プロローグなんてしないっ!
冬も終わり、俺達中学生だった生徒は高校生へと上がる。
俺は今一人で、高校に向かっている。
桜が咲き誇るのを横目に、再び文庫本へと視線を移す。
「おはよ~今日からだね~」
「わくわくするよ~!」
隣で女子達が仲良さそうに話している。
多分、彼女達は中学時代からの友人なのだろう。俺にだってそういう人たちはいる。それも、そいつらとは滅茶苦茶仲が良くて、勉強が手につかなかったくらいだ。
ちなみにホモではない。いや、この場合はなんて言ったらいいのだろうか――。
「おーっす、正男!」
「お、拓夫じゃん。また同じクラスだといいな……」
「そんなしょげるなよ」
「だって、幹がいねーからよ……」
「そりゃあ幹がいないのは寂しいけどさ。メールで連絡取れるから別にいいじゃねーか!」
俺の後で会話するのは中学時代、親友と言っても過言ではない二人だ。
井草 拓夫。眼鏡系イケメン。性格真面目。彼は見た目的に堅物かと思うが、そこが硬派系が大好きな女子には人気があるらしい。
田村 正男。肉食系イケメン。性格暑苦しい。スポーツが大好きな女ったらし。いつもナンパしにいくのを止めるのが大変だった。
その二人は俺を通り過ぎていく。
何故か? 俺が喧嘩したとか?
そんな事はない。原因は俺にある。
「わぁ~あそこの人綺麗~!」
「可愛いな~!」
「お前、ちょっとあの子のアドレス聞いて来いよ!」
「む、無理だよ! あんな綺麗な子に話すなんて……」
誰だろうな。そんな可愛い子見てみたい。
文庫本から眼を離す。
ああ、俺の事か。最近は周囲の人の目も慣れてきたから気付かなかった。
俺の名前は中谷 幹改め、谷中 美樹だ。
おおっと、俺が痛い厨二病だと思うのは実に早計だ。
手鏡を取り出す。
自分の顔を見る。
凄く可愛い。
化粧もちゃんとできてる。
俺が惚れちゃいそうだぜ。
自分で言ってて痛いとか思うだろ?
俺は生まれた時点での性別は男。
今の性別……。
「スカート短くない!?」
「髪の毛長くて綺麗ー!」
「胸もデカイとか完璧じゃない?」
皆が俺をみる。
――そう、俺は今は美少女なのだ。