカンをされる前の髪型の鷹詩が入ってきた。

 正男と直弘は口を開けて、呆然としている。

 麗は腕組をしながら、機嫌悪そうに睨んだ。

 

 「早く入れ! このクソ虫野郎!」

 「はひっ! 麗様!」

 「私の名前を汚らわしい口で呼ぶな!」

 「は、はひいい」

 「一生そこで這いつくばれ! この毛虫野郎!」

 「れ、れいひゃま……」

 

 一体どうしてしまったんだ?

 麗の罵倒を受けて、喜んでいるように見える。

 いや、実際教室を這いつくばって入る辺り、かなり喜んでるような気もする。

 

 「あ、あの……鷹詩さん?」

 「はい! 美樹さん!」

 「何で麗に言い返さないんですか?」

 「俺は……極度のドM体質なんです!」

 

 教室内は空気が固まった。

 え、何それ。俺初耳なんだけど。

 つか、ドM体質って本当に存在するの!?


 「鷹詩! 止めろ! こんな貧乳にそんな姿を見せるな!」

 「そうだよ! 鷹詩がここまで仕打ちを受ける必要なんてないよ!」

 

 正男と直弘が必死の説得を試みている。麗が眉根をヒクヒクさせていたが、我慢したようだ。

 そりゃあそうだな。普通、友人が変になってるのを心配しない奴らなんていない。むしろ、ここで心配しない俺が異常ともとれる。

 そして、俺はある事に気がついた。

 ……コイツ。まさか俺のパンツを……。


 「ぶひぃいいいい! み、美樹様のぱ、ぱぱぱぱ、パンツ!!」

 「貴様! 死ねええええ!!」

 「がひいいいいいいい!!」

 

 案の定、俺のパンツを見ようとしていた鷹詩。

 その鷹詩の腰に思いっきり、踵落としを炸裂させる麗。

 このときばかりは、麗の事をグッジョブと思った。正男と直弘の二人も微妙な顔をして鷹詩を見ていた。


 数分後。

 鷹詩は紐でぐるぐる巻きにされ、顔をボコボコに歪ませていた。

 もはや、イケメンの筈なのに、ブサイクに見えてくる。可哀相に……。

 

 「鷹詩さん、大丈夫ですか?」

 「は、はい……俺が美樹様のパンツを見ようとしたばかりに、こうなったんで何も言う事はありません」

 「そうですか」

 「美樹、そんな奴放っておいて、議題を進めるぞ」

 

 そんなわけで鷹詩の髪型に関しては、聞く機会を逃してしまった。


 「で、今日の議題ですが……」

 「うむ。少し待っていてくれ」

 

 麗は再び、黒板に頑張って文字を書く。

 その姿を見た男子三人も、可愛いなと思ってくれている筈。

 あ、鷹詩が涎垂らしてるぞ。コイツ、本当にキャラ変わったな。

 ようやく、黒板に書き終えた麗は、黒板の窓側側面に移動する。

 

 「今回は、昨日の改良版だ!」

 「改良版ですか……」


 今日の議題『女子力はシュシュにあり!』と書かれている。

 昨日の改良版っていうか、グレードダウンしてないか? シュシュってあれだぞ、可愛いゴムだぞ?


 「そういうわけで私も昨日買ってきた」

 

 麗の掌には水色の白玉模様のシュシュ。

 ショッキングピンクに黒の可愛いシルエットの入ったシュシュ。

 白のモコモコとしたシュシュ。

 この三点を持ってきていた。

 麗も女の子らしくなってきたな。


 「可愛いですね! 麗には似合いそうです!」

 「ふふふ……美樹のために――って違くて、私も髪の毛が長い人間だからな!」

 「じゃあ、麗の髪の毛を止めてあげますね!」

 「う、うむ! 頼むぞ!」

 

 俺は麗の髪の毛を、後で束ねて結ぶ。いわゆるポニーテールにしてあげた。

 出来上がった麗を皆見て、ほほぅ~と声を漏らしていた。

 俺だって、麗が可愛く見えてきたぞ!

 

 「ど、どうかな……」

 

 麗は身体をクネクネさせ、頬を赤くしている。

 指を唇に触れさせている。このプロポーション。そそられる物がある!

 

 「……さすが部長っす!」

 「いやはや……その姿でハイヒール履いて踏んでもらいたい」

 「僕の彼女にしてあげてもいいよ!」

 

 まともな回答は正男だけ。

 鷹詩はまたも涎を垂らしている。脱水症状にならないか心配だ。

 直弘はいつものペースだ。


 「おい、貴様」

 「はい!」

 

 正男にガンつけ始める麗。

 その片手は正男のシャツの襟を掴んでいる。

 ただのチンピラにしか見えないんだけど。


 「貴様今、胸があれば最高だなとか思ったよな?」

 「っ!? そ、そそそそんな事思ってないっす!」

 「死ね」


 正男は顔にまたもバシンバシンハンマーを喰らい、教室をのたうち回っているご様子。

 今回のダメージは大きかったらしい。そんでもって、麗の読心力半端ねぇ。俺も心が読まれないようにしなきゃ危ない!

 次は紐で結ばれている鷹詩の所に足を進める麗。

 麗は鷹詩の目の前に辿り着くと、笑顔を見せた。

 鷹詩はそんな麗の笑顔を見て、安堵の溜息を吐いた。

 そんな瞬間、教室に激しい音が響いた。


 「誰が貴様を踏むためだけにハイヒールを履くか!」

 「ぶ、部長さんのビンタ……ぶひいいい!」

 「麗、やり過ぎですよ?」

 「喜んでるからいいだろ」

 「……」

 

 鷹詩は麗のビンタが気持ち良かったのか、身体をヒクヒクさせながら倒れている。

 今回は俺のパンツを見る為に、横たわってるのではなさそうだ。

 最後に、直弘の元へ向かう。

 直弘は怯えながら、椅子を引いた。

 

 「貴様」

 「は、はいっ!」


 直弘は急いで席を立つ。

 こんな直立姿勢見たことない。もはや軍人レベル。

 ハンマー、ビンタ。さて次は何が来るか……。

 

 「貴様、私と付き合ってもいいと言っていたな」

 「は、はい!」

 「なら、つ、付き合って欲しいな……」

 『へ!?』


 麗は顔を赤くさせている。

 その瞳はウルウルとしていた。口元に手を当てる仕草。可愛い。

 これはこれで、いいんじゃないか? 麗と直弘、お似合いカップルの誕生だ!

 ――と思いきや。

 

 「でも、僕美樹さんと――」

 「冗談に決まってるだろうが。貴様のようなド天然チャラクソカスリアビッチ腐れ下種家畜外道作り笑顔又開き腹黒充と付き合うなどごめんだ。私には美樹がいればそれだけでいい」

 「そ、そこまで言われたの初めて……」

 

 直弘は両手両膝をついて、床にうなだれた。

 麗は満足そうに自分の席へ戻り、笑顔で俺に口を開いた。

 

 「と、まぁシュシュの力は証明されたわけだ! 美樹も付けてみるか?」

 「れ、麗はよくそんなに人を罵倒できますね……」

 「まぁ、嫌いだからな!」

 「はぁ……」 

 

 三人の男共は撃沈状態。

 全員、床に倒れている状態だ。

 ここまでする必要性が感じられないのは俺だけだろうか。

 

 「さて、美樹もシュシュしてみないか!?」

 「私は持ってきてますよ。私のシュシュは確か……」

 

 鞄の中にある筈のシュシュを探す。

 あ、あったあった。これだ。

 白いボンボンが二つある、肌触りの良いシュシュ。

 これは単純に気持ちいから持っているだけなんだけどね。


 「それが美樹のシュシュ……」

 「はい! 麗も使ってみますか?」

 「ちょ、ちょっと貸してくれ!!」

 

 麗は俺のシュシュを両手で受け取り、まずは側面をチェックし、肌触りをチェックし……匂いを嗅ぐ……ってちょっと待て!

 何をしてるんだ!

 

 「な、何してるんですか!」

 「はっ! すまない……つい美樹の匂いがしたものだから……」

 「もう! 私の匂いって臭いんですか!?」

 「い、いや違うんだ! 美樹の匂いはそれはもう香水顔負けの……もう一回嗅がせてくれ!」

 「俺もお願いします! 美樹さんの髪でもいいっす!」

 「お、俺もお願いします! 口の中でもいいですから!」

 「ぼ、僕の枕にさせてください!」

 『お願いします!!』


 麗を含めた四人は俺にDOGEZA!!

 この異様な光景は何!?

 麗の必死さは逆に怖いし。

 正男はあわよくばだし。

 鷹詩は口にとかわけのわからん事を言ってるし。

 直弘の枕とかシュシュじゃ絶対に総量が足らない。

 全員バカなのか?


 「しょうがないですね……正男さんから、シュシュどうぞ」

 「か、髪の毛に触っても!?」

 「それは私だけだ! 貴様もそこの家畜のようになりたいのか?」

 「す、すいません部長……シュシュで我慢します!」

 「我慢……? いい加減にしろよゴリ男! 私はそのシュシュが欲しいんだ!」

 

 麗と正男でシュシュの取り合い。

 そして、正男は俺のシュシュの匂いを嗅ぐ……ってこれ、俺に対しての羞恥プレイじゃね?

 

 「はぁ……これでご飯三杯食える……」

 「つ、次は俺の口の中に!」

 「貴様の口の中に入れたら、臭くなるだろうが! 匂いで我慢しろ!!」

 「ぶひっ!」


 次は鷹詩が匂いを嗅ぐ。

 顔がトロンとプリンのように緩んでいく。

 涎が口から垂れ、失神してしまった。

 え、何。俺のシュシュそんなに臭いの!?


 「ぼ、僕も!!」

 「早く嗅げ!」

 「くんかくんか……美樹しゃん……」

 「何ですか直弘さん」

 「僕の枕に――」

 「やるか! これは私の物だ!」

 「麗、私のシュシュですよ?」

 

 こうして最後に、麗に行き渡った。

 最後に麗がずっと嗅いでいたのは言うまでもなかった。

 

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