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記 憶 の カ ケ ラ 。

俺は、静かな病室で一人ハルヒトの様子を見ていた。

今にも泣きそうな俺は、かすかに暖かいハルヒトの手のぬくもりでかろうじて保っていた

ただ眠っているだけのように見える、ハルヒト。

実際そうなのだが、でも細かい意味では違った。


担当の医者である駒井先生は言った。まだ若い、20代後半くらいの男の医者だった。

「保護者の方は?」

「アメリカに行ってます…」

「そうかぁ」

やけにのんきにしている駒井先生に俺は聞きたいことがたくさんあった。

その気持ちを読み取ったのか、駒井先生は「ああ」というと、ハルヒトについて話しだした

「春人君は、大丈夫だ。何も死ぬほどのことではない」

駒井先生は優しい笑顔で言った。

なぜか素直に信じられた。

「ただね、軽い記憶障害がおきて、いる」

「え?」

「いや、その昨日したことを覚えてないとか、食べた物を覚えてないとかその程度のことだけなんだがね」

記憶障害?…。

「でもこれだけは言っておく。春人君は大丈夫だ。しかし、周りの人は、辛いだろう」

「どういう…ことですか?」

「春人君の記憶障害はこれからも進行していく、ってことだ。」

それじゃぁ・・・ハルヒトは…。

「いずれ、キミの名前すら覚えていなくなる。」


夕方になるころ、ハルヒトが目を覚ました。

「んっ…」

「ハルヒト…無理すんな」

「君に、命令されるのはやだね」

そういって苦いものを食べたような顔をしてからバツが悪そうに笑った。

「心配をかけた。すまない」

「え?」

今、謝ったのか?

俺が覚えている限りでハルヒトが人に謝ったところを見たことがない。

「椛は?」

「あ、あぁ・・・夜には母さんと父さんと一緒に来るよ。」

「そうか」


俺はいまだにハルヒトが記憶障害を負っているなんて信じれなかった。

いや、訂正。


信じたくなかったんだ…。

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