表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ArchAngel/harem night  作者: 鳥居なごむ
第一章
10/41

009

 ヴァルハラ攻略スレ★88


 281:かるぼ

  進撃の旅団、始まったな。


 282:ラムザ

  初の魔導書がネタギルドなんて笑える。

  それとも今作から攻略ギルド化したのか?


 283:奈落

  >>282

  それはないだろ?

  あの団長だぞ?


 284:ハルク

  進撃の旅団スレにフォトグラフが掲載されてる。

  天使が男の造形だから契約者は女?


 285:快楽亭錯乱坊

  おお、天使のフォトグラフもあるんだ?

  ちょっと覗いてくるよ。


 286:ハルク

  >>285

  ちなみに魔導書も公開されてる。


 【希望の魔導書(グリモア)】SSS

  ――――――――――――――――――――――――――

  天使バルムンクを召喚するための魔導書

  業火により「怠惰」を焼き払う

  競売不可/譲渡可能/複数所持不可

  ――――――――――――――――――――――――――


 287:アザラク

  召喚時の連続フォトグラフ格好いいな。

  魔方陣の上に煙幕が発生して、その中から片膝を突いた天使登場。

  銀髪の美少年が全裸じゃねえかwww

  誰得だよwwwww


 288:APPLE

  バルムンク、テライケメンwwwww

  長い銀髪で高身長、女版も見たかったな。

  可愛い美少女系ばかりじゃなくて、たまには綺麗な美女系を期待したい。


 289:かるぼ

  >>288

  天使の容姿って男版と女版の二種類で固定なのかな?

  契約者の好みで性格や容姿が変わったら面白いんだけどね。


 290:QSC

  >>289

  もしそんな機能が搭載されていたら大変なことになるぞ。

  容姿:小柄で童顔の黒髪セミロング

  性格:甘えん坊だけど世話好きの家庭的な子

  備考:料理上手だけど運動音痴

  こんな天使ばっかりになるwww


 291:ゼロックス

  >>290

  参加者全員がロリコンというわけじゃないだろ?


 292:ラムザ

  >>291

  290で書かれてる内容はロリコンじゃなくて二次元キャラっぽい。

  三次元でこれはないだろ。


 293:QSC

  >>291

  >>292

  でもロリコンとアニオタが与党だろ?


 294:APPLE

  >>293

  嫌な国だなwwwww

  しかし否定はできない。

  もちろん俺はロリコンじゃないけどな。


 295:メケメケ

  仲間女「あなたに任せて大丈夫かしら?」

  契約者「安心しろ。俺はロリコンじゃないからな(キリッ)」

  天使「ふえぇ……お兄ちゃん……合いたかったよぉ」

  ですね、わかります。


 296:ラインハット

  >>289

  その仮説を読んで魔導書探しを自重することにした。

  契約者の趣味が天使に反映されるとか嬉しいけど死ぬw


 297:ボジョレー

  全裸のまま立ち上がった超美形の銀髪天使が滅茶苦茶怒られとるw

  この契約者、誰なんだろ? 顔が見えない。


 298:LOVE1000%

  切実に立会いたかった。

  バル様の全裸を生で見たかった。


 299:ララポート

  >>286

  魔導書の説明から推測するとバルムンクは攻撃魔術士系?


 300:ハルク

  >>299

  前作の設定を継承しているなら、天使の職業は独自のハイブリッド。

  例えば聖騎士と召喚士の性能を持つみたいな?


 301:ララポート

  >>300

  なにそれ格好いい。


 302:ハルク

  >>301

  ともあれ進撃の旅団スレを確認しておけば続報も流れるはず。

  新情報を見逃すな!


 301:ララポート

  >>302

  だね。楽しみに待つことにするよ。



「先輩♪」

「お兄ちゃん♪」


 夕食のためログアウトした俺は、二人の眼鏡っ娘に出迎えられる。

 どうやら宅配していた眼鏡に気付いたらしく、そのお礼として、現実世界で下縁眼鏡をかけてくれたらしい。以前に似合っていると絶賛していた赤縁のアンダーリムである。もし髪の長さが春先くらいあれば、特に指示されなくても、三つ編みにしてくれていたことだろう。一見するとアホの子な印象だが、意外と賢く、そして兄想いの心優しい妹なのだ。


「今日の夜十時から花火大会があるんだよ」

「ふーん。コークスの街からでも見学できるのか?」

「七都市共通の花火大会イベントなので、空の見えるところなら大丈夫ですよ」


 八月の最終日ということもあって、施設内では晩餐会が開かれていた。

 豪華に振舞われたバイキング方式の料理卓には、なんと『ヴァルハラ』内の食事が並べられている。料理名や食事効果の記載されたプレートもあり、疑似体験としての演出は充分に施されていた。もちろん下手物はなく、串焼きや海鮮、穀物料理が主体である。見た目だけでなく味も美味しいらしく、参加者一同からは概ね好評を得ていた。


「午後九時から午前零時まで配置される、特殊NPCがモリオンを配ってるんだよ」

「モリオン?」

「七つの数字が刻まれた黒水晶のことです。MMO時代から導入されている宝くじみたいなもので、後日発表の数字と的中していれば商品がもらえます。長時間遊べないライトユーザーの希望だったんですけど、運次第でレア装備を入手できるわけなので、コアプレイヤーからも意外と評判がよかったみたいですね」


 確かに面白そうな企画である。

 ログインしたら忘れないうちにNPCへ話しかけておこう。

 しかし今は食事の時間だ。振舞われた料理を存分に楽しませてもらおう。

 バイキング形式の料理を皿に取り分けて、莉紗と天音が待つ四人掛けの席を目指す。

 ふんわりオムレツにスプーンを入れると、とろけた玉子と挽き肉が絡まり、その見た目に食欲をそそられてしまう。正式名は『プルックの卵』と『アギールの肉』を用いた『レムネン』という料理らしい。ちなみに『ヴァルハラ』での食事効果は次のようになっていた。


【レムネン】

 ――――――――――――――――――――――――――

 プルックの卵とアギールの肉を用いた西洋風料理

 効果時間:一時間

 攻撃力+20 クリティカルヒット率上昇

 競売可能/譲渡可能/複数所持可能

 ――――――――――――――――――――――――――


「先輩、今日は随分と機嫌がいいですね」

「当たり前だろ。二人とも眼鏡が似合ってるからな」

「そこ重要なんですか? てっきり『ヴァルハラ』で眼鏡を広める野望の、第一段階達成の喜びだと思っていたんですけど?」

「まあ、それもあるんだけどさ。俺の趣味を理解してくれた上で、眼鏡をかけて一緒にいてくれる。そういう妹や後輩を持った俺は幸せ者だなと実感するわけですよ」

「お兄ちゃんの眼鏡好きは香梨さんの想像を絶するからね」

「私も趣味に理解のある先輩を持って幸せです。冬コミは先輩とバル様で……あんなことやそんなことまで……いろいろ頑張らせてもらいますね」


 頑張るなと否定しかけて、約束したことを思い出す。

 視姦と引き換えに冬コミは好きにさせたのである。

 押し黙る俺に後輩女子は小声で囁いた。


「先輩は優しいです。私の趣味を知っても普通に接してくれますからね」


 BL主体の同人誌から腐女子とバレて、破綻した友情もあるのかもしれない。

 あるいはもっと痛ましい出来事が――考え出せば切りがなくなってしまう。

 実際、妹のコスプレ画像を見て誹謗中傷を書き込む奴もいたからな。

 法に触れなければ誰がどんな格好をしても自由ではないのだろうか?


「どうかしたんですか?」

「いや、なんでもない」


 俺は首を左右に振り否定の動作。暗い話は苦手だからな。


「そういやお兄ちゃん、ウィスパー機能で呼びかけたとき一体なにをしてたの?」

「ひょっとして午前中か? ログインしたものの寝落ちしてたんだよ」

「違う違う。眼鏡に気付いてすぐだから夕方以降だよ?」

「それなら掲示板で情報収集してたはずだけど……うーん……冗談抜きで記憶にないな。何回か呼びかけてくれたのか?」

「五回くらい話しかけたよ。それでも通じないから諦めたけどね」

「俺が機能に慣れてないのかもな。次からは注意しておくよ」

「ありがとう、お兄ちゃん」


 莉紗は満面の笑みを浮かべる。

 いわゆる兄馬鹿かもしれないが、眼鏡をかけると半端なく可愛い。

 妹を猫可愛がりする兄の気持ちも、このときばかりは理解できてしまう。


「先輩の『レムネン』は美味しいですか?」

「ああ、美味いよ」

「それじゃあ、一口ください」

「バイキングなんだから、取ってくればいいだろ?」

「よいではないか、よいではないか♪」


 妹と後輩が一斉にスプーンを伸ばしてくる。

 俺は襲いかかる二人の額を軽く小突いた。

 莉紗と天音は示し合わせたように「てへぺろ」を決める。

 苛立ちを緩和させる効果があるらしいが、おそらくそれは可愛い子限定の話だろう。

 あるいは仲良しのメンバーが多く、許される空気が流れている場合だ。

 今回はすべての条件が充たされていたのではないだろうか?

 やがて妹と後輩はどちらともなく吐き出した。いわゆる「てへぺろ」状態が気恥ずかしくなったのかもしれない。俺は嘆息を漏らしながら二人を見守る。

 なにがあっても絶対に守らなければならない笑顔だと確信した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ