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む な し い 嘘 。
信じられなかった。
けどさすが運動部、反射的に俺は走っていた。
「ハルヒトっ!!!」
このまま信号が、変われば、ハルヒトはっ…
しかし幸運なことに朝の交差点は車1台も見当たらなかった。
じゃぁ、何故ハルヒトは倒れているんだ?
倒れているハルヒトに駆け寄って名前を呼ぶ。
「ハルヒトっ おい、ハルヒトっ」
ぴくりとも動かない。
息は、していた。
そこに保健の先生の佐藤先生と俺のクラスの奴らが来た。
ハルヒトのクラスの奴らもいる。
「先生…っ ハルヒトを…ハルヒトを…助けてくださいっ!!!!」
今にも泣きそうな俺に、佐藤先生は言った。
「大丈夫よ、今救急車を呼んだから。大丈夫、軽い貧血よ」
最後のほうの声は小さくなっていた。
(嘘だ。)
そう思ったが、貧血だと信じたかったから何も言わなかった。
しかしその嘘はいとも簡単に崩れ去った。




