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秋 の 風 、 君 の こ と 。
もう、秋の風が吹いてきた。
あれから、確実にハルヒトは記憶を失っていた、
学校は、授業について行けない、と退学した。
しかし本人いわく星のことだけは覚えているらしい、
星のことは最後まで覚えてられたらいいな、と言っていた。
俺はというと、家事は母さんがやってくれるし、ハルヒトの毒舌もあまり聞かなくなって、心に穴が開いた感じだ。
椛は受験に向かって頑張っている。
その心の穴を埋めるために俺は今まで以上にサッカーに没頭した。
休日は必ずと行っていいほど家の裏の空き地に行き、ボールをけった。
そしてその様子をハルヒトが見る、という過ごし方が定番になっていた。
ハルヒトはもう、俺がやっているスポーツの名前もわからない。
自分の年はもちろん、名前すらも覚えてないんじゃないだろうか。
でも、星は必ず見ていた。
夜、毎日。
それが唯一の楽しみだったようだ。
そして俺も付き添っているうちにだいぶ分かるようになっていた。
少なくとも、オリオン座がとても見つけやすい星だったということはわかった。
そう、彼がほぼ1日中眠るようになるまでは…。