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ArchAngel/harem night  作者: 鳥居なごむ
第一章
9/41

008

 ヴァルハラ雑談スレ★58


 283:アザラク

  進撃の旅団がやりやがったな。


 284:ZEEK

  >>283

  あそこネタ提供ギルドじゃなかったのか?


 285:ラムザ

  >>284

  たまには攻略スレを見たほうがいい。


 286:快楽亭錯乱坊

  Lv1で帝都アラバストに到着とか半端ないね。


 287:プルート

  しかしLv1でどうやれば帝都まで行けるわけ?


 288:アザラク

  >>287

  エンカウント方式じゃないから徘徊してる魔物に見つからなければいい。


 289:LUCKY

  帝都まで普通に進んでも五日間はかかるんじゃなかったっけ?

  死んだら初期位置に戻されるわけだし、最後まで諦めなかったことは尊敬する。


 290:ラムザ

  >>289

  帝都が見えるところで全滅したときは、心が折れかけたと団長が語ってるね。


 291:亜門

  でもLv1で帝都に着いて意味あんの?

  

 292:快楽亭錯乱坊

  >>291

  ある。

  七都市で販売していない商品が帝都には売っているだろうからね。

  それにクエスト関連でも先行特典が得られる。


 293:アザラク

  >>292

  ソロじゃなくギルドで動いてるのも大きいよな。

  元手がなくても金策部隊から送金してもらえる。

  結果、魔術書にしろ素材にしろ独占的に販売可能だ。


 294:プルート

  >>292

  >>293

  定期的に売買するなら帝都に着けたメンバーはしばらく動けないんじゃ?


 295:快楽亭錯乱坊

  >>294

  それでギルドの資金が潤沢になるんだから仕方ないよ。

  むしろ留まるつもりがないなら完全に時間の無駄だ。


 296:ZEEK

  情報交換スレにフォトグラフが上がったな。

  これで旅団の悪ふざけという線は完全に消えた。


 297:ピッケ

  髭面のおっさんが団長?


 298:LUCKY

  豪快に笑い過ぎワロタwww


 299:AZEL

  Lv1のくせに糞強そうじゃねえかw


 300:LUCKY

  >>299

  フイタwwwww

  戦えば俺が勝てるんだよなwww


 301:プルート

  帝都まで生き延びたの団長だけ?


 302:ZEEK

  >>301

  いや、チグリスも生き延びたみたい。

  ほかにも数名は到着してそうな雰囲気がある。


 303:プルート

  >>302

  ごめん。チグリスが誰かもわからない。


 304:快楽亭錯乱坊

  >>303

  MMO時代から旅団に在籍してる古参の剣舞士だよ。

  団員が馬鹿やってるときも淡々とレベル上げしてるようなタイプだったかな。

 

 305:ZEEK

  >>304

  俺もそういう印象だった。

  だから今回の馬鹿騒ぎに参加してたのは意外だ。

  団長の巨漢に萎縮したのかな?


 306:アザラク

  新情報が出てる。

  七都市の「虹色の門」を開放できるアイテムが売ってるらしい。


 307:LUCKY

  おお?


 308:アザラク

  各都市にある花束クエストの報酬で鍵がもらえるっぽいな。

  例えば「娘にライラックの花束を」で『紫の鍵』がもらえる。


 309:快楽亭錯乱坊

  要するに帝都には花屋があるわけね。

  ここだとクエスト名は「薔薇の棘をあなたへ」だな。


 310:ZEEK

  鍵を門へトレードすると対応した都市に通じるらしい。


 311:プルート

  >>310

  どういうこと?


 312:AZEL

  >>311

  文字通りの意味だろ?

  まず訪れた都市Aで花束クエストをクリアする。

  次に都市Bへ移動して花束クエストをクリアする。

  都市Aの鍵を門へトレードすれば、いつでも都市Bから都市Aへ戻れる。

  都市Bの鍵も持っているわけだから、当然その逆も然りということだな。


 313:ピッケ

  つまり七つ鍵を集めれば移動はかなり楽になるね。


 314:亜門

  便利過ぎワロッシュwww

  この事態を運営は想定してなかっただろwwwww


 315:LUCKY

  問題は花束の価格だよな。

  いくら便利でも買えない金額なら意味がない。


 316:快楽亭錯乱坊

  率先してレベルを上げたとしても、帝都へ向かうなら半年はかかるよね?

  そこそこ高くても競売で花束を購入する層は多そう。


 317:アザラク

  >>316

  だろうな。

  とりあえず移動時間が無駄過ぎるんだよ。

  BBSに書き込みしながらだと魔物に絡まれて死ぬしw


 318:LUCKY

  >>317

  激しく同意!



 八月十四日。

 日課の採掘作業を八時間、その後の生産に二時間、競売確認に一時間使う。

 ひたすら採掘作業をしていることに疑問を抱き始める。

 冒険の世界で俺はなにをやっているんだ?


 八月十五日。

 熱に浮かされたように採掘と生産を繰り返す。

 精神的な苦痛は極限だったかもしれない。


 八月十六日。

 特に理由もなく気持ちを持ち直していた。

 前日の反動だろうか? しかし取れ高には恵まれなかった。


 八月十七日。

 日課の採掘作業を八時間、その後の生産に二時間、競売確認に一時間使う。

 確実に成長しているが、眼鏡までの道程は遠い。


 八月十八日。

 鉱山で久々に訪問者と遭遇した。

 しばらくこちらを監視していたような気がする。

 異例の出来事なので、どうしても頭に残る。

 単なる俺の被害妄想なのだろうか?


 八月十九日。

 日課の採掘作業を八時間、その後の生産に二時間、競売確認に一時間使う。

 取れ高は悪くない。しかし以前のような喜びを感じなくなっていた。

 単純作業が俺の精神を蝕んでいるのかもしれない。


 八月二十日。

 ついに『鉱石<黒鉄>』を掘り当てても苦笑いしか出なくなる。

 これは不味い。明日は外に出よう。

 魂の洗濯が必要だ。


 八月二十一日。

 久しぶりに釣りを楽しむ。見失いかけていた目的を再確認する。

 世界に眼鏡を広める存在――それがこの俺だ。


 八月二十二日。

 彫金スキルの上昇に伴い鞄に眠らせていた『鉱石<ミスリル>』の処理を始める。

 NPC販売のない『ミスリルインゴット』は、クエストで必要なことも相俟って、数個ずつ競売に流せば飛ぶように売れていく。これが俗にいう先行者特需なのだろう。


 八月二十三日。

 彫金に関しては他者を引き離した自負が生まれる。

 採掘の時間をこれまでの半分に減らし、生産と競売確認の時間を二倍にした。

 現在重要なのは情報だからだ。市場を掌握すれば、もっと高みへ届く。


 八月二十四日。

 ジェリーロジャーと交戦中の三人組を発見する。

 危ない場面もなく無難に討伐していたが、肝心の戦利品ドロップはなかったらしい。

 掲示板によると「七十二時間POP(前後三時間の誤差あり)」で確定していた。

 つまり俺が知らないだけで結構な数が狩られたことになる。

 どれくらいの確率で『梟の瞳(ホークアイ)』を落とすのだろうか?

 三割くらいの確率だったとしても、三日に一回しか狩れないなら、月に出回るのは一個か二個である。そこそこレアな装備品を引き当てたのかもしれない。上手くいけば返金を迫られることもなかったりして?

 もっとも相場が安定するのは、随分と先の話になるだろう。

 それまで気長に待つしかないな。


 八月二十五日。

 NPC彫金ギルドで新たなレシピを伝授された。

 ついに『眼鏡』の生産方法を入手したのである。

 しかし一番簡単なはずの『眼鏡』でさえ、どうやら五種複合スキルを要するらしい。

 これは彫金のほかに四種類の生産スキルが必須という意味である。もちろん最も高いスキルを求められるのは彫金だが、到達までの道程は亜熱帯雨林よりも険しくなった。


 八月二十六日。

 姉貴の嗜虐的な笑みが脳裏を掠める。

 悪辣な挑戦状なら確かに受け取ったぜ?

 極悪な条件に立ち眩みを起こすところだったぞ。

 だが俺は諦めない。眼鏡の生産にすべてを捧げる。


 八月二十七日。

 掲示板情報を参考に「鍛冶・錬金術・硝子細工・木工細工」をゴリ押しで上げる。

 非難轟々の某テレビ局も青ぜめるくらいのゴリ押し上げだ。

 ここまで来たら『眼鏡』を最初に生産するのは俺しか考えられない。


 八月二十八日。

 ひたすら複合スキルに含まれている生産スキルを上げた。

 こういうとき懐の温かさは心強い。眼鏡のことだけを考えていられるからな。


 八月二十九日。

 生産、生産、生産!

 生産、生産、生産!

 生産、生産、生産!

 長く険しい道も目的地が見えてくると俄然やる気が!

 待ってろ俺の眼鏡!


 八月三十日。

 ついに俺は念願を成し遂げた!

 夏最後の一日を残して、あれの生産に成功した。

 もちろん「め」で始まり「ね」で終わる代物だ!

 材料集めで所持金が底を尽いていた俺は、まず妹と後輩に一本ずつ贈り、余剰の一本を原価+αで競売に出品しておく。長い鉱山引き籠もり生活も今日で終焉を迎える。


 八月三十一日。

 午前中は休息に当てる。

 午後一番で競売を確認すると、ジュエルが振り込まれていた。

 どうやら出品しておいた『眼鏡』が落札されたらしい。

 その資金で新たな『眼鏡』を生産し、これまた原価+αで競売に出品しておく。

 釣りをしながら掲示板を眺める。いろいろな出来事が起こっていた。

 しかしそれらは今思えば前座でしかなかったのだろう。

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