12 そこまでするの? ~お母さんオオカミも、強いレディなのね~
むかし、むかし、あるところに、シャルマントと言う女の子が骨付き生肉を手に、森の中を歩いていました。
「この辺かしら。」
シャルマントは捕まえたオオカミが言っていたオオカミ家族が住んでいる場所へと向かっています。
しばらく歩くと、大きな太い木の根元に樹洞が見えてきました。シャルマントは空いている手を赤いずきんの上に乗せ、例の呪文を唱えます。
「キケキケピコピコ キクキクピョンピョン
キイタラズンズン ハヨノビロ、さあオオカミさん。」
そうしてから、さらに木の根元の樹洞へと近づいて行きました。すると、
ウ~~~ ウ~~~
と何かの唸り声が響いて来て、そこの暗闇の中から痩せ細ってはいるが鋭い目つきのオオカミが一匹よたよたと出てきました。
シャルマントは一瞬驚きましたが、片手を赤いずきんの上に耳のように立てて言います。
「私はシャルマント、きっとあなたの旦那さんだと思うオオカミに言われて来たの、子供達に飲ませるお乳が出ないんですって?」
オオカミはその鋭い視線を変えず、
ウ~~~ ウ~~~
とまだ唸り声を上げています。
「子供達、三匹居るんでしょ。ほら、食べ物を持って来たわよ。」
そう言うとシャルマントは新鮮な肉を地面に置いて、後退りし、オオカミから離れて行きます。
ウ~~~ ウ~~~
置かれた肉をじっと睨み付け、しばらく唸り声を出していたオオカミはゆっくりと歩きだします。肉の近くまで来ると、再びその鋭い視線をシャルマントに向け、次の瞬間、肉にかぶりつきました。シャルマントはホッとした目付きでそれを見て、すべて平らげたのを見るとその日はそのまま帰りました。
翌日、おなじ頃。
シャルマントは再び肉をもって大きな太い木の樹洞の所に行きました。
昨日と同じ様にオオカミに肉を渡し、それを一気に食したオオカミを見たあと、帰路につこうとした時です。
「ダンナは死んだの?」
お母さんオオカミの声がしました。
シャルマントは振り返り、
「死んで無いわよ、 まあ、捕まってはいるけどね。」
「・・そう、それで、いつ殺すの?」
「ん~~~、決めてない。」
「・・・・・。」
お母さんオオカミはキョトンとしています。そして、
「え? 殺さないの?」
その言葉にシャルマントは驚き聞き返します。
「え? 殺して欲しいの?」
オオカミは「ううん」と言いたげに、首を左右にブンブンと振りました。
シャルマントが言います。
「捕まえた時にね、あなた達の話をしてね、助けて欲しいって言ったの。それが本当かウソか、それを確かめに来たの。」
そう言って、この日も森を後にしました。
その、翌日もお母さんオオカミのいる所に食事を持って行きます。
その日はシャルマントが着くと、住処の樹洞の前にお母さんオオカミと三匹の子供達が待っていました。
シャルマントが近くに行くと、子供のオオカミ達がよちよちと歩み寄って来ます。オオカミとはいえ、子供は子犬のように愛らしく、しかも丸々と、ぷくぷくとしています。シャルマントも思わず、
「キャ~~~、かっわいい~~~!」
と叫んで駆け寄り、オオカミの子供達をなでます。すると、
「あなたのお陰でお乳も出る様になって、子供達も嬉しそうなの。」
とお母さんオオカミが言いました。シャルマントは、
「あなたの具合はいいの?」
と聞くと優しい声が帰って来ます。
「ええ、とても良くなったわ。美味しい肉のお陰よ。」
「それは良かったわ。大変だったのよ、お肉屋さんからソレ貰うの。こんな子供がどうすんだって。うっかり、オオカミに上げるのって言いそうになっちゃったわ。」
シャルマントは子オオカミ達を撫でながら言いました。お母さんオオカミが聞きます。
「それで、ダンナはどうなるの?」
「う~~ん、人を襲わないって約束してくれたら逃がしてもいいけど・・・。」
「だったら、お願い。助けて。」
お母さんオオカミは頭を下げ、小さな声で言います。
「まだこの子達には父親が必要なの。」
「・・・・・。」
シャルマントがどうしようかと思い悩んでいると、
「だったら、この子達の中から一匹連れて行って、ダンナに誓わせて。この子のぷっくらとした姿を見たらあなたを決して襲わないと思うから。もし、ここに連れて来てくれたなら、私が人を襲わないって誓わせるから。」
「・・・・・。」
まだ、シャルマントは思い悩んでいます。そう、縄を解いたらその場で襲って来るのかもしれないからです。
どれ位の時間が流れたのでしょうか、お母さんオオカミが静かに言いました。
「もし、・・ダンナがあなたと一緒にここに来なかったら、・・・ダンナの目の前で、・・私がこの子達を食い殺しましょう。」
その言葉を聞いて、シャルマントはオオカミの子供一匹を抱きかかえておばあさんの家へと向かって行きました。
そうです、
お母さんは強いのです。力ではなく、意思が。
自然の中で生きるには、生き残るにはきっと必要なことなのでしょうね。




