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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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RTAシリーズ

【ガチ攻略】ダンジョン配信・現代ファンタジーRTA【姉END】

掲載日:2026/05/05

時代は1億総配信者。


その夜、男の最速攻略が

世界トップシェアの動画サイトで配信された。

 

 額には大きな傷跡。

 口は真一文字。


 スタート地点に立つ男の映像から、配信は始まった。


 稲穂が風で揺れるたびに、日中の茹だるような暑さを含んだ藻の匂いが、不快な湿り気とともに運ばれてくる。


 ――気持ち悪い。


 この地で生まれて何年経とうが、男はその匂いが嫌いだった。


 :名無し

 きたああああああ

 :名無し

 これ、例の『傷跡スカー』の枠?

 :名無し

 待機人数10万超えてて草

 :名無し

 今日も素手で草

 :名無し

 初見です。挨拶もないとか……怖いんだけど、この人


 この日も、男は網膜に映る10万のファンたちのコメントに溜め息をついた。


 最新鋭のドローンカメラが闇夜に煌めいた。

 周囲に(うごめ)く異形たちの(いなな)きを鮮明に拾えても、

 男の内面までは捉えきれなかった。


 すっかり変わってしまったこの世界も、男は大嫌いだった。

 男が好きなのは、血を分けた実の姉だけ。


 目指すは廃校の屋上。

 バグなし攻略によるRTAで世界一位を取れれば、

 姉を助け出すことができる。


 スタート地点はバス停。

 当然だが廃線。


 :名無し

 映像切り替わったな。

 :名無し

 待機

 :名無し

 スタートに注目

 :名無し

 グッバイ、定点カメラ

 :名無し

 どうせまたチートだろ?



【計測開始】



 爆発音が田園地帯を襲った。

 その瞬間、定点カメラは吹き飛び、男は1秒で160m超の移動をしていた。

 追走するドローンは火花を上げながら、男の背中を辛うじて収めていた。


 :太郎

 すごいなぁ、何回見ても。ねぇ、ガミさん?

 :ガミさん

 …………

 :名無し

 太郎もガミさんも、よう見とる

 :名無し

 いつもいつもコメントのタイミング、どうやって合わせてんだよw

 :名無し

 ある意味チート


 一歩踏みしめるたび、水田にクレーターが生み出されてゆく。

 さながら隕石の集団落下のようだった。


 トップスピードに到達する前に、男は校門前でピタリと止まった。

 背後から遅れてきた衝撃波と土砂が、

 フィールドとダンジョンを区切っていた鋼鉄の柵を粉砕する。


 :名無し

 開☆門

 :太郎

 あああぁぁぁ……畑がぁぁぁ……

 :ガミさん

 …………

 :名無し

 タイム出たか!?

 :名無し

 大幅更新。イカれてらっしゃる



【TIME 00:00:07:02】



 身を屈め、ダメージを最小限に抑えていた男は立ち上がり、目の前を見据えた。

 立ちはだかる最初の関門は、身の丈八尺に迫る大女。

 校庭の只中にあるその異形は、真っ白なドレスを風にたなびかせていた。


 :泉州の虎

 とりあえず殴れぇぇぇ!!!!

 :名無し

 虎姫キタァァァ!!

 :名無し

 姫様キタァァァ!!

 :名無し

 翁は?

 :泉州の虎

 うっさいわ、ボケェェェ!!!!


 不釣り合いな高い音が響いた。

 男が用いたのは地面に落ちる小石。


 指先で弾かれた小石は

 異形の膝を正確に射抜いた。


 生体機能の破壊に成功した男は、

 安全に異形の横を抜けていった。


 :太郎

 ワオ、ワーオ!

 :ガミさん

 …………

 :泉州の虎

 殴れや、スカァァァァァ!!!!

 :泉州の虎

 ボケカスボケカスボケカスボケカスボケカス!!!!

 :名無し

 荒らしで草



【TIME 00:00:11:29】



――校舎殴れ。


熱心な荒らしのコメントに男は思わず笑い、ロスを生み出した。

世界も捨てたものではない。

そう思いながら、男は熱いものを胸に屋上を見上げた。


男の目には地上から屋上までまっすぐ伸びるパイプが映った。


「……お望みどおりに?」


男は校舎に設置されていたパイプをバリバリと剥がし、その手に握りしめた。


 :ガミさん

 声、めっちゃカッコいい……

 :太郎

 ガミさん!?

 :泉州の虎

 それやぁぁぁ!!!!

 :名無し

 今、喋ったよな!? 初めてじゃね!?

 :名無し

 【速報】スカーの声、初出し


校舎の破壊は計画になかった。

タイムは大幅更新を保ったまま。

男がそうしたのは余裕からではなく、

さらなる更新が狙えるという確信によるものだった。



横、一閃――。



その一撃はコメント欄ですら静止した。

世界で動いていたのは、計測用のタイマーだけであった。


白濁とした煙が舞い上がる中、男は最終目標、

このダンジョンを支配する最後のモンスターと相対した。


「……遅い」

「これでも、世界一位だぜ?」


数年ぶりの対面を果たした姉弟は抱擁を交わした。


計測終了(タイマーストップ)

【TIME 00:00:13:55】

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