天 体 観 測 。
5人で食べたご飯は美味しかった。
ハルヒトの病気がなければ最高だったのに
その夜、ハルヒトは屋根の上にいた。
電柱に登るくらいだ、前もこうやって屋根の上に来ていたのだろう。
「ハルヒト」
後ろから呼ぶとハルヒトがはっとなって振り返った。
「なんだ、キミか」
ちっ
毒舌だけは忘れないようだな、こいつは。
そう思いながらも俺は座っているハルヒトの横に立った。
「オリオン座」
ふとハルヒトが言った。
夜の町は静かすぎるくらいで、小さなハルヒトの声でも聞こえた。
「あれ、オリオン座」
そういって指をさす。
俺には星がたくさんありすぎてわからない。
必死に探す俺を見て、ハルヒトはくすくすと笑った。
「人間はさ、昔できなかったことを成し遂げるために生まれてくるんだ。誰もが、絶対。」
始まった。ハルヒト論。
「そしてまた悔いを残して死んでいく。」
俺は黙って聞いていた。
オリオン座はいまだ見つからない
「こうやって星を見てるとさ、気分が落ち着かないかい?」
「あぁ・・・」
じめじめとする、夜に
俺らは屋根の上で2人星を見ていた。
きっとハルヒトにはオリオン座のほかにも星が見えているのだろう。
「僕はさ、この星を君に見せるために生きてきたんだ」
何を。
もう悔いはないというような言い方をするな。
「だから君も-…」
俺はそこで我慢できなくなってどなった。
「黙れっ」
静かすぎる夜にその声は響いていた。
「もう、わかったから。星のすごいとこ。だから…」
それまでじっと俺の顔を見上げていたハルヒトはふっと嘲笑気味に笑って言った。
「そうだな、わかってもらえればそれで十分だ」
ハルヒトはきっと、忘れてしまわないうちに言っておこうと思ったんだ。
自分が生まれてきた理由を。
あまりにも悲しすぎる理由だった。