最 後 の 兄 。 ②
それから俺はわからない問題を全部ハルヒトに教えてもらった。
ハルヒトはいとも簡単に、解説付きですらすら教えてくれた。
そんなハルヒトを見ながら、記憶が戻ってきたんじゃないか?と疑ってしまうほど。
「もうわからない問題はないかい?」
最後の問題の解説が終わって、ハルヒトが言った。
「あ、あぁ・・・ありがとな やっぱ脳みその作りがちげぇな」
俺はハルヒトの記憶に戸惑いながらも、本当に感心していたから言った
「でも僕にはサッカーは出来ない。他のスポーツも同様だ」
サッカーのことを覚えていたのか、ハルヒト。
俺らはそれから夜通しでしゃべった。
夕飯を持ってきた母さんは喜びながらハルヒトにしゃべりかけていたけど、ハルヒトは俺と2人でしゃべりたいと言って母さんはふてくされて居間に戻って行った。
「椛は…」
ハルヒトが言った。
「受験でそろそろ忙しいからな、上で勉強頑張ってるよ」
「そうか」
「こんな寒い日は、星がきれいなんだろうなぁ」
ハルヒトが天井を見ながら言った。
「風邪ひくからダメだぞ」
俺は一応言っておいた。
ハルヒトはまるでおもちゃを買ってもらえなかった子供のような顔をした。
「僕は…」
いやな予感がした。
もうすぐ、ハルヒトがアッチへ逝ってしまうような、そんな予感。
「僕は兄として何もしてやれなかったな」
「兄って言っても双子なんだから、俺ら」
俺はいやな予感を振り切ってしゃべった。
大体、俺のカンは外れるんだから
「さっき、問題見てくれたのすげぇ助かったし。」
いつもなら言わないようなことを俺は言った。
ハルヒトは少し驚いて、「そうか」と言った。
「なんだか今日は気分がいいよ」
ハルヒトは目を閉じて言った。
「僕はそろそろ行かなきゃいけないらしい。 こんなに記憶が戻っているのは一時のものだからね」
やめてくれ。
そんなこと言わないでくれ。
「ただ一つ心残りがある。
京介、君と一緒に大人になりたかったよ」
そういってハルヒトは静かに―――――。