0-2 カラスは光物が好き? ~レディに対する暴言は危険です~
むかし、むかし、のおとぎ話。
その世界では、動物さんたちもフツーに会話をするのです。
さてさて、カラスさん達は、何を話しているのでしょう。
むかし、むかし、ある町から森へと続く一本道の上空をカラスが一羽飛んでいました。
キラッ!
カラスの背から降り注ぐ日の光にそれは輝きを放ちます。
「カー」
(何だ何だ?)
(何か光ったぞ!)
その黒目に飛び込んだ光にカラスは思わず鳴き声を上げ、光ったモノを探す様に旋回します。
(何だアレ。)
(おー、キラキラしてんじゃねえか。 ラッキー!)
「カーッ!」
(おっといけねぇ、余りに興奮して叫んじゃったよ。静かにしないと他の奴等に見つかっちゃうからな、静かに 静かにっと・・)
心の中でつぶやいたカラスは鳴くのを止め、そっとその輝きを放つモノの近くに降り立つと、罠ではないのかと警戒します。そして、少しだけ首を回し左目でキラリと光るモノを凝視しつつ右目で辺りを警戒するように背後を眺め、ピョンピョンと斜めに跳ねながら少しずつ近づいて行きます。さらに近くまで来ると首を擡げ、もう一度周りに注意を払う様に静止し、安全を確認してからそのモノに顔を近づけました。
(何だコレ。)
(丸くて、平らで、透き通ってて、回りは金色で・・・)
先ずは嘴で突いてみます。
コンッ コンッ
(食べ物じゃねえな。だけど、キラキラしてていいね~! うっとりするね~。)
(これ持ち帰って部屋に飾ったら、俺んち超豪華になるじゃん。)
(彼女、出来るかな~。出来るといいな~。)
カラスはソレをパクっと銜えると、黒い羽根を勢いよく広げ、明るい大空へと飛び上がって行きました。
----その三日後、オークの木の枝で----
「カーカー。」
(お前が言ってたやつってアレか?)
「カカー、カー。」
(そうそう、あそこに見えてるやつ。)
二羽のカラスが寄り添いながら木の枝につかまり、その下の藪を覗き込んでいます。
それは、先日お宝を手に入れたカラスとその友達のカラスです。
「おーおー、いいじゃんいいじゃん。キラキラしているじゃん。」
「そうだろ、お宝だろ。」
「どうして落としちゃったのよ。」
「それがさー、つい嬉しくなっちゃって、勢いよく羽根を動かしちゃったわけよ。そしたらさー、アレ見える? あの金色のひもの様なモノ。」
「あーあれね。お宝にひょろひょろって付いてるやつ。」
「そ、それがね、跳ねてバシッっと俺の目に当たったのよ。こう、こんな感じでこの綺麗な瞳にさ。」
お宝を落としたカラスが片方の羽根でジェスチャーを交えながら落とした時の状況を伝えています。
「それでさ、突然で、まばたきも全っっ然間に合わなくってさ、よくあるだろ、それで思わず“イテッ!”ってなって落としちゃったのよ。」
「あ~あるある、分かるよ~。そりゃ災難だったね。眼球って無防備だし、スゲー痛いからさー。 それで? また拾えばいいじゃん。」
「それがさ、あそこの草ってさ、トゲが有ってさ、首突っ込むとそのトゲが目に刺さりそうなのよ。この綺麗な黒い瞳にさ。眼球って大切でしょ。それに、足を延ばしても届きそうも無くってさ。」
「ふ~ん、それでじっと眺めているんだ。」
「バカ言え、お宝を前にして俺が黙ってただ見ているだけだと思うのか?」
「いや思わない。」
「だろっ。」
「それで?」
「誰か他の奴に取ってもらおうと思ってさ、待ってたんだ。」
「ふんふん。」
「そこに丁度、野ネズミが通り掛かってさ、サーって降りてってお願いしようとしたの、そしたらさ、ソイツ、急に歯をむき出して俺に襲い掛かって来るんだぜ。必死で逃げたよ。」
「ヤベーじゃん。ヤベー奴じゃん。そんな奴、野に放ってていいの?」
「だろ、そう思うだろ。」
「でもさ、どうして襲って来たんだ?」
「それがさ、後からよ~く思い返してみたんだけどさ、この前、ネズミが見つけたチーズを俺が横取りしたって話したじゃん。それでさ、もっと良く思い出してみたんだけどさ、その襲って来た奴、あの時のネズミじゃないかと思うんだ。いや、きっと同じ奴だね。鼻に小さなキズが有ったから確かだよ。」
「そりゃお前が悪いよ。でもさ、お前も話しかける前に気付けよ。」
「無理無理、無理だよ。お前さ、ネズミの顔、見分けられる? そんな訳ないよな。種族が違うとみんな同じ顔に見えるだろ。」
「まー、そう言われりゃそうだな。仲間の顔は判っても他の奴等の顔はみんな同じに見えるもんな。」
「だろー。しかもソイツさー、俺が飛び上がっても下から睨みつけて、歯をガチガチ鳴らしてたんだぜ。ヤベーだろ。」
「おー怖、まるで通り魔だな。」
「でさー、他のネズミが通らないかなーって待ってたのよ。でもさ、一匹も来なくてさ。もしかしたら、此処ってアイツの縄張りじゃねえのかってさ。」
「へー、じゃ此処のボスだったって事? やっぱりソイツかなり凶暴なんじゃね?」
「だろうな。」
「それで今まで?」
「いやいや、そんなそんな。」
「ほー、他に来たんだ。」
「そ、うさぎ。真っ白い奴。」
「うさぎ? 大きすぎじゃね?」
「俺もそう思ったけど、長い足で取れるかなって思ってさ、一応、話だけはしてみようかと・・」
「ふんふん。」
「うさぎはさ、ネズミと違って一応話を聞いてくれたんだ。」
「そりゃ良かった。それで?」
「“もしもし、そこの雪の様に純白で綺麗なうさぎさん、お忙しい所引き留めて申し訳ありませんが、私のお願いを聞いていただけませんか。あなたのそのおみ足はとても細くて長いのであそこの藪の中に見えるヤツを取って欲しいのですが・・もし、爪が無くて引っ掛けずらいのなら、その長くて美しい前歯を使って取って頂きたいのですが・・・・”って丁寧に聞いたんだ。」
「よっ、気遣いのできる紳士だねー。」
「そしたら、即答で断られた。しかも無下に。」
「何で? こんなに紳士的に聞いてやってるのに。」
「足で取ろうとしたら大切な足にトゲが刺さりそうだし、顔を入れたら目にトゲが刺さりそうだからって、さ。」
「やっぱそうか、そうだよな。」
「だからさ、俺、言ってあげたんだ。“うさぎさんなら目にトゲが刺さって血が出ても平気でしょ。最初から目が赤いんだから”ってさ。」
「おー、真理突いてるねー。」
「そしたらさ、急に怒り出して、歯むき出して襲って来たんだぜ。」
「なになに? そいつもヤベー奴じゃん。いや、ヤベー奴多すぎじゃん。」
「慌てて飛び上がったらさ、ソイツ、歯をガチガチ鳴らして俺を睨み続けてたんだぜ。」
「この辺、危険なヤツ等ばっかじゃん。」
「お前も気を付けた方がいいぜ。」
そんなカラス達の会話を赤ずきんのシャルマントは遠くから聞いていました。
そして・・・、
シャルマントは相棒のザバンとその藪の所まで駆けて行き、草のトゲに注意しながら金のチェーンの付いたモノクルを取り出したのです。
木の上ではカラス達が騒ぎ散らしています。
カー カー カカー カー カー カー カー
(何すんだ赤いチンチクリン! そのお宝は俺のだぞーーー!)
カカー カー カー カー カー カー カー
(そーだそーだ、この盗人!
お前みたいなガキに価値なんて分かんねえだろ!)
カカーカーカーカカカカー!
(このくそガキ! お前にはその辺の草がお似合いだ!)
カーカカ―カカカカカー カーカーカー!
(頭の上からフン垂らしてそのずきんに一撃喰らわし
てやろーかー。)
シャルマントに向かって二羽のカラスが鳴き散らしています。
シャルマントはカラス達をキッっと睨みつけると何かを呟いた後、地面に有った小石をいきなり投げ付けました。
カーカーカー! カーーーーーーー!
(危っぶねー! こいつも危ないヤツじゃん。)
カラス達は鳴きながら慌てて木の枝から飛び立ち、森の方へと去って行きました。
この事を深く心に刻みつけたカラスは、それからと言うもの、時折人々を襲う様に成りました。・・とさ。
これから、初夏にかけて“カラス”の子育てがはじまりますね。
毎年、ニュースには必ず『通行人をツツク映像』が流れます。
皆さま、どうぞお気をつけてくださいませ。




